FOCUS

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2021年3月 No.526

駆け出し教諭が日々の挑戦から気づいたものとは?奮闘を積み重ね、目指すは恩師のような教諭像

失敗は経験なり!高校時代にこそ失敗を

生徒には、高校時代だからこそできることをしっかりと経験してほしいという加藤先生。そのひとつに「失敗」を挙げている。

「私は教諭になる前には民間企業で勤めていた経験があります。土地家屋調査士事務所で測量の仕事をしていましたが、仕事をしていると失敗は許されません。しかし、学生のうちは失敗することも、失敗して怒られることも貴重な経験です。そういった経験を重ねることで、技術を覚えたり成長したりするのですから、『失敗する機会』を逃すことなく生かしてほしいですね。実習をやっていても、新しいものに抵抗があるのか、器械になかなか触れない生徒もいます。そういう姿をみるたびに、もっと失敗する機会をつくってあげられたらと思います」

日進月歩の進化を遂げる建設業界は、新しい機械や手法がどんどん導入されている。そういった環境下でも、物怖じすることなく積極的に取り組めるように実習等でも最新のものに触れさせてやりたい。とはいえ、教諭歴が浅い加藤先生には、最新機材を持ち込んでの出前講座などを気軽に相談できる企業とのパイプはまだない。だからこそ、早く多くの生徒を建設業界にことさら土木業に送り出したいのだという。

「生徒たちを通して、企業との信頼関係を築くことができたらいいなと思っています。最新技術に触れる授業の実施についてもそうですが、建設業は縦のつながりがとても重要ですからね。卒業生をきっかけに、後輩たちが就職しやすい環境をつくってあげられたらなと思っています」

令和2年3月に、加藤先生が初めて担任を受け持った生徒たちを卒業させて以来、その思いはより強くなっているようだ。

駆け出し教諭の目標は恩師のような凛とした存在

「教諭になって、初めてのことづくしなんですよね」と、うれしそうな表情をみせる加藤先生。取材の最後、理想の教諭像について問うと「学びを止めない教諭、生徒からの信頼を得る教諭でいたい」と、即座に答えてくれた。

「この5年間は、本当にやることなすことすべてが、初めてのことばかりでした。ひとことで『担任』といっても、学年によってそれぞれに教えるべきことがあって、同じことをしていればいいわけではありません。また、専門外の科目を教えなければならない機会も増えてきました。それでも、教諭という職についた以上、生徒たちをきちんと明るい将来へ導いていかなければならないという責任があります。私の経験では、まだまだ目が行き届かないことが、たくさんあります。だからこそ、私自身が学ぶことを止めてはいけないと肝に命じています」

そう語る加藤先生が手本にするのは、高校時代の恩師だという。厳しく威厳がある雰囲気はあったものの、授業でつかう資料などはとても丁寧につくられて分かりやすかった。今思うと、とても研究熱心な先生だったのだと痛感するのだそうだ。自分も一皮むけて、恩師のような厳しさをもった凛とした教諭になりたいというその言葉には、力強い覚悟を感じる。

平成28・29年度の課題研究では、「新聞紙で作る高速道路の“橋”コンテスト」に参加。大学生に交じり耐荷部門で力を尽くした

地元塗装業者の協力を得て行った、西門の塗装実習。
プロによる指導は興味深かったようで、実習をきっかけにこの企業に就職をした生徒も

 

羽布ダム

愛知県豊田市にある、昭和38年築造の「羽布ダム」。ダム湖百選にも名を連ねる、ダムマニアも多く訪れる観光地ですが、加藤先生にとっては生まれ育った地にある最も身近な土木構造物。故郷を感じる場所なのだそうです。

愛知県立半田工業高等学校

〒475-0916 愛知県半田市柊町3丁目1
WEB: https://handa-kogyo.jp/

 

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