特集

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2021年4月 No.527

コロナ禍においても信頼される持続的な金融支援事業

CHAPTER 3 下請事業者向けの金融支援策(下請債権保全支援事業)

■1■ 事業の概要

米投資銀行のリーマンブラザーズが平成20年9月に経営破綻し、これに端を発した金融資本市場の混乱は世界経済に大打撃を与えた。一定の自己資本比率を達成できない金融機関は市場からの撤退を余儀なくされるため金融引き締めが行われたが、それ以上に輸出の急速な落ち込みによる製造業の業績が急激に悪化したことで、同年及び翌年にかけほぼ全ての産業において企業倒産が激増したことは記憶に新しい。建設工事は、工事を発注者から直接受注する元請企業を管理者とし、そのもとで複数の専門工事企業や資材企業が多数介在することから、工事代金等の支払がストップするとすぐさま中小規模の専門工事企業の資金繰り等に負の影響が及ぶこととなる。折からの建設投資の急激な減少も相俟って、これらによる連鎖倒産の被害は甚大であるとして、国土交通省は平成22年3月、前年から行ってきた下請資金繰り支援事業に引き続き、下請債権保全支援事業を創設した。

この事業は、中小・中堅下請建設企業等の経営・雇用安定、連鎖倒産の防止を図るため、 ファクタリング会社が当該下請建設企業等が保有する工事請負代金等の債権の支払を保証等する仕組みである。事業創設後約10年が経過する中、現在までに約6,000億円規模の債権保証及び買取が行われている。

元請建設企業が、下請建設企業又は資材企業(以下「下請建設企業等」)に対し工事(又は資材)を発注。
下請建設企業等は、元請建設企業との契約を交わしたのち、工事を施工(または資材を納入)。
下請建設企業等は、ファクタリング会社に対して保証を申し込み、保証料を支払い。
ファクタリング会社は、下請建設企業等との間で取り交わした保証を実施。
 仮に元請が倒産した時には、保証金を支払う。
下請建設企業等が支払う保証料の割引として、(一財)建設業振興基金が助成を実施。

 

■2■ 最近の実績等

従来から、経営基盤が脆弱と言われる建設業の倒産は他産業に比べ高い水準にあったものの、東日本大震災以降における国土の防災・減災予算や国土強靭化対策による建設投資の増加等もあって、近年は建設業の倒産は減少傾向にあった。これに伴い、本事業の利用についても平成25年度をピークとして徐々に落ち着いてきている。しかし、令和2年度上半期は、新型コロナウイルス流行の懸念(建設工事の中断や支払い遅延等による代金回収に係る不安心理など)もあり、前年同期に比べて取扱件数、金額ともに増加した。保証ファクタリング事業者及び利用企業に対する聞き取り調査においても、社会経済情勢が不安定な中においては、本事業のような公的サービスの活用が確実な工事代金回収のための安心材料となっていることを確認している。

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