FOCUS

FOCUS
2022年2月 No.535

土木の魅力発信に教員歴の長短は関係なし!同じ熱意をもち取り組むことが生徒のために

「工業人たる前に良き人間たれ」をスローガンに掲げ、熊本県北の工業教育の中核を担う熊本県立玉名工業高等学校。地元との信頼を深めながら、昨年度は約7割の生徒を建設業界に送り出しました。今回は「県下全体で土木科を盛り上げていきたい」という、土木科主任・手嶋栄二先生、進路指導主事・山下耕史先生、実習教師・谷川卓史先生に座談会形式で語り合っていただきました。

目指しているのは「生徒を真ん中に置いた教育」

―教育の質を向上させるために、どのようなことに取り組んでいるのですか?

手嶋先生:ベテランの先生たちが培ってこられた教育スキルや知識を、体系的に吸収できるようなスキームづくりに取り組んでいます。具体的には、教科書には載っていないような経験値からくる知識などのマニュアル化を進めています。

谷川先生:特に実習では、経験則による知識が必要な場面が多いですからね。例えば「なにかを混ぜる」といっても、気温や湿度に影響されるので完全に数値化できない。私は先輩から「モルタルの固さは“1日たったおじや”くらい」と教わりましたが、そういう感覚的なことの継承ができたらいいですね。

手嶋先生:教える力や知識量はどうしても経験に左右されるけど、それを理由に生徒の学びの質を下げてはいけないと思うんです。熊本県下では、中堅層の上の世代は定年を間近に控えた先輩方。中間の世代がいないこともあり、スキルの継承は急務ですよね。

山下先生:一方で、今の生徒の傾向も踏まえてアレンジすることも大切です。最近の子たちは以前よりもかみ砕いた説明が必要な場合が多いと感じます。例えば、単位の“メガ”を説明するときには、生徒たちに馴染みがあるファーストフード店のメニューを引き合いに出すこともあります(笑)。

手嶋先生:それぞれの先生の引き出しや経験から、「マニュアルをもとに、どうアプローチしようか」と工夫してくださる部分が、教員の成長につながるし個性ですよね。教師の役割は、生徒に土木の魅力を発信していくことです。これはキャリアの長さにかかわらずできること。みんなが同じ熱意をもって取り組んでいける環境にしていきたいですね!

谷川先生:そういう意味では、玉工では手嶋先生が先頭に立って、しっかり旗振りしてくれているので、みんなが同じ方向を見て同じ想いで取り組むことができています。

山下先生:得意な部分を見極めてくれて、役割分担が的確ですしね。「ここは自分が中心だけど、こっちではバックアップ的な役割になっている」など、みんなが少しずつ頑張らないといけない(笑)。手嶋先生も中心になったり裏方になったり、バランスいいですよね。

谷川先生:「これはこの先生に任せておけば大丈夫!」みたいな信頼感が増しました。

手嶋先生:最近、生徒たちと良好な関係を築けるようになったのも、こうした教員間の信頼関係が伝わったからかなと思います。生徒を真ん中に置いた教育を理想に取り組んできたことが、少しずつ実ってきているなと感じています。

3年生の「測量実習」「材料実習」「土質実習」の様子。各班とも指示されるのを待つのではなく、「実習中の今、何をすべきなのか」を自分で考えながら積極的に動いている姿が印象的。自主的な学びを育む環境づくりが、2級土木施工管理技士補の学科試験合格率2年連続85%という玉工の実績にも通じている

1 2

関連記事

しんこう-Webとは
バックナンバー
アンケート募集中
メールマガジン配信希望はこちら