FOCUS

FOCUS
2026年7・8月号 No 580

憧れの連鎖が心をゆさぶる!社会で通用する『製品』を生み出す、岩国工業・都市工学科が実践する学びのカタチ。

山口県立岩国工業高等学校都市工学科 柿本憲亮先生

日本三名橋の錦帯橋をはじめとする観光資源や豊かな自然に恵まれた、山口県東部に位置する山口県立岩国工業高等学校。同校の都市工学科は、生徒たちの専門性と社会貢献への志を育む取り組みなどを通じて、地域インフラを支える多彩な人材を輩出している、県内でも貴重な建設系単科の学科です。今回は、民間企業での現場監督経験も持ち、ユニークな教育で生徒の心を動かす都市工学科の科長・柿本憲亮先生にお話を伺いました。

作品ではなく
製品を生み出す視点

県内に5校しかない建設系学科の中でも、単科として存続する貴重な存在である都市工学科。同科を率いる柿本憲亮先生は、民間企業での現場監督を経て教壇に立つという異色のキャリアを持つ。

「実家が工務店だったこともあり、建築の道を志しました。大学卒業後は首都圏の工務店で現場監督に携わっていたのですが、恩師からの誘いがあり教員になりました。正直なところ、人の前に立つのは苦手で、自分にとって最も向かない仕事だと思っていました(笑)。しかし、自分に足りない能力を獲得する挑戦として、あえてこの道を選びました」。

現場での実務経験を経ているからこそ、柿本先生の教育方針は極めて実践的だ。

「工業高校である以上、作って終わりの『作品』ではなく、社会で通用し、対価を得られる『製品』を生み出さなければなりません。お金をもらえるということは、それだけ人に感謝され、求められているということです。だからこそ、一品もので満足するのではなく、再現性があり量産できることを前提に指導しています」。

そうした『製品化』へのこだわりが色濃く反映されているのが、3年生の課題研究で取り組む災害用ベンチ型ロケットストーブだ。平時は公共施設などの休憩用ベンチとして利用し、災害時には分解して積み重ねることで炊き出し用の高火力ストーブへと活用される。

「東日本大震災などの過去の災害を検証すると、避難所における温かい食事がいかに重要かがわかります。しかし、従来の金属製ペール缶のストーブは保管場所を取り、経年劣化も懸念されます。そこで、建設系の強みである耐久性の高いコンクリートに着目しました。ただ、一般的な普通コンクリートで作ると1ブロックが120kgを超えてしまい、設置や移動が困難になります。そこで生徒たちと共に挑んだのが、軽量コンクリートの開発です。特殊な材料ではなく、ホームセンターなどで安価で手に入る農業用のパーライトやバーミキュライトなどの鉱物系材料を選びました。有機物を含まないので腐食の心配もありません。水やセメントとの配合比率については前例がなく、生徒たちと何十個ものテストピースを作り、試行錯誤を繰り返しました。その結果、十分な強度を保ちながら約40kgまで軽量化することに成功したんです」。

さらに、専門知識がなくても量産できるよう、再利用可能な木製型枠の設計にもこだわった。

「いざという時、レシピと型枠さえあれば全国どこでも誰でも再現できることが重要です。ゆくゆくは就労支援施設などに製作工程を担ってもらい、完成したベンチを公共施設が適正価格で買い取るといった、社会貢献と経済活動が循環する仕組みの構築までを見据えています」。

1 2

関連記事

しんこう-Webとは
バックナンバー
アンケート募集中
メールマガジン配信希望はこちら