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中間選挙に向かう米国、トランプ政権の命運を左右する3つのA

2026年の米国では、11月3日に連邦議会の改選を行う中間選挙の投開票が予定されている。二期目の折り返し点にあたる重要な選挙で、トランプ大統領は、どのようにして有権者の支持を得ようとするのか。また、その成否を左右する要因は何なのか。今回は、中間選挙の年の米国で、トランプ大統領の命運を左右する3つの論点を紹介する。
中間選挙は大統領の「鬼門」
2026年の11月3日に投開票が予定されている米国の中間選挙では、下院の全議席と、上院の議席の3分の1が改選される。議会では上下両院でトランプ大統領を擁する共和党が多数派であり、その奪回を目指す民主党との攻防になる。
米国の中間選挙は、現職の大統領に厳しい。第二次世界大戦後に行われた20回の中間選挙を振り返ると、上院では約7割、下院では約9割の選挙で、大統領の政党が議席を減らしている。
最大の課題は「暮らし向き」の改善
トランプ氏が共和党の敗北を防ぐには、有権者の支持を取りつける必要がある。大統領の命運を左右するのは、「A」で始まる3つの論点だ。
最初の“A”は、Affordability(アフォーダビリティ/暮らし向き)である。有権者は物価高への懸念が強い。トランプ氏としては、有権者が暮らし向きの改善を実感できるような施策を推進できるかどうかが重要になる。
25年7月成立の「ひとつの大きな美しい法(OBBBA)」には、チップからの収入や残業代への免税措置など、有権者の手取りを増やす施策が盛り込まれている。
25年の減税分が26年2月頃からの還付で対象者に戻されるなど、26年はその効果が本格化する。ほかにもトランプ氏は、25年から引き上げてきた関税の税収を使って、一人当たり2,000ドルの税還付を行うよう提案するなど、追加的な家計の支援策にも意欲をみせている。
景気を支えてきたAI、政治的な争点に
トランプ氏の命運を左右する二つ目の“A”は、AI(人工知能)だ。
米国では、AIの可能性に対する期待が、株価や景気をけん引してきた。トランプ氏も規制緩和を主要な手段として、民間の努力を後押しすることで、AIの世界における米国のリーダーシップを強めようとしてきた。
トランプ氏にとっては、中間選挙に向けても、引き続きAIが米国の株価や景気をけん引し続けることが望ましい。そのため、規制緩和への力点は変わらないとみられるが、AIの負の側面への配慮も課題になりそうだ。
AIの負の側面としては、事務職の仕事が代替される可能性など、雇用への影響が注目されやすい。しかし、選挙との関連で見逃せないのは、むしろ第一の論点である「暮らし向き」との関連だ。
AIの普及には、膨大な電力が必要となる。このため米国では、データセンターの新設などに対し、電力料金の高騰を懸念する近隣の住民が反発する動きが目立ち始めている。実際に、25年11月に行われた地方選挙では、データセンターを起点とした電力料金の高騰が論点となり、各地で現職の共和党候補が敗れる事例が相次いだ。
「創造的な思考力の喪失につながるのではないか」など、AIの日常生活への浸透に対する懸念もくすぶっている。世論調査機関のピュー・リサーチ・センターが25年3月に行った世論調査では、回答者の半数が、AIの日常的な使用の増加に「興奮より懸念が大きい」と回答している。AIの使用が「適切に規制されている」との回答も、4割台にとどまっていた。
求心力の低下を回避できるか?
トランプ氏の命運を左右する最後の“A”はAge(年齢)である。79歳のトランプ氏は、28年8月には前任のバイデン前大統領の退任時の年齢を上回り、米国史上で最高齢の大統領になる。前大統領の在任中に高齢への懸念が指摘されたように、次第に年齢への関心が高まるのは自然だ。
トランプ氏のような二期目の大統領は、それでなくても任期が進むにつれて求心力を失っていく場合が多い。米国の憲法が大統領の三選を認めていないこともあり、周囲の関心が次の政権の行方に移り始めるからだ。求心力を失った大統領は、議会の制御が効きにくくなり、選挙に向けて暮らし向きを向上させる政策を実施しようにも、そのための法律を通すことが難しくなる。トランプ氏にとって、二期目の折り返しとなる中間選挙は、迫り来る求心力の低下との戦いともいえそうだ。
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