建設経済の動向

建設経済の動向
2024年4月号 No.557

残業規制への対応困難な建設会社は4割超

改正労働基準法で規定された時間外労働の上限規制。建設業でもいよいよ2024年4月に適用が始まる。建設産業界で「2024年問題」と呼ばれるこの課題に、大手建設会社を中心とした主要な建設会社の施工現場は、どの程度対応できているのか――。デジタル技術メディアの「日経クロステック」が独自調査した結果を伝える。

改正労働基準法で定められた時間外労働の上限規制がいよいよ建設業にも適用される。短く設定された工期など発注者からの無理難題に、これまで長時間労働で応えてきた業界が、法令を順守して“ホワイト”な産業に転換することが強く求められている。

日経クロステックでは、主要な建設会社の2024年問題への対応状況を確認するための緊急調査を24年2月に実施。建築専門誌「日経アーキテクチュア」の経営動向調査で22年度の建築売上高(単体)が500億円以上だった42社を対象にアンケートを送付。31社から回答を得た。

まずは、4月に始まる残業規制を建築現場でクリアできそうか否かを尋ねてみた。その結果、「めどが立っていない」と回答した建設会社は42%に達した。目前に迫った規制への対応が終わっていない会社がこれだけ多い状況は大きな問題だ。

さらに、アンケートでは2024年問題に備えて実施・検討している対策を選択肢から複数回答で選んでもらった。最も回答が多かったのは「適正工期での受注」の31社。回答を寄せた全ての企業が行っていた。これに「現場支援部署・チームの立ち上げ」「ITの活用による施工管理業務の効率化」がそれぞれ30社で続いた。

一方「人材派遣の活用(現場事務)」「ロボットや新工法などの導入による施工の効率化」といった対策を採用する会社は、回答企業の半分程度にとどまった。

適正工期での受注という観点では、発注者が適正工期を受け入れる環境も整い始めているようだ。アンケートで適正工期に対する発注者の反応を尋ねたところ、「ほぼ受け入れてもらえている」と「ある程度、受け入れてもらえている」を合わせた回答は80%に及んだ。

 

回答企業の8割弱が負の影響
「売上や受注が減る」

調査では、2024年問題が事業に与える影響についても確認している。規制が事業に与える影響として「マイナスの影響がある」と回答した建設会社は20%となった。「どちらかといえばマイナスの影響がある」と回答した57%と合わせると、8割弱の建設会社が事業にマイナスの影響があるとみている。

調査では、具体的な懸念材料についても選択肢に対する複数回答で尋ねた。回答が得られた23社の反応を見ると、「売上や受注の減少」が15社で最も多く、「発注者の理解が得られない」が14社で続いた。さらに、「労務管理の煩雑化」「協力会社の確保が難しくなる」がそれぞれ12社となった。

品質や安全の確保への懸念を示す回答は4社にとどまっており、事業上の厳しさがあるなかでも、品質や安全という部分への影響を抑えようとする姿勢はにじみ出ていた。

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