FOCUS

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2020年9月号 No.521

将来味わう大きな達成感に向け、小さな達成感を積み重ね「喜びの練習」を

自身の経験から生徒に願うのは可愛がられる人材に

教員になる前には、内装業の施工管理として現場に立っていた経験があるという中村先生。現場では自分より経験も知識も豊富な職人たちに支えられ、学校では学べないようなことをたくさん吸収した。周囲の助けを借りながら社会人として成長し、ものづくりの楽しさを深めていった自身の経験から、「生徒たちにも、周りから可愛がられる人材になってほしい」と想いを込め、指導に努めている。

「自分が頑張っていたら、周りは応援してくれると思うんですね。現場で先輩たちが、あれこれ教えたくなったり声をかけたくなったり。そう考えると『コイツ頑張ってんな!』って思って可愛がってもらう機会を増やすには、周囲から自分はどう見えているのかを意識できることはとても大切だと思います。周りからの見え方を意識するためには、人前に立つことが有効です。そのため、1年生から発表の機会をたくさん設けるようにしています。座学授業の終わりには一人ひとりに意見を聞くようにしていたり、3年生になると課題研究の発表の場が何度かあったり。最初は人前で話すことが苦手だった生徒も、発表の場をたくさん経験することで『最初に礼をすると印象いいんだな』などと感じ、どう見られているのかの意識が少しずつ持てるようになっているようです」

創立117期生として吉高土木を担う皆さん。ものづくりを通して得られる楽しさや達成感を伝えていきたいという中村先生の想いを受けとめながら、確かな“吉高マインド”を日々育んでいる

コロナ禍中の在宅教育浮き彫りになった課題

今年はコロナ禍の影響で学びの形が大きく変わり、同校でも教育委員会が作成したマニュアルのもと、授業はYouTubeで配信。並行して宿題などの課題を課し、在宅教育を行った。在宅教育期間中は連絡の滞りを防ぐため、学校ホームページに加えて奈良県が配信する「安心・安全メール」を活用し、情報を発信。

「安心・安全メールの中でも、『今日、YouTubeで授業を配信します』など発信したことで、抜け漏れなく連絡が一斉にできたのは良かったと思います。しかし、工業教育の主軸は機材に触れて作業を学ぶ実習にあります。通常だったら座学で学び興味を持ったことがすぐに実習で体験できますが、動画配信でそれをいかに担保していくのかということは、ひとつ課題として感じました」

伝統校の歴史に幕今の吉高生にかける想い

創立118年を迎える同校だが、少子化の影響を受けて令和3年度の募集は中止。大淀高等学校と統合され、「奈良南高等学校」として再編されることが決定した。現在の在校生をもって、「吉野高等学校」の歴史は一旦幕を閉じることとなる。

「生徒たちには、胸を張ってしっかりと吉高を背負ってほしいですね。吉高生として頑張っていることが、歴代OBの方々の耳に届くように!と話しています」

今後校名は変われども、“吉高マインド”は脈々と受け継がれていくことだろう。

 

大滝ダム

中村先生が担当する、学校設定教科『奈良TIME』という授業の題材。
伊勢湾台風の時に、学校そばにある吉野川(紀の川)が氾濫。それを機につくられた、治水と奈良市・和歌山市などへの利水等、多目的に使われるダムである。

 

奈良県立吉野高等学校

〒639-3113 奈良県吉野郡吉野町飯貝680
WEB:http://kou.oita-ed.jp/oitakougyou/

 

◎本誌記事の無断転載を固く禁じます。

 

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