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2022年11月号 No.543

令和4年度 「作文コンクール」 受賞作品が決定!

国土交通省と建設産業人材確保・育成推進協議会では、高校生の方と建設産業で働く方を対象とする作文コンクールを実施し、優秀な作品を表彰しています。今回は、国土交通大臣賞に選ばれた2作品をご紹介します。

 

高校生の作文コンクール 国土交通大臣賞 受賞作品

幸せを創る職業

静岡県立浜松工業高等学校 建築科1年
安間 菜月 さん

受賞者へインタビュー

■Q1  受賞された感想を教えてください。
正直まだ実感しておりません。でも、私が綴った文章が誰かの心に届いたんだなと思うととても嬉しいです。今までこのような大きい賞を取ったことがないので今回受賞できたことを励みに、今後もさらなる努力を続けたいと思います。

■Q2  なぜ工業高校に進学しましたか?建設系の勉強をしようとおもったきっかけ 等
自分の夢を追いかけるためです。本校は実習などでの環境が整っており、建築に関する様々な経験ができるからです。また、兄が卒業生という事もあり本校の雰囲気を近くで感じており、とても興味を持ったからです。

■Q3  学校ではどのような勉強をしていますか?
平屋建ての平面図、立面図、断面図などの図面を書いたり、椅子を製作したり、2焦点パース作図、測量など幅広く様々なことを学んでいます。建築に関する用語、名称、意味合いなどを学ぶ一方で、有名建築家が設計した住宅にふれることもあります。

■Q4  将来の夢を教えてください。
インテリアプランナーになることです。中学2年生ごろからインテリアや内装に強く興味を持つようになり「実際に自分の手で素敵な空間をつくりたい」という思いからこの夢を目指しました。誰かの思い出が紡がれるときに自分の作った空間がそこに在ればいいなと心から思います。

朝起きて、ご飯を食べ、学校に行き、授業を受け、帰り、お風呂に入り、寝る。人によって過ごす一日は違っていても、そこにあるものはいつだって「空間」だ。私たちはいつだって空間の中に生きているのだ。

家の近くに工業高校があった。進路を気にするようになった頃、私の父も兄も通っていたこの高校に興味を持ち始めた。最初は「家が近いから」という理由だったが、兄からの話や実際に高校の雰囲気を近くで見ていると、次第にこの高校に入学したいと思うようになっていた。当時インテリアに興味があった私は、抽象的ではあるが、内装に携わる仕事がしたいと思うようになっていった。その時ぐらいから同時に「空間」に対しても興味が沸き始めていた。浜工について調べていくうちに建築科があることを知った。資格も沢山取れるらしい。ただ、自分の夢が抽象的であったが故に高校三年間を専門分野に振り切ってしまっていいのか。というモヤモヤがずっと心の中にあって、中々一歩を踏み出せなかった。そんな私の背中を押してくれたのは、一つの記事だった。「誰かに楽しいを沢山届けるための遊び心満載の空間」。ある会社のオフィス移転の記事だったが、その記事を見て私の抽象的だった気持ちが「誰かの為にその人が一生を楽しく暮らせるような空間を作りたい。」という気持ちになった。建築科を目指そうと心に決めた瞬間だった。

誰かの一生を決める仕事に就く。「空間を作り上げる。」ということはつまりそういうことになる。それが家や自分の部屋だったら尚更だ。自分が過ごす空間は何よりも何処よりも安心ができて快適に過ごせる場所でなくてはならない。建築の仕事に就くということは、誰かの人生を任されるという事に匹敵するだろう。私はあの日読んだ記事にあったオフィスのように誰かにわくわく感を与えられ、笑顔を作れるような空間を作りたい。そしてその空間が楽しい空間であれば、そこでどんなことがあろうと必ず記憶に結びついていく。沢山の人が訪れるような公共施設から、一家族の一軒家。そして自分が作り上げた空間が笑顔に変わる瞬間をこの目で見たい。小さな一つの幸せを沢山創りたい。建築科に入ったからこそは自分の夢を実現させたい。人生を担う職を目指すからこそ、毎日、今日を全力で頑張る。そしてあの日の決断に後悔が残らないように、自分の行動に自信をもってこれからの毎日を過ごしていきたいと思う。将来の自分が誰かの幸せを創り、そこには記憶する空間があり、自分自身も笑顔でありますように。

私たちの主張 国土交通大臣賞 受賞作品

ヒーローを探して

コダマインフラサービス株式会社
丹羽 恵美子 さん

受賞者へインタビュー

■Q1  受賞された感想を教えてください。
この度は国土交通大臣賞を授与していただき、誠にありがとうございます。大変光栄に思うと同時に、身の引き締まる思いです。共に働く職場の仲間たち、私を支えて下さった全ての方々に心より感謝申し上げます。

■Q2  建設業へ入職したきっかけを教えてください。
40歳で初めての正社員就職をしようと就活していた時に、たまたま求人が目に留まったことがきっかけでした。経理事務の募集という認識でしたので、建設業へ入職したと知ったのは、実はかなり後でした。

