日本経済の動向

日本経済の動向
2017年7・8月号 No.490

インバウンド需要拡大の消費財輸出誘発効果

近年、訪日外国人の増加に伴うインバウンド需要拡大とともに、消費財輸出が増加している。この背景には、訪日外国人が日本で購入した商品に満足を覚え、帰国後、自身や知人のために同じ商品を購入していることがあると考えられる。今回は、このインバウンド需要拡大の消費財輸出誘発効果について、品目別の動向も含め解説する。

化粧品の輸出が増大

2016年の訪日外客による買い物代は、爆買いの一服に伴う一人当たり支出の減少により、急減速した。一方、消費財輸出は増加傾向を維持した(図1)。消費財輸出は、訪日外客による買い物代と連動するように2013年以降、増加傾向を続けている。これを受けて近頃、訪日外客の増加による日本製品の認知度向上などを利用して、消費財輸出を誘発する取り組みを強化すべきという指摘が多くなされている。
なかでも近年は、化粧品による押し上げ効果が最も大きい。化粧品は、訪日外客の購入商品のなかで満足度、再購買意欲ともに高く、中国人向けを中心にインバウンド需要の増加が輸出を誘発している。2013~2016年について、消費財輸出のプラス寄与度上位10品目をみると、化粧品輸出が最も押し上げに寄与していることが分かる(図2)。観光庁が行うアンケートなどをみても、訪日外国人の増加による認知度の向上が、越境EC(electronic commerce=電子商取引)などを通じて帰国後の化粧品の再購入につながり、これが輸出を押し上げた可能性が高い。ただし、化粧品輸出の大部分は中国向けであり、韓国企業との競争激化や越境ECの制度変更などから、先行きには懸念がある。

図1 訪日外客による買い物代と消費財輸出推移

 

図2 2013~2016年の消費財輸出(輸送機械を除く)のうち上位10品目の寄与度

新たなけん引役の創出が重要

今後、インバウンド需要の拡大による輸出の誘発効果を取り込むには、現状のけん引役である化粧品輸出の持続的な増加を目指すと同時に、化粧品以外のけん引役を創出し、輸出財を多様化する必要がある。
新たなけん引役の候補としては、酒類や菓子類があげられよう。菓子類、酒類、化粧品の輸出額の推移は図3の通りであり、中でも菓子類は訪日外客の満足度や再購入意欲が高く、消費財輸出を押し上げることが期待される。
今後、ブランド力向上を通じて、インバウンド対応(日本現地での購入促進)とアウトバウンド戦略(帰国後の継続的な再購入促進と再度の訪日の動機付け)の両輪を組み合わせる戦略が重要になる。

図3 菓子類、酒類、化粧品の輸出額推移

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