建設経済の動向

建設経済の動向
2024年6月号 No.559

「脱炭素現場」へ電動建機の導入が加速

日経クロステック 建設編集長 佐々木大輔

国内の二酸化炭素(CO2)排出量の約1割を占める建設業。2050年の温暖化ガスの実質ゼロ化達成に向け、バイオ燃料や電動建機などを導入する建設現場が増えている。脱炭素型コンクリートの普及へ向けた取り組みも活発に。建設現場のカーボンニュートラル実現に向けた道筋を探る。

2050年の温暖化ガス排出量を実質ゼロにする「カーボンニュートラル宣言」を政府が打ち出してから3年半。あらゆる産業で、脱炭素の取り組みが本格化している。建設産業も例外ではない。2024年は建設現場の脱炭素に向けた取り組みが一段と加速しそうだ。

建設現場における二酸化炭素(CO2)の主な排出源は、建機に使用する軽油と、場内照明や事務所で利用する電気。排出量削減には、まずこの2つがターゲットとなる。企業の排出する温暖化ガス排出量を算定する国際基準「GHGプロトコル」の分類で、スコープ1、スコープ2に該当する部分だ。このためバイオ燃料や電動建機、再エネなどを導入する建設現場が増えている。

特に注目を集めるのが電動建機だ。建機メーカー各社による開発が活況を呈している。国土交通省は2023年10月に「GX(グリーントランスフォーメーション)建設機械」の認定制度を創設。2024年1月にGX建機として認定された電動バックホーが、公共工事で初導入された。排ガスが生じず、騒音を抑えられることなどがメリット。この現場を皮切りに、各地の公共事業で電動建機の導入が相次いでいる。

国はGX建機の導入を後押しする構えだ。環境省や国交省などは購入費用を補助する事業を2024年度に実施。併せて、GX建機を活用する施工者に入札などでインセンティブを付与する仕組みを検討している。

脱炭素の潮流を踏まえると今後、電動建機が現場に浸透していくことは必然だ。もっとも普及に向けた課題は少なくない。コストの問題に加え、電動建機に特有の充電の問題に対処することが欠かせない。施工計画にも影響が出る。課題を1つずつ解決しながら進める必要がある。

電動建機は現状、連続して稼働できる時間が比較的短い。1日の作業の終わりに充電設備がある場所まで建機を動かしたり、充電時間を踏まえて複数の建機でローテーションを組んだりと、建設会社が主体となって運用をマネジメントする必要がある。電動建機を使っても効率が落ちないよう、充電インフラ整備などについても本格的な検討が始まっている。

 

本丸はスコープ3の削減
「脱炭素型コンクリート」に注目

建設現場の脱炭素へ向けて今後重要になるのが、サプライチェーンまで含めたスコープ3での削減だ。建設工事の上流と下流の工程に該当し、大手建設会社の場合はここがCO2排出量の9割超を占める。コンクリートや鋼材といった建設資材の製造と、完成した建造物などのエネルギー消費に伴う排出がおよそ半々だ。

スコープ3で注目されているのが、コンクリートのCO2吸収源としての可能性だ。環境省は2024年4月に国連気候変動枠組み条約(UNFCCC)事務局へ報告するGHGインベントリ(温暖化ガス排出・吸収量)に、初めて「脱炭素型コンクリート」によるCO2排出量のマイナス効果を組み込んだ。まだ国際的に認められたわけではないが、今後の動きが気になるところ。脱炭素・低炭素材料の普及を後押しする可能性がありそうだ。

国土交通省関東地方整備局が発注した東京都内の電線共同溝の工事で、初めてGX建機が導入された。試掘作業で竹内製作所の電動バックホー「TB20e」を用いた(写真:日経クロステック)

CO2排出量は、自社の直接排出(スコープ1)、供給された電気・熱・蒸気などに関する排出(スコープ2)、それ以外の間接排出(スコープ3)を足し合わせて求める。スコープ3は15のカテゴリーに分けられる。カッコ内の数字はカテゴリーの番号(出所:環境省の資料に日経クロステックが追記)

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