特集

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2019年2月号 No.505

工業高校が行う魅力創出の取り組みについて

工業高校がもつさまざまな魅力。前号では、これを発信するためのPR手法について紹介しました。本号では三重県立伊賀白鳳高等学校と新潟県立塩沢商工高等学校のケースを通し、中学生に選ばれる高校であるために必要な魅力をどのように創り出すのか、あるいは魅力を継続するために必要な視点について触れていきます。

1 学科・コース新設のために必要な視点 — 三重県立伊賀白鳳高等学校のケース —

 視点  学校単体ではなく、地域という“面”で検討を深める

伊賀白鳳高等学校がある三重県では、普通科が県全体の6割、職業系学科を3割、総合学科を1割というバランスで設置され、県全体で56校の県立高校が存在している。 図1   図2 にあるように生徒数が減っており、今後も減少が進む見通しだ。その現状を踏まえ、県では「各学校の規模を3学級~8学級の範囲内に」と方針を立てている。比較的生徒数が多いエリアにある9学級ある学校はいずれ8学級に縮小され、現在2学級の学校はその存続をかけてどう特色を出していくのか、学校の活性化対策が急がれる。生徒数が限られた中において三重県教育委員会の柏端正康氏は、ひとつの学校だけで考えるのではなく、地域にとってどのような学校・学科が必要なのかをトータル的な視点で考えなければならない時期にきているという。「同じエリア内に同じような学科構成の学校があっても有益ではありません。伊賀白鳳高等学校のケースは、町や地域として大きく考えていただいたことが実を結び、コース新設が叶いました」。しかし少子化は止まってはくれない。ひとつの学科・学校を増やすということは、ひとつの学科・学校を減らすということに直結する。その現状も十分に理解し、学科や学校を新設するからには生徒のために地域のために、その学びの内容を充実させ大切に育てていく必要がある。

地域の状況と、学校の置かれている状況を把握する
POINT 1 県内の県立高校の分布を学級数規模でみる

三重県ではエリアを6つに分け、2学級から9学級の学校がどの地域に何校ずつ所在しているかを把握している。各エリアの生徒の多寡により地域ごとに学校所在数のばらつきはあるが、生徒数の推移・予測を合わせて検討し、3~8学級の範囲内に学級数の調整を図る方針。地域に求められる学科・学校を、広い視野をもって検討している。

POINT 2 クラス数、生徒数の推移をみる

 図1  三重県内のクラス数の推移

 図2  三重県内の中学校卒業者数の推移と予測

 視点  学校活性化のひとつとして、特色のあるカリキュラム構成に
POINT 1 施工管理技術検定における「指定学科」

2級施工管理技術検定試験の「実地」を受検するためには、実務経験が必要。通常高校卒業後、4年6か月以上の実務経験が必要だが、「指定学科」に認められた学科を卒業していると、卒業後3年以上の実務経験があれば受検が可能になる。短期間での資格取得が見込めるため、就職時に優位に働くことがある。
「指定学科」は国土交通省が省令で、以下のように定めている。

①大学、短期大学、5年制高等専門学校、専門学校、高等学校の学科やそれに準じると認められる学科

②大学、短期大学、5年制高等専門学校、専門学校、高等学校の指定学科に準ずると認められた学校別の学科

⇒ 詳しくは指定試験機関のホームページで

POINT 2 工業高校における履修条件

高等学校の教育課程は学習指導要領に基づき各学校において編成されるが、内容は「共通教科・科目(国語など)」、「専門教育に関する教科・科目(工業系では工業技術基礎など)」、「学校設定教科・科目」で構成されている。専門教育を主とする学科(建築科、土木科など)においては、「専門教育に関する教科・科目」が25単位を下回らないこととされている。
※ 1単位時間を50分とし、35単位時間が「1単位」

工業高等学校(建築科)の工業学科にかかる教育課程

2019年度 伊賀白鳳高等学校 入学生 教育課程表

 まとめ 

生徒数が減少傾向にあるなか、学科・コースを新設するということは、他校との調整が不可欠。学科・コースを“つくる”からには、定員割れを起こすことがないよう“育てる”ことが求められる。

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