本シリーズは中小建設産業の働き方改革を成功に導くため、働いていて楽しい職場を作り、生産性を高める「就業規則の整備」の推進を目的として、大都市の郊外にある老舗建設会社（従業員50名）を舞台とした従業員の会話形式で就業規則に関する疑問やポイントを説明します。
※就業規則は、労働基準法では常時雇用する労働者（正社員・契約社員・パート）が10人以上の場合、就業規則を作成して労働基準監督署への届出が必要とされています。

第5話では、第4話でとりあげた老舗建設の「労使協定」の5項目のうちの④労働時間について、通常期、繁忙期ごとに増減させる場合のポイントを説明します。（詳しくは厚生労働省HPまたは各都道府県労働局・労働基準監督署にお問い合わせください。）

プレゼン資料の打合せ

袋小路くん

プレゼンに向けて、所定労働時間を通常期と繁忙期に分けて考えてみました。

袋小路くん

この制度の繁忙期は8時間３０分以上働かなければ割増賃金が付かないので、労働者の不利にならないかな。

勤怠さん

忙しい時もあるけど、早く帰れる時期もあるわ。それに、当社の規定では年間の総所定労働時間を2,085時間以内で管理するから大丈夫よ。

袋小路くん

割増時間の管理は、経理・総務課と上司がしっかりチェックすればいいということですね。

勤怠さん

育児・介護を行う人などに必要な時間確保ができるように配慮が求められているのも重要ね。

ポイント

1年単位の変形労働時間制には、1日10時間、1週間52時間の労働時間の限度が定められています。さらに、対象期間が3か月を超える場合は次の制限もあります（積雪地域の建設業の屋外労働者等については下記の制限なし）。
① 対象期間中に、週48時間を超える所定労働を設定するのは連続3週以内とすること。
② 対象期間を初日から3ヶ月ごとに区切った各期間において、週48時間を超える所定労働時間を設定した週の数が3回以内であること。

勤怠さん

1年単位の変形労働制は、原則として年間休日85日を確保できれば休日の配分を弾力的にすることができるわ。

袋小路くん

所定労働時間と休日を調整して、有効な働き方ができるといえます。

賢説課長

良いところに目を付けたね！ 働き方改革はみんながイキイキと楽しく働くための環境整備を図っていくことだからね。

勤怠さん

この制度は、年間の労働日数や労働時間を調整しながら「戦略的に働き方」を考える制度といえますね。

袋小路くん

昨日、労基署に行ってきたんですが、パンフレットや図を使って優しく親切丁寧に教えてくれました。疑問な点があったら気楽に来てくださいって！

勤怠さん

細かいことは、相談に行った方が早そうね。

賢説課長

では早速、サンプルカレンダーを作り、明日のプレゼンではそれをもとに二人で説明してください。

老舗建設の経営会議をうけて（変形労働時間制の導入決定）

和歌三社長

みんな、先日は僕の友人に分かり易く説明してくれてありがとう。この間の経営会議で我が社でも変形労働時間制の導入を決定したけれど、話は進んでいるかな。

賢説課長

今丁度、「1年単位の変形労働時間制」の導入に関する就業規則の改訂について打ち合わせしているところです。社長から何かご意見はありますか？

和歌三社長

我が社の工事部門、設計部門、それぞれに導入した場合のやり方を考えてもらえないかな。

賢説課長

分かりました。では、就業規則を今月末には完成させましょう。

袋小路くん

課長、二週間切っていますよ！ そんな～、デート時間が半減しちゃうじゃないですか？（;´д｀）トホホ

和歌三社長

来年度は我が社に適した働き方改革を推進したいと思っています。私は皆さんの実行力を大いに期待しています。よろしく！

※ 「社長の責任！ 従業員のための就業規則」は今回で終了となります。新年度からは「働き方改革と若者定着の実践に向けて」を紹介していきます。

【冊子PDFはこちら】