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連載

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2017年9月号 No.491

かわいい土木 年月かけて自然に溶け込むロックフィルダム

重厚長大なインフラの代表格とも言えるダム。急流の水圧にじっと耐え、水がめをつくり出す姿は、健気でドボかわいい。今回は、完成から40周年を迎えたロックフィルダム、岐阜県の岩屋ダムを訪ねた。

Photo・Text : フリーライター 三上 美絵
大成建設広報部勤務を経てフリーライターとなる。「日経コンストラクション」(日経BP社)や土木学会誌などの建設系雑誌を中心に記事を執筆。広報研修講師、社内報コンペティション審査員。著書『土木の広報~『対話』でよみがえる誇りとやりがい~』(日経BP 社刊、共著)


今、ダムがすごいことになっている。毎週のように全国各地のダムを訪れ、写真を撮り、管理所でダムカードをもらい、地元のレストランでダムカレーを食べる――。そんなダムマニアたちが増え、ブログやSNSを通して続々とダムの魅力を発信しているのだ。

ダムマニアの登場で盛り上がるダム人気

ダムカードは表面にダムの全景写真、裏面に概要やこだわり技術などの情報が載った掌サイズのカード。現地の管理所へ行った人だけがもらえるところがポイントだ。国土交通省の直轄ダムから始まり、現在は水資源機構や自治体の管理するダムにも広がっている。
堤体に似せた形にご飯を盛り、ルーをダム湖に見立てたダムカレーも、多くのダムの周辺で開発され、人気を呼んでいる。いまやダムは観光スポットであり、橋梁と並ぶインフラツーリズムの目玉になっているのだ。
重力式コンクリートダム、アーチダム、アースダム、ロックフィルダムなど、ダムにはいくつかの形式がある。重力式コンクリートダムのマッシブで雄々しい存在感。黒部ダムに代表されるアーチダムの優美ながら、緊張感のある雰囲気。
なかでも、今回注目したいのが、ロックフィルダムの穏やかでナチュラルなドボかわいらしさだ。岩石や土砂を積み上げて建設するロックフィルダムは、周辺の山から採掘した岩石を使うことが多く、風景によく馴染む。

天端は道路になっており、堤体を眼下に愛でることができる。ロック材の間に生えた雑草が、ダムを周辺の景観に溶け込ませている。

夜中に下流のダムと水をやり取り

飛騨川上流の馬瀬川にある岩屋ダムは、1976年に完成したロックフィルダム。発電、治水、利水の用途を併せ持つ多目的ダムだ。
1960年の当初計画は、高度経済成長期の電力需要増大に対応するために、中部電力がダムと発電所を建設するというものだった。そこに、農林水産省、経済産業省、国土交通省が相乗りする形で事業に参画。背景には、中京工業地帯の発展や新たな農地かんがいに伴う水需要のひっ迫、多大な被害をもたらした伊勢湾台風後の治水強化の必要性といった事情があった。
さらに、水資源機構が名古屋市などへの上水道供給を目的とする水源開発を進めることになった。こうして、岩屋ダムの計画は大幅に拡大され、水資源機構と中部電力の共同事業として着工した。堤高は127.5mで、飛騨川にある21基のダムのうち第2位。総貯水量は1億7,350万m3で、同第1位の規模を誇る。
発電方式は、揚水式だ。電力需要の多い昼間はダム右岸側の地下にある馬瀬川第1発電所の貯水池から下流にある馬瀬川第2発電所に水を落として発電し、溜めておいたこの水を夜間に余剰電力で汲み上げる。つまり、ダムの水を使って位置エネルギーを蓄え、蓄電池の役割を果たす仕組みだ。ダム湖の莫大な量の水が、深夜に人知れずやり取りされていることを想像すると、なんだかわくわくする。

40周年を迎えた“東海の水がめ”

下呂温泉から車で約30分、取材当日はあいにくの雨模様。だが、ダムサイトに到着すると間もなく雨は上がり、一瞬、陽が射した。山あいから立ち上る霧を背景とし、両岸の緑が刻む深い谷の間に、岩を積み上げた堤体が見える。

岩屋ダムの全景。左岸側に設けられた洪水吐きは、放水を跳ね上げて拡散するスキージャンプ式減勢工になっている。現地へは、JR高山本線の下呂駅か飛騨金山駅から車で30分程度。

岩屋ダムは、管理開始から今年4月で40周年を迎えた。これまで愛知県、岐阜県、三重県の東海3県の水がめとして水を供給すると同時に、下流の地域を洪水から守ってきた。水資源機構岩屋ダム管理所によれば、供給した水の総量は21億3,000万トンに上る。これは「浜名湖6杯分」にあたる量だという。また、生み出された電気は、日本の工業の発展を支えてきた。
8月5日には、点検放流を初めて一般公開。スキーのジャンプ台そっくりの洪水吐きを勢いよく流れ下る白蛇の鱗のような水の姿に、ダムマニアをはじめ訪れた約250人が歓声を上げた。天端の道路から下流側を見下ろすと、ロック材の間からところどころに草が顔を覗かせている。私には、ダムという人工物が懸命に、自然に溶け込もうとしているように思えた。

管理所でもらったダムカード。この夏休みにも、親子連れなど多くのダムファンが、カードをもらいに来たという。裏面には概要や「こだわり技術」の情報が記されている(資料:水資源機構)。

ドローンで撮影した点検放流の様子。ダム湖の水がスキージャンパーのように勢いよく流れ下る(写真:水資源機構)。

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