特集

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2018年10月号 No.502

担い手確保の取組強化、その施策とは?~建設産業政策2017+10の施策を実現し、担い手確保の取組を強化するために~

働き方改革の第一歩に、「工期」の見直し

佐々木 現時点では直ちに、人手不足で困っているわけではなくとも、経営者の中には、いずれ高齢技能者がいなくなることを見越し、若い人を確保することに対して熱心に取り組まれている企業もあります。求人票を出しても週休1日だけだと、それだけで若者が相手にしてくれないといったことをよく耳にします。そういった意味でも、働き方改革は非常に重要なことだと思うのですが、どのように取り組んでいこうとお考えですか?

野村 いくつか切り口はありますが、まずは「請負」についての検討が必要です。決められた期限までに決められた品質のものを引き渡すというのが、請負の本質です。基本的に納期、工期を守るというのは契約上の義務になっていることですが、長時間労働が発生しやすいというのは、こういった建設業の特性の中に内在的要因があると思います。
逆に言えば、適切な工期を設定することができれば、長時間労働を減らしていく余地は十分にあると考えています。昨年、「適正な工期設定等のためのガイドライン」を策定し、建設工事に従事するすべての関係者が遵守すべき共通ルールとして、地方公共団体や民間発注者に対して周知を図ってきました。受発注者の双方が、まずは適正な工期設定について共通の理解、共通の想いというものを持たなければ、この適正な工期設定の課題も成し遂げられないことだろうと思います。ただ、工期という概念が制度上あまり明確に位置づけられていないという現状もあります。そこで今、「工期という要素」を建設業法に位置づけることを検討しています。就労環境を守りながらきちんとしたものづくりをするために、工期設定が非常に重要なのだということを、繰り返し周知を図っていくことが大事かなと思います。
また一方で、建設産業のベースには受注競争があります。これまで工期ダンピングを行うことで、受注を獲得するということが行われてきたことから、工期を無理するということがなかなかなくならないという状況がありますが、これも改善を図っていく必要があります。建設工事の受注者による工期ダンピングを禁止するため、現在建設企業が請負契約を締結する際には、工事の準備期間や工事の種類、工事着手の時期、工事検査の時期などの工程の細目を明らかにして建設工事の工期を見積もる規定を検討しています。
さらに、受注者の適切な見積もりによって工期を明確にした上で、注文者はその注文した建設工事を施工するために通常必要と認められる期間に照らして著しく短い工期による請負契約を締結してはならない旨の規定を検討しています。工期が建設業を規律する大きなファクターであるということを、明確化していかなければいけないと思っています。適正な工期設定が定着するようにしていきたいですね。

参考  長時間労働の是正(現状・課題)
年間総実労働時間の推移
● 建設業は全産業平均と比較して年間300時間以上長時間労働の状況。
● 改正労働基準法の施行から5年後に罰則付きの時間外労働規制が適用される状況を踏まえ、長時間労働の是正に向け取組を進めている。

建設工事の月別推移
● 長時間労働の是正を進めるためには、繁忙期と閑散期の工事量の差を小さくする施工時期等の平準化の取組が不可欠であるが、市区町村では平準化の取組が遅れている。

技能者の誇りを再び!建設キャリアアップシステム

佐々木 建設業の将来のために実現していただきたいと思います。特に民間の建築工事での取り組みが重要だと思います。工期が延びることは民間発注者の負担につながるので、なかなか理解していただけないという話はよく聞きます。日本の経済全体が生産性を高めるために、就労関係をよくしていかないといけないという認識が、まだまだ薄いなという気がしています。ぜひここは、局長に先頭に立っていただいて、国民の意識を変えていくことに頑張っていただきたいと思います。
併せて、少子化となった今、技能者が本来の自分たちのパワーを発揮できるチャンスではないかと思っています。技能者をどうやって育てていくか、どのように活躍してもらえる環境を作っていくかという事を考える大事な時期に来ているのではないでしょうか。

