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2021年11月 No.533

「実習」の面白さとは何なのか!? 事前の予備学習動画の YouTube配信が大活躍

鹿児島県県央に位置する加治木町。町のシンボルである蔵王岳の麓にある鹿児島県立加治木工業高等学校は、創立110周年を迎える伝統校です。地元に愛され、貢献してきた伝統を未来につなぐべく、革新的な授業方法にチャレンジし続ける同校。今回は、動画を活用して土木の学びの面白さを発信し、学びの質を向上させようと取り組んでいる土木科の高橋宏幸先生と、藤﨑智弘先生にお話を伺いました。

実習での理解度を深めるため事前情報は視覚的に提示

実習時に教員をサポートし、生徒に寄り添う「実習助手」という立場だからこそ、土木の面白さをいかに生徒に伝えようか愚直に考える。実習助手として12年のキャリアを積む高橋先生がたどり着いた面白さの伝え方は、土木作業の一連を実習で体験させることだった。

例えば土木製図で側溝蓋の図面を描く授業。どんな側溝にあてがう蓋か計画を立て、CADを使用し図面を製作。それをもとに鉄筋を組むなどして実際につくったものを簡易的な完成検査や写真管理をし、いわゆる施工管理の一連をなぞるように行っている。

「図面を描いたり模写したりしたものを、実際につくっている学校は少ないのかなと思っています。しかし、自分たちが描いたものからものができあがり、その精度などをチェックしていくという一連の流れで実習を行うことは、実際の現場で行われていることのミニチュア版を経験するということです。この経験から現場の仕事をイメージできるなど、興味喚起を促せるのではないかと思います」

実際につくる工程に入る前には、工程中に重要となるポイントや道具・器具の使い方についてまとめた自作の資料を用い、ていねいに説明することを徹底。実習時に生徒が取り残されないように配慮している。

「鉄筋の組み方やマーキングの打ち方、結束方法などポイントごとに写真を撮り、流れを追ってまとめています。作業に入る前に視覚情報を与えることで、実際に作業をするときの理解度に深みが増しているように感じています。また、実習後にレポート提出をさせていますが、生徒たちはどうやってレポートを書いていいのか分かりません。先輩が書いたものを資料の中に盛り込み、どうレポートをまとめるといいのか事前に示すようにしています」

また実習中、生徒が作業に集中できるよう、高橋先生は実習の予備学習をYouTubeで配信している。

「実習の時間は限られているので、どうにか説明の時間を短縮できないかなと考えた結果、動画を配信して予習として見てもらうことにたどり着きました。授業中に説明をする場合には、後ろの方にいる生徒は死角ができて見えないなどがありますが、動画は陰になっていて見えなかったということはありません。細かな作業をフォーカスして見せることも可能ですから、事前に動画を見ておくのはとても効果的だと感じています」

実習の予備学習のほかにも検定対策に特化した動画を配信するなど、さらなるYouTube活用を模索している。

生徒たちがYouTubeにて予習してきた事を実際に目の前で実演することで、二重で学ぶ形をつくり、学びを深めている。さらに技能実習を行うことで、技能者側の仕事についても興味関心を持ってほしいと考える高橋先生。「また、この実習スタイルがしっかりと定着していくためにも、私自身が教科指導能力を上げていかなければと感じています」と話す

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