FOCUS

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2019年2月号 No.505

全国各地で対応できる人材育成を目指して石川県特有の“雪吊り”から学ぶ、造園の基本

石川県造園業協同組合が設立されたのは、昭和59年8月。藩政時代から金沢に伝わる庭づくりの伝統技術の継承の一環として、平成28年度から建設労働者緊急育成支援事業に参画しています。石川県のみならず、全国各地に訓練生を送り出してきました。今回は、同組合の活動や人材育成にかける想いについて、近藤保夫事務局長にお話を伺いました。

石川県造園業協同組合の概要

美しい庭園を有し、高い造園技術での管理が求められる観光名所が多い金沢の地において、30年あまりの間、技術の向上や業界近代化の促進などを目指して活動してきました。現在では、長町武家屋敷跡の土塀の薦(こも)掛けをはじめ、緑の大切さを啓蒙する「緑化推進フェア」の開催、全国に先駆けた「職人大学校」の開校など、多くの事業活動を行っています。中でも設立以来、長きにわたり尽力しているのは人材育成の取り組みです。造園技能検定の予備講習から検定試験までのサポートや、県管轄の職人スキルアップセミナーの実施、建設労働者緊急育成支援事業への参画など精力的に取り組んでいます。

建設労働者緊急育成支援事業の取り組みについて

建設労働者緊急育成支援事業では、「建設ものづくりコース(造園)in金沢」として職業訓練を実施。庭づくりの技術が伝承される金沢で行われる訓練は、徹底的に基本を大切にしたものです。近藤事務局長は、「造園業においての作業、特に樹木の葉や枝を切る剪定は、事業所ごとに様々な個性が出るため、色々な場面で応用できるよう基本中の基本を教え汎用性の高い技術を身につけることが大切です」と語ります。
まず基本となり一番重要なのは“ロープワーク”です。「ロープワークは、用途に応じたロープ結びの技法や体系で造園工の技量を測る1つの目安。扱い方を見れば、どのような仕事をしているのかひと目で分かります。また、これができれば枝を雪の重みで折れないようにする雪吊りにも活用できます」。全国各地、どこに就職しても対応できる人材を育成すべく、回を重ねるごとにカリキュラムを見直しています。実技を行う前に必ず座学の時間を設けるなど、事前に学習することで自分で考える力が養えるよう訓練内容の精度を高めています。

人材育成についての想い

今は職業訓練の基盤も整いつつあり、業界に新しい風を吹き込むタイミングだと考えている近藤事務局長。本事業では職業訓練を通じていずれ造園業を背負っていく中堅層の育成も同時に担っています。中堅層の者が講師になり、人に教えることの難しさを分かるようになりますし、そのためには自らが勉強しないといけません。さらに、訓練生との年齢差も縮まりますので、訓練生も気軽に質問できます。また訓練終了後、参加希望者によって立ち上げられたグループ「お庭の達人」での活動も定期的に開催。造園業界の1つのグループとしての役割が期待されています。


 

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