特集

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2019年2月号 No.505

工業高校が行う魅力創出の取り組みについて

2 地域と連携した実習カリキュラム作りに必要な視点 — 新潟県立塩沢商工高等学校のケース —

 視点  実習カリキュラムを作るまでの4つのSTEP

教育課程の中でも、「実習」「課題研究」をどのように行うかについては、学校の裁量によるところが大きい。新潟県立塩沢商工高等学校では、2014年度入学生より機械システム科で土木系科目の履修が可能になったことを受け、「実習は企業」「座学は学校」で実施するよう役割を分担した。まず行ったのは同科内で教員をメンバーとした「土木検討チーム」の立ち上げだ。実習カリキュラムを検討とその運用方法を確立するため、新潟県建設業協会六日町支部と「求める人材」を定義。業界では、将来的に現場代理人を担える土木技術者を求めており、卒業時に2級土木施工管理技士(学科合格)を有していることが望まれていた。この求める人材を育成するための目的や目標についてのすり合わせを密に行った。協会には「検討班」の立ち上げを依頼。「現場代理人に求められる能力」をブレーンストーミングし、高校生のうちに身につけてほしいことを整理。そこから抽出された要素を、「4つの視点」として実習の軸に据えた。

実習運営までに行った4つのSTEP

 視点  継続させるための施策

「実習カリキュラムの目的を果たすために、本物志向でいこうと思った」というのは、土木系科目の履修導入当初に同校に赴任した松本智先生(現在、新潟県立新潟県央工業高等学校)。2016年度からは協会内に「塩沢商工指導部会」が立ち上がり、検討班と変わって学校側との打ち合わせや講師派遣を行っていることは、実習内容の質を保ちながら取り組みが継続することに寄与している。しかし、忙しい合間を縫って講師を派遣する各企業の負担が、いかに軽減できるのかは継続性にも大きくかかわる。そこで負担軽減策として、繁忙期を避けた実施時期の設定や、協力企業を増やすことによる負担の平準化を図った。また、ノウハウをまとめた「実習マニュアル」を作成し、講師業務のスムーズな引継ぎも実現。さらに、教員や指導部会メンバーの任期満了などによる実習の形骸化を防ぐために運用方法を確立。“誰も”が“無理なく”“一定のクオリティ”で教えることができるよう取り組むことが、このケースの新設学科の育て方であり、継続性の強みといえよう。

POINT 1 実習ごとのマニュアル作成《「塩沢商工実習マニュアル 仮設道路工編~2年生~」より抜粋》

POINT 2 PDCAサイクルの運用

 まとめ 

本物志向のキャリア教育の定着は、生徒の働く心構えや建設業界に入る決心を促すことに有効。離職率低下につながる。建設業界への興味喚起が可能なカリキュラムを用意できれば、“くくり募集” で広く生徒を受け入れ、建設業界へ気持ちが向くよう導く指導が可能となるだろう。

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