野村 それはご指摘通りだと思います。それは建設業だけではなく、世の中全体がそういったことを振り返る時期に来ているのではないかと思います。建設業だけのことを考えても、建設工事の高度化、専門化が進んでおり、適切な施工の確保や品質の向上のためには、高度な技能を持った技能者の重要性が増しています。経験や資格を有する技能者が配置されているかが、注文者の関心事項にもなっています。技能労働者や一人親方も含め、技能者一人ひとりの技能、経験がふさわしい給与を実現できる必要があることから、能力評価基準の検討と併せ、技能者の法令上の位置づけを明確にし、技能者に関する制度の再構築を図ることにしたところです。技能者の存在というのは建設業にとってまさに必要不可欠な生産要素であり、技能者があって初めて建設業というものが成り立つのですから、しっかりと検討していきたいですね。

佐々木 古来、技能者集団というのは、ものすごい力があったし、個々の技能者には名誉もありました。もちろん収入もよくて職人であることに誇りをお持ちだった。残念ながら今では、職人であることに誇りが持てなくなってしまっていて、それを見た若者たちが夢を持てなくなってしまっています。これを打破すべく、若い人たちが誇りを抱けるような具体的な取り組みはいかがですか?

野村 建設キャリアアップシステムによって、技能者一人ひとりの技能や経験を初めて客観的に把握することが可能になります。昨年、「建設技能者の能力評価のあり方に関する検討会」を設置し、関係者で精力的な検討を行いました。中間のとりまとめでは、たとえば能力評価を行ってその結果をどう使っていくかの活用の方策として、評価をして客観的に決まったレベルによってキャリアアップカードを色分けします。経験を積んでいけば、ゴールドカードになる。若い方はこれを目指して研鑽を積み、経験を重ねていくことをモチベーションにしていただければと思います。同時に、キャリアパスも客観的に示すこともでき、かつ技能の対外的なPRを可能にすると考えています。

参考  経験や技能に応じた処遇の実現

担い手確保の一助となる、外国人労働者

佐々木 私どもとしても建設キャリアアップシステムは、建設業の歴史を変えるぐらいの意気込みで取り組まなければならないと、全力で進めていきたいと思っています。
労働力という側面でいうと、外国人労働者の受入れ拡大という課題もありますが今後の方向性をどのようにお考えですか?

野村 これはすごいスピードで進んでいまして、平成31年4月の施行を目指して新たな外国人材の受け入れ制度の検討が進められています。生産性向上や国内人材確保のための取り組みを行ってもなお、深刻な人手不足が見られる分野で、かつ一定の専門性・技能を有する即戦力を受け入れること、日本人と同等以上の報酬を支払うこと、家族帯同不可ではありますが、最長5年の在留資格を用意することなどが政府全体の方針のポイントになります。さらにワンランク上の在留資格としては家族帯同可能などが検討されていますが、アジア太平洋地域で日本の建設業の賃金水準は決して優位ではありません。建設技能者全体の対処改善を進めながら、外国人に対しても「同一労働同一賃金」で臨まなければ、我が国の建設業の明日はありません。

佐々木 最後に、建設業の発展に向けて本財団に期待することなどございましたら、ご意見をおきかせください。

野村 建設キャリアアップシステムについては、まずはシステムの運営主体として、平成31年1月から限定運用、平成31年4月から本運用を開始するとのスケジュールを堅持すべく、システム開発及び運営に万全を期していただきたいと思います。また、まだまだシステムのことが知られていない、という声もお聞きしています。
システムを広く周知・普及させ、概ね5年で全ての技能者・事業者に利用していただけるよう、なお一層の周知・普及の取り組みをお願いしたいと思っています。
国土交通省としても、建設業振興基金としっかりと連携して、取り組んでまいりたいと思っています。引き続き、よろしくお願いします。

佐々木 私共も建設業を発展させていくためには不可欠なシステムと考えています。周知も含めて一刻も早く実現していけるよう精一杯頑張っていきたいと思いますので、どうかよろしくお願いします。

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