FOCUS

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2024年6月号 No.559

建築は、こんなに楽しくて奥深い!資格取得や現場での学び、多彩な経験を活かした教育

建築の現場から
教育の現場へ

工業高校卒業後、建築施工管理として活躍した経験を持つ首代先生。現場で後輩を指導したことが、教職へと進むきっかけとなった。

「現場に入って初めて知ること・学ぶことは、想像以上に多いもの。戸惑う場面も多かったですが、それ以上に普段は見えない“仮囲いの内側”にあるものを知ることで、建築ってなんて楽しくて奥深いんだろうと再認識しました。後輩に指導する中で人の成長を支える喜びを感じるとともに、この“仮囲いの内側”にある魅力をもっと多くの人に披露し、建築に携わる人を育てたいという想いが強くなり、教員を目指すようになりました。教員免許を取得する過程で、大学に通いながら職人として技能を磨いた経験も糧となり、教職に就いた今に活きています」。

2級建築施工管理技術検定(第一次検定)や建築CAD検定など、資格取得にチャレンジする生徒の多い同校。先生自身の経験も踏まえ、そうした挑戦を温かくサポートしている。

「私自身、高校時代にジュニアマイスターゴールド(特別表彰)をいただいた経験から、高校生にとって資格を取得することが大きな自信と誇りにつながると実感しています。夏休み中の補習などは辛くて休んでしまう生徒もいますが、『試験がうまくいった時の喜びは、ゲームをクリアした瞬間や、建物を建て終わった時の達成感に似ているよ』と話すと、生徒からも『施工管理を目指したい』といった声があがるなど、やる気が増していくのを感じます。せっかく工科高校に入学して専門的な勉強をしているのだから、ただ教科書を暗記するのではなく、実際に社会や現場で役立つことや、自分たちの家を建てる時に必要な知識をしっかりと身につけさせてあげたいと思っています」。

生徒を見守る一方で、先生自身も資格取得にチャレンジ。1級建築・土木施工管理技士補や2級鉄筋組立て技能士など、様々な資格を有している。

「より多くのことを生徒に教えられる教員になりたいという想いから、毎年何かしらの資格取得に挑戦しています。私の場合は資格勉強のモチベーションを維持するために、あえて周りの人に『この資格を受ける!』と宣言して、自分を追い込むことで、後に引けない状況を作りだしています。資格を取得できたときには何とも言えない達成感が得られるので、どんどん資格取得にチャレンジして、生徒にも、こうした喜びをぜひ味わってもらいたいですね」。

 

大の“建築好き”を
1人でも多く育てたい!

自身の高校生時代を振り返り『決して勉強が得意な生徒ではなかった』と笑顔を見せる首代先生。そうした経験があるからこそ、生徒目線に立った教育を大切にしている。

「苦手なことや分からないことは、あって当たり前。私の場合、力学や計算が苦手な分野でした(笑)。しかし、そうしたことこそよく学び、整理し、順序立てて勉強していくことで、徐々に自分なりの答えが見つかるものです。勉強が得意ではなかった自分だからこそ、生徒に寄り添って教えていけることがたくさんあると思っています」。

大の“建築好き”を自負する首代先生。工業教育を通して、そうした“建築好き”を育てることが1番の望みだ。

「建設業の魅力は、1つとして同じものがない一期一会の現場で、全員が同じ目標に向かって取り組むこと。そして、毎日違う景色を目にできること。まだ見ぬワクワクが、現場には詰まっています。私が携わってきた現場を伝えることで、新たな“建築好き”が育ち、新しいものづくりのチカラになっていくのだと思うと、これ以上の喜びはありません。先日も設計職で活躍している教え子と会話したのですが、生徒だった頃とは比べものにならないほど “建築好き”になっていたことが嬉しかったです。『今では建築が大好きで、現場を見るとワクワクする。計画段階から竣工まで、ずっとお客様と接して建築をすることがこのうえないやりがい』と言ってくれて…建築科の教員の醍醐味はこういうところにあるのだと実感する出来事でした」。

建築の現場から、教育の現場へ。その指導の先に、さらに多くの“建築好き”が生まれていくのが見える。

 


生徒の資格取得をサポートするにあたり、自作のプリントや過去問資料などのほか、合格に向けて何をいつまでにするべきかを示した工程表を準備する首代先生。「資格取得を目指すからには、全員に合格してもらいたい。工程表を見せることで生徒にもこちらの本気度が伝わり、合格に向けたフローが見えることでモチベーションの維持にもつながります。施工管理の経験が活きていますね(笑)」

 


課題研究によって生まれたアートのような製作物が並ぶ校内。「体験入学の際などにこうした製作物を見て、『自分でも作ってみたい!』と言って入学する生徒もいます。学んできたものを形にして残すことができ、目にした人たちの心を動かせる。それも建築の魅力だと感じます」と首代先生

 

国立西洋美術館

日本に所在する、唯一の巨匠ル・コルビュジエ設計による建築。「生徒との建築見学会で訪れた場所です。中心から外側へ拡散されるような展示空間“無限成長美術館”というコンセプトを受け、私自身にも『蓄えた知識や技術を自分だけのものにしておくのはもったいない。大好きな建築知識を生徒に伝えたい』と、新たな成長を感じさせてくれた建築物です」

 

 

東京都立蔵前工科高等学校

〒111-0051 東京都台東区蔵前1-3-57
WEB:https://www.metro.ed.jp/kuramaekoka-h/

 

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