特集

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2024年6月号 No.559

建設業法及び公共工事入札契約適正化法の改正について

働き方改革と生産性向上について

ⅰ.働き方改革について

建設業が魅力ある産業として持続的に発展していくためには、賃金の引上げといった処遇改善だけでなく、働き方の観点からも改革を進めていく必要がありますが、現状、令和4年度における建設業の総労働時間は全産業と比較して年間70時間程度長く、週休2日も十分に取れていない状況となっています。

長時間労働の大きな要因は適正な工期が確保されないことであり、著しく短い工期は、建設業者における技術的に無理な施工方法・工程の採用を強いるものであるため、結果として手抜き工事、施工不良、工事現場における不当な長時間労働や労働災害などの問題を生じさせ、工事の適正な施工が確保されないこととなります。

そこで改正法では、長時間労働を是正し、週休2日も確保していくため、受注者の発意による著しく短い工期による請負契約の締結を禁止することとしています※4・5

また、Ⅱに示した請負代金の変更協議と同様に、資材の入手困難などが生じるおそれがあると認めるときは、受注者から注文者に対して関連する情報を請負契約の締結までに通知しなければならないこととしました。この場合、実際に資材の入手困難などが生じたときは、受注者から注文者に対して工期の変更に関する協議を申し出ることができ、注文者は当該協議に誠実に応じるよう努めなければならないこととなります※6

  • ※4…令和元年の建設業法改正により、既に注文者に対しては、著しく短い工期による請負契約の締結が禁じられています。
  • ※5…特殊な施工方法などを用いることにより工期を短縮することができるなど、正当な理由がある場合には、本規制の対象となりません。
  • ※6…入札契約適正化法の改正により、公共発注者は誠実に契約変更協議に応じる義務が生じます。

ⅱ.生産性向上について

建設業者は、請負代金が4000万円以上(建築一式工事については8000万円以上)の建設工事を請け負うときは、その工事現場において、建設工事の施工の技術上の管理をつかさどる主任技術者又は監理技術者(「監理技術者等」)を置かなければならないこととされています。

このうち、公共性のある施設等に関する重要な建設工事については、特に適正な施工が求められることから監理技術者等を専任で置くこととされていますが、現場技術者の高齢化・退職や入職者の減少が進んでいることにより、必要な監理技術者等が確保できない建設業者にとっては、制度が工事の受注の制約になる場合があります。

この点、近年、工事現場におけるデジタル技術の活用(タブレット端末を通じた工事関係者間における設計図面や現場写真などの共有や、現場作業員が装備するウェアラブルカメラなどを通じた監理技術者等との間における工事現場の映像・音声の遠隔・リアルタイム共有など)により施工管理業務の効率化が進められているところ、令和4年には、現場技術者などの常駐・専任を求める規制については「デジタル原則に照らした規制の一括見直しプラン」(令和4年6月3日デジタル臨時行政調査会決定)において「デジタル技術の活用を前提とした見直しを進める」こととされました。

そこで改正法では、こうしたICTの活用を条件に、監理技術者等の専任規制を合理化することとしています。具体的には、上に挙げたようなデジタル技術を活用し、かつ、一定の規模・距離以下に工事現場がある等の要件を満たすことで、工事現場外にいる監理技術者等が平時はもとより事故・災害の発生時においても工事現場の状況の確認・必要な技術的指示等を行うことができる場合には、監理技術者等が複数の工事現場を兼任できることとしました。

【おわりに】

今回の改正は、建設業における担い手確保や生産性向上等の取組強化が急務になるとともに、建設資材の急激な価格変動等、建設業を取り巻く昨今の環境変化への対応が不可避となっていることを踏まえ、建設業が「地域の守り手」等の役割を果たしていけるよう緊急に行うものであり、今後、施行に向けて詳細の制度設計を行い、業界に周知してまいります。あわせて、中間とりまとめのうち法律の改正が必要な事項以外の部分についても検討・具体化するとともに、「建設Gメン」の体制を強化することで実効性を確保してまいります。

これらの制度改正による措置を通じ、建設業における処遇改善、働き方改革及び生産性向上に総合的に取り組むことで、地域の守り手である建設業が持続可能、かつ、新4K「給与が良く、休暇が取れ、希望が持てる」そして「かっこいい」魅力的な産業となるよう、業界の皆様の声を聴きながら、様々な取組を進めてまいります。

 

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