FOCUS
インフラメンテナンス課題にメス!建設業界への高い就職率を誇る“岡山道路パトロール隊”とは?
生徒のやる気を後押しした産官学連携の功績
また、この活動の最大の特徴は「産官学連携」で行っていることにある。生徒たちが校外にパトロールに出かけるまでの準備として、国土交通省と企業からそれぞれ3時間の座学講習会、その後は一緒に3時間パトロールに回り実地でレクチャーを受けている。
「生徒のため、地域のため、社会のためにという思いに駆られて」協力を仰ぎに行ったという狩屋先生。連携をするにあたり最も大切にしているのは、「相手の利」だそうだ。
「担い手不足が叫ばれる今、国土交通省も企業も親身になって我々の話を聞いてくださいます。その中で、こちら側の要望だけを押し付けてはいけない。相手の利をまずは考えることを、大切にしています。そこに自分たちがどう関われるのかを考えたうえで、自分たちにとっての利を捉えるようにしています」
そうしてWin-Winの関係を築き導入に至ったもののひとつが、スマートフォンを活用した「クラウド型道路パトロール支援サービス」。異常箇所をスマートフォンで撮影し、その場でコメントを入力するだけで報告書ができあがるというICT技術を活用したシステムだ。
「ICTの活用やi-Constructionは、建設業界が今力を入れているところではありますが、現場見学等でみるだけでは物事が大きすぎて、生徒たちには遠い存在のものでした。しかし、スマートフォンは生徒たちにとって最も身近なICT。これによって、ICTやi-Constructionを身近なものだと感じてくれたのは、大きな成果でした。またスマートフォンを使うことで、これまでは『点検って泥臭い』と思っていたものが、『いやいや、意外とかっこいい!』とイメージアップにつながったことも良かった点ですね」
実は、この支援サービスを導入するまでは、報告書の作成に膨大な時間を要していた。それがゆえに、後工程が大変なのだったら、今手を抜いてしまおうという後ろ向きの姿勢を示すこともあった。
「子どもたちは素直なものです。しかし私は常に、課題研究は生徒たちがキラキラと、積極的な姿勢で探求すべき時間だと考えています。何とかしなければ…と思っていたところにスマートフォンを活用したサービスの導入ができました。授業中にスマートフォンを使える特別感も相まってか、生徒たちはキラキラを取り戻し『次もみつけよう』と積極的にパトロールに携わるようになりました」
こうしてこの活動を通し、自身の行いが社会の誰かの生活の“当たり前”を支えていることに気づいた生徒たちは、大きく成長を果たしている。
担い手不足問題にみなで取り組みたい!
平成29年度から取り組んでいる道路パトロール隊だが、初年度には課題研究の定員である6名中2名が建設業界に就職した。それが年度を重ねるごとに業界への就職者が増え、今では6名皆が建設業界へ技術者として入職。メンテナンスを行う地域ゼネコンや大手ゼネコン、また国土交通省をはじめとした施設管理をする行政等に人材を輩出するなど、非常にいいサイクルを生んでいる。そこで、「担い手不足は1校の問題ではない」と、岡山県下の津山工業高校・笠岡工業高校とも連携して、「岡山道路パトロール隊」を展開し、実施している。
「本校から小さくスタートした道路パトロール隊ですが、担い手不足の課題に一役買いたいと思っています。道路パトロール隊の活動を様々な学校に展開しながら、なんとかインフラメンテナンスの活動普及に努めたいと願っています。もし、道路パトロール隊の活動にご興味を持っていただけるのであれば、一緒に進めていきましょう!」
明るい建設業、特にインフラメンテナンスの未来を真っすぐと見据え狩屋先生は、全国各地の先生方に力強くメッセージを送る。
「教員はスペシャリストではなくジェネラリスト」という狩屋先生。
プロと生徒をつなぐコーディネーターとして、企業や行政と関係性を築いている
産学連携し、「インフラ調査士補」を新設。
学問として高い位置づけにあるとは言い難いインフラメンテナンスを学校教育に取り組む仕組みを模索している
岡山県倉敷市真備町
|
岡山県立岡山工業高等学校
〒700-0013 岡山県岡山市北区伊福町4-3-92
WEB: http://www.okako.okayama-c.ed.jp/
◎本誌記事の無断転載を固く禁じます。
【冊子PDFはこちら】