FOCUS

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2022年3月 No.536

いつか生徒とドローン測量で野球グラウンドを整備したい!ドローン未経験から始めた課題研究の取り組み

写真や動画を用いて科目への興味や理解度を深める

課題研究の取り組みには、ドローンを飛ばすために必要な法関連などを学ぶ座学の時間もあるが、そこでも山口先生が大切にしているのは「生徒たちの卒業後に役立つかどうか」だ。

「教科書がないので、ドローン検定用の市販の参考書を参考に教えています。検定用の参考書には、物理学や工学の知識も掲載されているのですが、『卒業後、施工管理の仕事に就く生徒たちにとって必要な情報はなにか』という視点で、教えるべき項目を取捨選択して教えています。例えば、航空法に関する知識は現場監督にとって必要だと思うんです。ドローンを使う下請け企業がしっかりと申請を行い、法令やモラルを遵守しているかの確認に役立てられますからね」

どんな授業にすれば生徒たちのためになるのか。そう考える姿勢は、他の科目の授業でも変わらない。

「教師になりたての頃は、PowerPointのアニメーションを駆使した穴埋め式のスライドを作っていたこともありました。でも、凝った資料を作ると、それだけで満足してしまうんですよね。それに、生徒は穴埋めをすることが目的になってしまっている。それが本当に生徒の役に立っているのかと考えたんです」

そこで山口先生が辿り着いたのが、写真や動画を有効活用することだった。

「例えば測量のやり方や専門用語を説明するときに、写真や10~20秒の動画を見せるだけでもだいぶイメージが湧いて、理解が深まります。現物と教科書の内容がリンクするよう、場合によっては自分で撮影するなど、授業で必要な写真や動画を見つけることに時間をかけています」

ドローンを使った課題研究に取り組む生徒たち。
試行錯誤を繰り返しながら、自ら定めたゴールに向かって日々邁進する生徒たちを、
山口先生も温かな気持ちでサポートしている

ドローンでの空撮データの活用など、将来の現場を意識した指導を実践する山口先生。
「生徒たちの卒業後に役立つかどうか」にウエイトを置いている

夢中になれるものを見つけてほしい ドローンも一つのきっかけになれば

将来に役立つようにと、生徒たちに寄り添った授業を展開する山口先生だが、「実際の建設現場で必要な技術や知識を、学校ですべて教えるのはなかなか難しいのが現状」だと話す。

「私がドローンの課題研究を続けているのも、生徒たちが『学校に行くのが楽しい』『田無工に入ってよかった』と思う一つのきっかけになれば、という想いの方が強いんです」

ドローンを入り口に楽しいことを増やし、学校生活の中で「何か一つでも自信になるようなものを見つけてほしい」と山口先生は言う。

「生徒たちと接していると、『どうせ成績悪いし…』などと、自分で自分のランクを決めてしまっている子が多いように感じます。でも、勉強ができることだけがすべてではありませんよね。生徒たちには、勉強以外でもいいから、何か夢中になれるものを見つけてほしい。それはドローンでも、部活でも構いません。私自身、野球が好きで、野球部の顧問になりたいという気持ちだけで教師になりましたから(笑)。勉強ができなくても野球はできるし、ドローンの技術を身につけることはできるということを、課題研究や部活を通して生徒たちに伝えていきたいですね」

 

東京ゲートブリッジ

東京港に架かる「東京ゲートブリッジ」。世界最大級の規模のトラス橋で、中央部でトラス桁が途切れた開放的なデザインが特徴。恐竜が向かい合っているように見えることから恐竜橋とも。都内はもちろん、富士山まで見渡せる壮大な景色は見ものです。

 

 

 

東京都立田無工業高等学校

〒188-0013 東京都西東京市向台町1-9-1
WEB: http://www.tanashikougyo-h.metro.tokyo.jp/site/zen/

 

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