FOCUS
憧れの連鎖が心をゆさぶる!社会で通用する『製品』を生み出す、岩国工業・都市工学科が実践する学びのカタチ。
地域の安全を守る
実践的な学び
ものづくりの力を活かした実践は、これだけにとどまらない。電気工事士の資格取得に向けた実技試験の練習の際に出る廃材である銅線を活用したモルタル製スマホ用スピーカーの製作から、チョウザメの飼育管理、ゴーヤを用いたグリーンカーテン作りなど、分野の垣根を超えて循環型社会を意識した多岐にわたる取り組みを展開している。また、産官学連携による『道路パトロール』も、生徒の専門性を深める試みだ。
「岡山県の工業高校の取り組みを手本として始めた『道路パトロール』は、生徒が国土交通省や企業と連携し、通学路や近隣の国道で道路のひび割れ、陥没、ガードレールの破損などを点検・報告する実践的な学習活動です。生徒たちには事前にインフラ調査士補の資格を取得させ、ただ道路を歩くのではなく、プロと同じ視点で陥没やひび割れの兆候を見抜く力を身につけさせます」。
実際に発見した危険箇所が後日修繕されているのを見た生徒たちは、“自分たちが地域の安全を守っている”という確かな手応えと、建設業という仕事への大きな誇りを感じてくれていると語る柿本先生。
「ベンチ型ロケットストーブも、ただ作るだけでなく、将来的には、地域の自治会や市役所の方を招いた防災訓練での活用を考えています。ベンチをストーブに変形させ、みんなでぜんざいや豚汁を作るなど、形式的な避難訓練で終わらせず、避難後の生活を想定した実践的な場を設けることで、学校が地域と連携を深めるハブとしての役割を果たすことが期待されます」。
こうした地域貢献を実感できる体験型実習を重ねることで、生徒の意識は劇的に変化した。近年では土木系公務員への合格者が急増しているほか、女子生徒の活躍の場も広がっている。
憧れの連鎖で育む
生徒たちの未来
しかし、柿本先生は建設業界全体の現状に対して危機感も隠さない。
「現在の建設業界は“週休2日制になりました”とアピールしますが、それは他業界ではとうに当たり前になっていることです。例えば“月に1回は3連休がある週を作る”など、若者のプライベートを応援するような、一歩先を行く先進的な労働環境を提示しなければ、人材確保は難しいでしょう」。
魅力的な業界であることを伝えるためには、“心が動く瞬間”の演出が不可欠だと話す。
「私は“憧れの連鎖”が生徒の心をゆさぶると信じています。建設ゼミナールなどの体験実習では、あえて年齢の近い若手卒業生を講師に招き、現場で楽しそうに働く姿を見せてもらいます。難しい専門用語を並べるよりも、まずは“面白そう”とか“かっこいい”と心が動いたそのタイミングで、企業の魅力を伝える合同説明会を同日実施することが、担い手確保には非常に効果的です」。
生徒一人ひとりに真摯に向き合い、時には失敗すらも成長の糧として見守る柿本先生。卒業していく生徒たちには、技術以上に大切にしてほしい想いがある。
「論語の言葉に“これを知る者はこれを好む者に如かず、これを好む者はこれを楽しむ者に如かず(知・好・楽)”というものがあります。これは、“物事をただ知っているだけの者は、それを好きでやっている人には及ばない。そして、ただ好きなだけの者も、それを心から楽しんでいる人には敵わない”という意味。船乗りを育てる時には、ロープの結び方を教えるよりも先に、海の冒険がいかに素晴らしいかを伝えることが大事ですよね。知ることより先に好きになること、そして心から仕事を楽しみながら、自分の成長を実感できる人になってほしいと願っています。自ら学び、楽しみながら地域を支えていく。そんな人材が、本校から一人でも多く育ってくれることを期待しています!」。

災害用ベンチ型ロケットストーブの開発に取り組む都市工学科の生徒たち。最適な配合を求めて、幾度も軽量コンクリートのテストピース製作に挑んだ。失敗を繰り返しながら素材と真摯に向き合うことで専門的な学びを深く掘り下げるだけでなく、自分たちの手掛けたモノが地域の防災や社会貢献に直結するという大きな使命感とやりがいを育んでいる。

「美竹林ボランティア錦川」の方々の協力を仰ぎながら汗を流す、千石原の竹林整備の様子。地域の現場へ実際に足を踏み入れ、間伐や環境保全活動に臨むことで、美しい景観の維持が地元の観光振興といかに深く結びついているかを肌で学んでいる。教室の中だけでは得られない実践的な地域貢献への熱い思いが、生徒たちの確かな成長につながっている。
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久杉橋(くすぎばし)
柿本先生が取り上げたのは、岩国市周東町にある久杉橋。「2018年の西日本豪雨で流失後、建築家の隈研吾氏のデザインにより再建されました。林業活性化を見据えて地元木材をふんだんに使用し、将来の老朽化時にも周囲の木々で更新していくというサステナブルなコンセプトが特徴です。生徒たちと共に上流の砂防ダム整備とあわせて見学に訪れた思い出もあり、ぜひ一度足を運んでいただきたい木造橋です」。 |


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