■Q3  現在はどのようなお仕事をされていますか?
管理部の主任として、経理からIT管理者・採用・広報・社員教育など幅広く取り組んでいます。また東京都の女性活躍事業TOKYO Women’s キャリア・サポーターとして、管理職の日常を発信しています。

■Q4  今後の目標を教えてください。
2021年秋に大学に編入し、心理カウンセリングを学んでいます。大学での学びをこれからの組織づくりに生かしたいと考えています。今後も会社と建設業の発展に大きく貢献できる人材となれるよう努力し続けたいです。

「建設業の採用が厳しいのは、今に始まったことではないんですよ。」そう言いながら資料を見せられた私は、低い数字が並ぶ表を見て愕然とした。ここはハローワークの23番窓口、人材確保・就職支援コーナー。特に採用が難しいとされる建設・警備・運輸業の採用支援に特化した部署だ。東京2020オリンピックが開催されるはずだった2020年の初め、私はすがる思いでこの窓口を訪れていた。

当時の私は、採用担当者として駆け出しだった。それまでは事務方として縁の下の力持ちに徹していたが、業務の幅を広げるために取り組み始めたのが採用だった。社員十数名の、電気を扱う小さな会社。社員の平均年齢は上昇の一途を辿り、久しく若者を見ていない。求人を出しても音沙汰無く、挙句の果てには「誰でもいいから、とにかく人が欲しい」と言われる始末。そんな状況を聞いた窓口の担当者は、様々な支援を提案してくれた。そんな温かな対応に励まされ、私は動き出した。

活動を始めて最初に考えたことは、建設業の採用が難しい理由と、業界の魅力と誇りについてだった。私のイメージとしても、建設業=3Kでしかなかった。しかしながら社員の働く環境は、既に随分と改善がなされていて、昭和の体育会系のノリや荒ぶる職人たちというイメージとも違うのだ。それでもやはり一般的なイメージが変わらない限り、建設業に興味を持つ人は少ないままだろう。そこを変えなければ、という結論に至った。

そこでまず、会社で一番の古株社員に話しを聞いてみることにした。25年以上この業界に携わってこられた理由は何なのか?その社員は答えた。「自分は未経験から電気の道に入ったが、この道は何年経っても頂上に辿り着ける感覚が無い。技術は日進月歩で進歩し続けているので、新しいものが出る度に自分はまた初心者として勉強することになる。その仕事の奥深さが自分にとっての魅力だと思う。そして、自分の仕事によってお客様から感謝されることが嬉しいし、人々の当たり前の日常を陰で支えているのが自分達だという誇りを常に持っている。」と。それを聞いた私は、初めてその社員のことを心底カッコイイと思った。多かれ少なかれ、建設業に携わる人々は、こういうプライドを持っているのではないだろうか。その姿を伝えたい、伝えることが私の使命だと確信した。

それから、私のプレゼンは変わった。社員の口から仕事の魅力や誇りについて語ってもらえるようなスタイルにした。普段は見せない仕事への熱い思いを、大勢の前で語る彼らはとてもカッコ良かった。そして、最後に「採用担当者としては、単に人が採れればいいのかもしれません。でも、私は違います。私はこの建設業に携わる人達の魅力や誇りを皆さんに伝えることで、業界のイメージを変えていきたいと思っています。日本のモノづくりには、世界に誇ることのできる技術力があります。それに興味を持つ人を採用し、この社員達のように仕事に誇りを持てるよう育成していくことが、当社の願いです。」と伝えた。

そんな地道な活動が実って、2年の間に5名の若者を採用することができた。入社の動機は様々だったが、皆この業界に希望を持って入ってきてくれた。伝え方を変えただけでこんなに変わるものなのかと、私自身が一番驚いている。

今年の年度の変わり目頃に、23番窓口の担当者から久々に連絡が入った。「コロナ禍で失業など労働市場に変化はあるものの、建設業の採用が厳しいのは相変わらずです。」と書かれていた。それに返信する形でここ2年の採用実績を報告したところ、大変驚かれて「ハローワークの仕事がなくなりそうです。今度、企業向けに採用活動に関するセミナーを行うので、是非皆さんの前でお話しして下さい。」と返ってきた。2年前に相談で窓口を訪れた私が、今では採用に困っている企業を前に話すようになるとは、誰が想像できただろうか。

改めて、建設業の魅力について考えてみたい。建設業は「つくる」と「まもる」に分けられる。つくる人達は、よく工事現場で見かける。私には成人になる息子がいるが、幼い頃は重機や大型車両が大好きで、工事現場巡りをしては、二人で遠くから眺めて「カッコイイね」と話していた。車も働く人もカッコ良かった。手を振ってくれた工事現場の人達は、息子の憧れのヒーローだった。そうだ、つくる現場の人達はヒーロー集団なのだ。そして今、私はまもる人達を陰で支えている。仕事に誇りを持ち、日々現場で頑張っている彼らもまた、社会インフラをまもるヒーローだ。日本のモノづくりを支え、黙々とミッションを遂行し、社会の安心安全をつくり・まもるヒーロー達の活躍こそが、建設業の魅力であり誇りではないだろうか。

今日も私は採用活動に励む。そう、毎日現場で頑張るヒーロー達の魅力を伝えつつ、新たなヒーローを探すために。

 

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