特集

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2018年10月号 No.502

担い手確保の取組強化、その施策とは?~建設産業政策2017+10の施策を実現し、担い手確保の取組を強化するために~

新たに公表された基本問題小検討委員会中間とりまとめ(本年6月)を受け、長時間労働の是正、処遇改善、生産性の向上、地域建設業の持続性確保などについて、国土交通省野村土地・建設産業局長にお話を伺いました。

土地・建設産業局長 野村 正史氏(以下、野村)
建設業振興基金理事長 佐々木 基(以下、佐々木)

現在の建設産業に、将来の光明をどう見るのか?

佐々木 まずは土地・建設産業局長のご就任、おめでとうございます。久しぶりに建設産業行政に戻られて、改めて現在の建設業をどのように感じ、評価されますか?

野村 新規採用職員で入省して以来、実に30年ぶりになります。建設省に入った当初は、入省動機が学生時代に神戸市の都市景観条例という街づくり施策を勉強していたからということもあり、産業を所管する部署があることに少し違和感も抱きましたが、ちょうど法律改正を行うタイミングで在籍し、3年間で得難い経験をさせていただきました。その意味で、建設産業行政はまさに、古巣という想いがあります。今の日本の建設産業をマクロで捉えると、“ものづくりの国ニッポン”を体現する、高いモラルに支えられた世界最高水準の技術職を有する産業という評価をしています。ただ一方で、建設業の宿命も感じています。

佐々木    建設業の宿命といいますと、どういうことですか。

野村 単品受注や現地屋外生産など、建設業には業態としてどうしても逃げられない特性があります。厳しい労働環境につながるその特性が故に、たとえば若い人たちが人生を託す職場として選んでいただきにくい。若年層に対するアピールに苦労しているというのも、未だ事実かなと考えています。ただ、私は建設業の将来にあまり悲観はしていません。グローバルな視点でいえば、世界に冠たる技術力があります。これをさらに高めていき、地球規模での経済発展、あるいは民生の発展などに寄与していくことが期待されます。

佐々木 同感です。私は、人類の活動は“ものづくりの歴史”であると思っています。どんな世の中になろうとも、絶対にものづくりは絶えることはない。だからこそ、悲観的になるべきではないと考えています。では、今後建設業が担う役割や将来の姿については、どのようにお考えですか?

野村 視点を国内に移すと、建設業というのは「地域の作り手」になりうる存在なのだと思います。よく、「地域の守り手」というキャッチフレーズで表現されます。災害対応などはその代表的な仕事でしょう。それに加え、建設業とは地域を知り尽くしている立場です。たとえば地域が持つ資源を活用して、建設業ならではの事業手法を導入し、地域経済を持続可能なものとするための取り組みを行うことなどは、建設業の役割なのではないかと思います。地域のどこに何があるのか、どこにリスクがあるのか、どこにお宝があるのかを知っています。「守り手」を超えて「作り手」として、地域資源をどのように活用すれば経済的な価値が生まれるかを提案できる立場にあるのではないかと考えています。建設業が地域に、社会に貢献し、自らの持続可能性を高めていくためにも、現在直面するさまざまな課題を克服していかなければならないと感じています。

今後の発展のカギを握る「人材確保」の問題

佐々木 確かに建設業は不利な条件が多い産業だと思います。昨年の「建設産業政策2017+10」、今年の「基本問題小委員会中間とりまとめ」などが公表された中で、建設産業が10年後においても「生産性」を高めながら「現場力」を維持できるような建設業関連制度の基本的な枠組みが検討されてきています。改めて、その背景にある建設業が直面する現状、課題などお話しください。

野村 建設業は国民生活、あるいは経済活動の礎を支える国家の基幹的な産業です。特に昨今は災害が多発し、あるいは老朽化が進んだインフラの対策が急がれ、国民の安心安全の確保が問われていますが、建設業はそれらを担う産業として期待が寄せられています。やりがいと希望にあふれる職業であり続けるためにはどうするべきか。そのためには、今直面している労働人口の減少・高齢化、長時間労働、低賃金などの多くの課題に対し、個々の企業や行政はもちろん、建設産業や建築物・建設物にかかわるさまざまなステークホルダーをすべて巻き込んで、取り組みを講じていく必要があると思っています。
その中で最大の課題は、やはり建設産業の将来を託すべき担い手の確保です。

佐々木 人口が減少して、若年層が少なくなっていますから、労働力の取り合いみたいな話も出ています。不利な条件下ではありますが、これからの建設業を担う人材に対する施策は確かに大切ですね。

野村 人材そのものを確保育成するという課題はもちろんですが、特に入職された方が希望を持って仕事に留まり、技能や技術を磨いてスキルアップを目指していけるような就労環境を作っていくことも課題として挙げられます。中でも長時間労働の是正、休日の確保、そしてなによりも労働に見合う収入の確保ということが必要だと思っています。
建設業に従事する技能者の数は約331万人となっており、このうち60歳以上の高齢者は約81.1万人と全体の約4分の1を占めています。例えば10年後にはこれらの高齢者の多くの退職が見込まれる中、それを補うべき29歳以下の若手入職者は現状、約36.6万人であり、60歳以上の年齢階層の半分にも満たない状況にあります。

参考 建設業就業者の高齢化の進行
● 建設業就業者は、55歳以上が約34%、29歳以下が約11%と高齢化が進行し、次世代への技術承継が大きな課題。
※ 実数ベースでは、建設業就業者数のうち平成27年と比較して55歳以上が約2万人減少、29歳以下は約2万人増加。

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