特集

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2021年4月 No.527

コロナ禍においても信頼される持続的な金融支援事業

CHAPTER 1 はじめに

一般財団法人建設業振興基金(以下「本財団」という。)の原点は、金融支援である。本財団は昭和50年7月、当時のオイルショックによる物価高騰から強力な金融引き締め政策がとられる中、建設業団体や事業協同組合が特に経営規模が小さく、体力や経営資源が乏しい中小・中堅建設企業の支援のために行う借入に対する債務保証を通じ、建設業の近代化・合理化を推進するために設立された。以後約半世紀にわたり、建設産業における金融の円滑化、建設産業の振興支援、施工技術の向上等に関する事業を行い、建設産業の振興を目的とする唯一の法人として産業と行政をつなぐ架け橋となることを目指し、建設産業のニーズを反映し的確に効果の上がる行政施策の推進に貢献してきた。以下、本財団で実施している金融事業の概要をご説明したい。

CHAPTER 2 元請事業者向けの金融支援策
(下請セーフティネット債務保証/地域建設業経営強化融資制度)

■1■ 事業の概要

中小建設業の資金繰り支援策として平成10年度に旧建設省が創設した「下請セーフティネット債務保証」(以下「SN1」)、また、SN1を拡充する形で平成20年度から開始された「地域建設業経営強化融資制度」(以下「SN2」)は、国や地方公共団体等が発注する建設工事や公共性のある民間工事を受注した元請建設企業が、請負代金債権を事業協同組合等の融資事業者に譲渡することにより、その工事の出来高に相当する額の資金を低利で調達できる制度である。現在、42の融資事業者が取扱いを行っており、全ての都道府県において制度の利用が可能である(事業者の名称や連絡先は、ホームページでご確認いただきたい)。

経営規模が比較的小さい中小建設企業は、日々円滑な資金繰りを行い、運転資金をショートさせないようにするために、経営者及び資金管理担当者が日常業務を通じ、細心の注意を払っている。工事代金の入金と出金のタイミングの相違をはじめ、受注案件及び請負金額の増減、工事内容及び工期の変更による影響、金融機関による貸出態度の変化等に常に留意し、経営の安定化に努めている。多くの企業における資金調達方法は金融機関からの直接借入が主ではあるが、SN1及びSN2の両制度を活用した資金調達は、平成10年度の制度創設から現在までに約1兆円の利用がなされており、中小規模の元請建設企業にとって極めて重要な資金調達ツールの一つとなっている。なお、建設工事における債権の譲渡については、建設工事標準請負契約約款第5条により制限されている(受注者は、この契約により生ずる権利又は義務を第三者に譲渡し、又は承継させてはならない。ただし、あらかじめ、発注者の承諾を得た場合は、この限りでない)。一部の県が発注する工事については代金立替制度の利用も可能であるものの、SN1及びSN2は工事契約の債権譲渡を活用した言わば唯一の資金調達手段となっている。

工事を施工中の元請建設企業が、発注者から将来受け取る工事代金の債権(未完成を含む)を
 融資事業者(事業協同組合や一定の民間事業者等)に譲渡するため、
 発注者に対して債権譲渡の申請を行う。
元請が当該債権を融資事業者に譲渡することを、発注者が承諾する。
元請が当該債権を融資事業者に譲渡し、融資を申し込む。
融資事業者は、当該譲渡債権を担保とし、出来高の範囲内で元請に融資する。
 (一財)建設業振興基金は、融資事業者の借入に対して債務保証を行う。
発注者は、債権譲受人である融資事業者に工事代金を支払う。
 融資事業者は、融資の精算を行う。

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