HOPE

HOPE
2018年12・2019年1月号 No.504

HOPE 木を切ることだけが造園の仕事じゃない 道具の手入れやロープの結び方ににじむ奥深さ


北本舜己さん
1999年8月生
石川県出身
(株)市村造園


中座式子さん
1976年2月生
石川県出身
山名造園

11月、金沢では造園工が最も忙しい季節を迎える。北陸地方の深い雪に備えて、街中の樹々に「雪吊り」を行うためだ。金沢の冬の風物詩ともいえるこの景色。雪から枝を守るために縄を張り、枝を支えて吊っていく雪吊りにはロープワーク技術が不可欠。造園工の仕事の基本となるロープワークについて、「厚生労働省 建設労働者緊急育成支援事業」※ものづくりコース(造園)で訓練を受ける北本舜己さんは、「縄の結び方1つとってもさまざまな方法があって、奥が深くて楽しいです!」と、目を輝かせる。子どもの頃に、自宅の庭の手入れをする庭師の姿をみて「かっこいい」と思ったのが、造園工に興味を持った始まり。就職を視野に入れた時、「まずは造園工の事をもっと知ってから就職しよう」と考え、訓練に参加した。
同訓練は造園管理や竹垣基礎、チェーンソーを使った伐採業務や雪吊り技術を習得しながら、玉掛けや小型移動式クレーン運転など、造園・土木業で求められる資格を無料で取得することができる。約1か月に及ぶ訓練期間中、各講習を現役第一線で活躍する造園工が、講師を持ち回りで行う。そのため、担当講師によって方法や理論が違うなど戸惑うこともあるが、だからこそ「いろいろな先生の意見を聞くことができて、日々新鮮」という中座式子さん。縄の結び方や剪定についてなど技術に関することは、先生によってさまざまな意見があるが、「道具の手入れ」についてはみな一様。「仕事ができる人は、道具を大切にする」と、今後の職人人生において胸に刻んでおくべき言葉を、講師からもらった。
ふたりの目下の目標は、12月1日(土)、2日(日)に行われる金沢の伝統的な長町武家屋敷跡の土塀の「薦(こも)がけ」作業での造園工デビューだ。「大勢のお客様の前で、カッコよく縄を縛りたいですね」(中座さん)とロープワーク、特に男結びの練習に余念がない。
訓練生は就職活動も積極的に行っている。「造園業には60歳の定年がないというのが魅力。嫌なこともあるかもしれないが、負けずに逆に楽しんでいけたら」(北本さん)。経験を積むことが、造園工としての価値を高めていく。その前途洋々な第一歩を、今踏み出そうとしている。

※建設労働者緊急育成支援事業:離転職者、新卒者、未就職者等について、技能習得、資格取得等の訓練から就職支援までをパッケージとして行い、建設業界の人手不足解消を支援する委託事業【平成27年度から5年間の時限措置(予定)】

2018年11月取材

 

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