特集

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2023年7・8月号 No.550

建設労働者育成支援事業

コテやローラーを巧みに操り、床・壁・柱などを美しく仕上げていく左官の仕事。福満 明実さんは合同体験フェアに参加したことをきっかけにその魅力にふれ、左官の道へと進んだ令和4年度の訓練修了生です。訓練で得た経験を活かしながら、建設現場で日々奮闘する福満さん。そしてその成長・活躍に期待を寄せる、横井業務店代表取締役の横井さんにお話を伺いました。

様々な仕事を経験した後に見つけた建設業

訓練に参加する以前は、スポーツセンターのインストラクターや店舗スタッフなど、デスクワークも含めて様々なアルバイトをしてきました。あるときマンションのタイル貼りを手伝ったことがあり、「こんなふうに体を動かせる仕事がしたい」と感じたのが建設業に興味を抱いたきっかけです。ハローワークで相談したところ、玉掛けの資格があれば紹介範囲が広がると伺ったのですが、その時点ではどういった職種に進むかは正直漠然としていて…。そんな中で建設技能を体験できる合同体験フェアや資格取得につながるカリキュラムが組まれていた建設業基礎コース(重機オペレーター)を見つけ、「多くの職種を知る中で、やりたい仕事が見つかるかもしれない」という思いから応募し、訓練を受講しました。

合同体験フェアで出会った左官の道

訓練の中で印象に残っているのは、バックホウを操作する講習です。はじめての操作体験で、運転席に座ったときの迫力にも驚きましたね。また訓練生の中には内装の仕事や造園の仕事、電気工事士の方など、建設業に携わっていた方々もいて、それぞれの現場がどういった仕事なのか、どのような苦労や喜びがあるのかなど、様々な経験談を伺うことができました。資格取得につながる講習だけでなく、周りの皆さんとつながりを持てたことが、訓練を通して得られた大きな収穫です。

そして今の自分につながっているのが、合同体験フェアで左官の仕事に触れたことです。漆喰をパネルに塗る作業を体験したのですが、パターン付けや模様付けなども左官の仕事だと教えていただき、その幅広さと面白さを知りました。訓練の最終日には著名な左官職人の方の映像も見せていただき、「こんなに多彩で表現豊かな壁を塗る方がいるのか」と衝撃を受け、左官への憧れがますます膨らみました。

日々の学びと経験を積み重ねて

横井業務店に入社後は、はじめての現場に入り、職長をはじめ周りの皆さんからいろいろなことを学ばせてもらっています。また訓練を通して玉掛けや高所作業に必要な資格を取得できたので、それを活かした作業なども行っています。

今の目標は、まずは左官技能士2級、そしてゆくゆくは左官技能士1級の資格を取得すること。この4月から週に1度、愛知県左官高等職業訓練校にも通い、同じ目標を持った仲間と励ましあいながら目標に向かって進んでいます。よりスケールの大きな現場を任されるよう力を身に付け、重要文化財を扱う現場などにも携わっていければと思っています。

訓練への参加を迷われている方には、「まずは恐れず飛び込んでみてほしい」と思います。特に建設業に関わりのない方にとっては、建設業というと以前の「3K」のイメージがどうしても強いと思うのですが、今の現場ではそうしたことはなく、業界全体も現場をより良いものにしていこうという雰囲気が高まっています。ぜひ訓練に参加して、建設業の魅力を感じてほしいです。

現場経験と学びによるステップアップ

横井業務店は私の祖父の代からスタートし、創業して来年でちょうど100年になります。大手建設会社などをお取引先として左官工事に携わっており、福満さんが今入っているのもそうした現場の一つです。現場では資材の運搬や材料の配合、簡単な補修などの基本的な作業から入り、左官の仕事を学んでもらうようにしています。あわせて左官の訓練校にも通うことで、左官に必要な知識や伝統的な技術といったものを習得し、将来的には左官技能士1級や登録左官技能者資格の取得、建設キャリアアップシステムのゴールド(レベル4)を目指すなど、ステップアップを図ってもらえたらと思っています。

人材の定着という面でも期待

訓練修了生を採用するメリットを挙げるならば、まず何よりも「興味を持って入社してくれる」ということに尽きます。職業訓練や合同体験フェアを通じて様々な職種があることを知ったうえで、数ある選択肢の中から当社に興味を持ち入社してくれる、そうした強い思いを持って入社してくれるということが一番ではないでしょうか。

それと同時に重要なのが、それだけ多種多様な職人・業者がいる職場であること、何十人・何百人もの人々が動く現場であるということを理解したうえで入職を希望される方であるということです。建設業というのは労働集約型産業で、多くの職種が集まって一つのものを築いていく仕事。周りの職人や関係者とのコミュニケーションは必須と言えます。そうしたことを踏まえたうえで建設業に入ってくれるのはありがたいことですし、一番の強みとも言えますね。入職したけれど「こんなはずじゃなかった…」とイメージとのギャップに苦しんでしまうのは、本人としても周りとしても望ましくありません。今やほとんどの企業が人材の確保に悩んでいますが、「人材の定着」という観点で考えても、訓練修了生の方はそうした期待に応えてくれるものと思います。

活躍を広げる訓練修了生

訓練修了生として当社に入社し、職長として活躍している方はすでに何人もおられます。その中でも建設キャリアアップシステムのゴールド(レベル4)の方が2名おられ、そのうち1名は女性の方です。左官でゴールド(レベル4)というのは、おそらく全国でも数える程度ではないでしょうか。そうしたことも現場で着実に成果を出している証だと思います。

福満さんは職業訓練を通して、玉掛けや高所作業の資格を取得されていました。採用の際にはそうした能力面ももちろん重視したのですが、自分のことをストレートに表現できる人間性が何よりも魅力でした。「この人ならきっと頑張ってくれる」と感じさせてくれたことが、いっしょに働こうと決めた理由です。ぜひこれからも成長し、活躍を続けてほしいと思います。

株式会社横井業務店
代表取締役
横井 良彦 さん

株式会社横井業務店
福満 明実 さん
厚生労働省 建設労働者
育成支援事業
令和4年度修了生

株式会社横井業務店〈愛知県〉

愛知県名古屋市にて左官工事などを手掛ける、1924年(大正13年)創業の横井業務店。高層ビルや工場、公共施設などの大規模な開発から、歴史ある文化財の修復などまで様々な工事に携わり、「左官の技」を発揮しています。

訓練コースや応募方法の詳細はホームページまたは全国のハローワークで配布している広報誌「建設業ウェルカム」をご覧ください。

https://kensetsu-welcome.com

 

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