建設経済の動向

建設経済の動向
2025年4月号 No.567

止まらない建設費高騰、生コンの値上げも

日経クロステック 建設編集長 佐々木大輔

建設費の高騰で、計画見直しや中止に追い込まれる建設プロジェクトが続出している。人手不足を背景とする労務費の高騰に、原材料・エネルギー価格の上昇が重なったことが主な原因だ。建設費の動向、高騰を招いている背景を解説しながら、今後の情勢を読み解く。

異次元の建設費高騰が建築界を直撃している。建設物価調査会によると、2015年を100とした建築費指数(工事原価)は2021年ごろから急上昇を続け、東京都では2024年平均で鉄骨造が133.8、鉄筋コンクリート造では131.6に達した。

東京都における鉄骨造と鉄筋コンクリート造の建築費指数の推移。2021年以降、急上昇を続けている(出所:一般財団法人 建設物価調査会の資料を基に日経アーキテクチュアが作成)

この数年、建設業界は深刻化する資材高騰や人手不足に悩まされ続けてきた。2021年以降、木材価格が高騰する「ウッドショック」、鋼材価格が高騰する「アイアンショック」をはじめとする資材高騰が襲った。2024年には建設業に残業規制が適用。資材価格の高止まりに加え、人手不足を背景とした労務費上昇が追い打ちをかけている。

建設費高騰は、今後もしばらく収まりそうにない。資材価格を見ると、鋼材や木材の価格は落ち着きを見せている一方、生コンクリート価格の値上げが迫っている。人件費や輸送費の上昇を背景に、原材料メーカーによる価格改定の動きが活発になっている。

東京地区生コンクリート協同組合は2025年4月1日出荷分から、生コン価格を1m3当たり3000円引き上げることを発表した。14%の値上げで、値上げ幅は過去最大だった2022年6月と同額となる。生コンの材料であるセメントや砕石の価格改定を受けた形だ。同協同組合の幹部は、「これまでが安すぎた」と価格転嫁に奔走する。

建設物価調査会によると、東京17区の現場持ち込み価格は2024年12月時点で1m3当たり2万800円。2022年1月時点では1万4800円だったが、3年間で約40%も上昇した格好だ。生コンは建築工事で幅広く使用される材料だけに、建設会社は警戒感を示している。

東京17区における生コンクリート(強度18N/mm2、スランプ18cm、粗骨材最大寸法25mm)の価格推移(出所:一般財団法人 建設物価調査会の資料や取材を基に日経アーキテクチュアが作成)

 

労務費上昇はまだ続く
設備人材の不足が深刻に

資材価格以上の勢いで上昇しているのが労務費だ。慢性的な技能者・技術者不足に加え、残業規制に伴う実質作業時間の減少の影響が如実に現れており、上昇基調にある。

とりわけデータセンターや大型半導体工場の建築需要が増えている影響で、設備人材の不足が深刻だ。設備工事費の上昇が建設費を押し上げている。設備工事会社は人材逼迫で選別受注を徹底しており、その結果、設備工事の見積価格が予算の2倍以上になるケースも出ている模様だ。

労務費が下がる要因は見当たらない。根底にある人手不足が解消されない以上、今後も上昇する可能性が高いだろう。

建設費高騰の波紋は全国に広がっている。事業者が施工体制を整えられず、建設プロジェクトを中止したり、延期したりする事例が相次ぐ。公共建築では工事入札の不調・不落が目立っている。

2025年は、建設費高騰を理由に計画見直しなどを余儀なくされるプロジェクトがさらに増える公算が大きい。供給制約が建築市場の縮小を招くとの見方も出ている。帝国データバンクによると、2024年の建設業界の倒産件数は過去10年間で最多だった。建築需要の潮目の変化をにらみながら、本格化する人手不足時代に備えておく必要がありそうだ。

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