特集

特集
2021年4月 No.527

コロナ禍においても信頼される持続的な金融支援事業

■3■ 事業の特徴とメリット

❶ 保証料の割引助成により、低額で利用できる

本事業の利用に当たっては、下請工事又は資材代金の回収までの間、案件に応じ保証料が必要となる。しかし支払う保証料を本財団が助成することにより、資金力の乏しい中小・中堅企業においても軽い負担で利用することができ、工事代金回収への不安を解消することができる。なお、助成金に関連した諸手続きはファクタリング会社が代行して行うため、利用企業は割引後の利用料を負担するだけで済む。

❷ 元請企業に知られることなく、安心を買うことができる

建設工事に携わる企業間において相互の信頼関係は重要であるが、それと確実な代金回収とは別問題である。下請債権保全支援事業を申し込んだからといって企業間の信頼関係を損ねることのないよう、保証を掛けていることを元請企業に知られない、いわゆるサイレント保証となっている。

❸ 手形1枚から工事契約全体まで、保証対象は幅広い

請求書、支払通知書、約束手形、電子記録債権から工事契約全体まで、保証の対象は幅広い。保険会社等が取り扱う商品には類似のものがあるが、下請債権保全支援事業では保証を掛けたい案件のみの利用も可能であるため、余計なコスト負担が発生することはない。なお、申込みに当たって、ファクタリング会社は所定の審査を行うが、保証対象の元請建設企業の経営状況等により、保証料等の条件が異なることがある。

 

■4■ ご利用に当たって

(一財)建設経済研究所の建設投資見通しによれば、令和3年度の建設投資額は公共投資は微減にとどまるものの、民間投資はコロナ禍の影響を受けて減少した本年度をさらに下回る見込みとされている。これにより、少ない工事案件に多数の元請企業が参加することが見込まれ、現時点で顕在化してはいないが、受注競争の激化や受注機会の減少による利益率の低下等による元請企業の資金繰り及び経営状況の悪化、ひいては下請企業への支払遅延等が懸念されるところである。

下請債権保全支援事業の開始から10年が経過した令和2年度、本財団では利用企業に対するアンケート及びヒアリング調査を行い、制度のメリットや改善点等について直接確認する機会を得た。前段で示した利点のほか、昨今では企業の与信管理に対するコスト負担の軽減、長時間労働の抑止などの従業員の働き方改革、工事代金の確実な回収による営業担当者のモチベーション向上に役立てているといった新たな声も聞かれた。建設業は工事現場の気象や施工条件等が影響する一時集中的な施工が行われることが多いことを踏まえ、従来は労働基準法における時間外労働の上限規制の適用除外を受けていたが、これも令和6年には解消され違反者には罰則が科されることになる。このことからも、企業における事務の合理化、従業員の負担軽減はもとより、こうした例外措置が業務の適正性を確保する観点からも、下請債権保全支援事業のご利用を検討していただきたい。

CHAPTER 4 おわりに

建設企業の経営は、その時々の社会情勢によりさまざまな影響を受ける。工事の受注や利益率、資金繰り、人材の確保や育成など、特に中小規模の事業体にあっては尚更それらのインパクトは強力であり、状況が不透明になればなるほど経営に与える打撃は大きくなる。このようななか、中小建設業に対する金融支援は、いかなる局面においても安定的な運営を継続することが求められる事業である。勿論、今般のコロナ禍のような不測の事態においても、建設事業者が安定的な経営を継続するためのサービスとしての役割が期待されている。

上記で説明した両事業は、国が複数年にわたって実施する事業の財源として本財団に設置した「建設業安定化基金」及び「建設業債権保全基金」により運営している。毎年、政府による行政改革の一環として、執行状況や今後の見通し等についての点検が行われているが、建設企業の資金繰り支援を通じた経営の安定化に寄与する極めて重要かつ継続すべき事業であると認識している。

1 2 3 4 5 6

関連記事

しんこう-Webとは
バックナンバー
アンケート募集中
メールマガジン配信希望はこちら