特集
建設業バックオフィスにおけるDX
❸建設業許可や経営事項審査に係る申請等の手続電子化
従前、建設業許可や経営事項審査の申請は、多くの書類の提出が求められているうえ、その大部分について書面による提出のみが認められている状態でしたが、令和5年1月から、電子申請システムを活用した電子申請の受付がスタートしています。
電子申請システムにより、申請者は申請書類の作成・提出から通知書の受領まで一貫してオンライン上で済ませることが可能になりました。また、電子申請システムが他省庁やその他の民間機関等のシステムとバックヤードで連携を行うことで、従来提出が求められていた一部の書類の提出が不要になるなど、利用者にとってメリットの大きいものとなっています。建設業のバックオフィスにおける業務効率化に直結しますので、できるだけ早い段階で利用を検討するとよいでしょう。
❹手形・小切手機能の全面的な電子化
政府は令和8年度末までに、手形・小切手機能の全面的な電子化を決定しており、紙の手形・小切手を決済手段として利用している企業は、早急に電子化への対応を進める必要があります。
具体的には、手形については電子記録債権(でんさい)の利用へ、小切手についてはインターネットバンキングの利用への移行を行います。
従来の紙の手形・小切手は、「現物管理、押印、印紙、手交・郵送、金融機関受渡し」といった多くの手間やコストがかかっているだけでなく、紛失・盗難といった危険性がありました。電子化することでバックオフィス業務の効率化やコスト削減にも効果があることは言うまでもありません。
でんさいを全国的規模で記録・流通させるインフラとしては、(一社)全国銀行協会が設立した全銀電子債権ネットワーク(でんさいネット)があり、でんさいネットのホームページには利用方法などについてのセミナー動画もありますので、導入に際しては参考にするとよいでしょう。
おわりに
「建設業におけるDX」というと、ロボ・AIの活用や超人化、i-Constructionの導入といったいわゆる「現場のDX」に着目されがちですが、現場を支えるバックオフィス部門のDXについても、生産性向上や働き方改革のためには決しておざなりにはできません。どのような制度や環境が整備されているかを知ることは、DXを始めるための最初の一歩です。
(一財)建設産業経理研究機構では、本稿の内容をさらに詳細に解説し、またバックオフィス部門のDXに成功している建設企業の事例等を掲載した書籍「生産性向上のための建設業バックオフィスDX(出版:清文社)」を上梓しております。本稿と併せてDX化推進の一助となれば幸いです。
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