FOCUS

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2020年11月号 No.523

工業高校での教育は人生設計の教育 生徒の人生が有意義になるよう手助けをしたい

管工事業の魅力を伝えるためにできることを徹底模索

生徒の理解促進、興味喚起のために、出口先生は普段の授業でも工夫している。それが10年前から改良を重ねた「手づくりの参考書」だ。

「工業の教科書は種類が少なく、内容を精査した上で選ぶことができません。中には教員の私たちですら、難しいと感じるものもあります。それをそのまま生徒に渡してしまえば、抵抗感を覚えて勉強が進まなくなる。生徒には自分に興味があること、楽しいこと、やりがいのあるものを見つけてほしいのでここで興味を損ねてほしくありません。生徒にも分かりやすいよう教科書の中からきちんと教えるべき部分を重点的に抜きとり、プリントをつくっています。『今年はここを加えようかな』など、質と量を見極めながら毎年バージョンアップ。今はこれをデータ化し、私が転勤しても同じ授業ができるようにと考えています」

授業の中でどれだけ建設業や管工事業の魅力や面白さをきちんと伝えられるかということを、常に追求しているという出口先生。来年度からは、管工事工業協会など地元団体・企業の協力を得た実習を週に1回実施する予定だ。
「日頃から協会等に足を運び、『どう伝えると魅力が伝わりますかね?』と相談に行っていました。そういったことの積み重ねから、ようやく実習に講師派遣の協力をいただけるくらいの信頼関係を築くことができました。教えることについては教員がプロですが、技術的なことについては協会の方々がプロです。お互いの強みを出し合いながら授業を行っていきましょうと、1年かけてどんな内容にするのか準備しています。工業高校での教育は、人生設計の教育ですからね。生徒たちの人生が有意義なものになるよう、しっかりと手助けをしたい。こういった高度な技術を学ぶ授業をはじめとした当校での学びが、自分にあった職業を発見するためのツールになるといいなと思っています」

生徒たちが自らの意志で選んだ先へ将来の駒を進められるよう、出口先生は「1年生でまずは夢を見つける。2年生ではその夢をどうやって実現するかを考え、3年生でそれを実行しなさい」と指導している

個々人の弱点に向き合えたコロナ禍でのオンライン授業

新型コロナウイルスの影響下で、同校では4月からGoogle Classroom(グーグルクラスルーム)を導入。授業後のレポートなど、課題の提出物もツール上で管理した。

「これまでだと、課題で分からない部分があれば白紙で提出し、そのままにしてしまいがちでした。しかしGoogle Classroomを活用してみると、チャット機能を使い『解けなかったのでできませんでした』とコメントが入ってくるようになりました。そうするとこちらも『解けなかったのは、分からなかったのかやる気がなかったのか』と、反応することができます。どう解決しようとしたのかなどやり取りを重ねる中で、どこでつまずいているのかを把握できるようになりました。社会人になることを考えると本当は口頭でこういったやり取りができるといいのでしょうが、まずは分からないことを説明できるようになったことは大きな成長です。導入時には混乱はありましたが、個々人の弱点と向き合える環境下で授業を進めることができ、良い点もありました」

四日市コンビナート

近年では夜景クルーズで注目を集めている工業地帯。幼き頃の出口先生は、「ここの工場ではものをつくるための原料をつくっている」ことを教わり、ものづくりと向き合うことになる。いわば出口先生の工業人としての原点。

三重県立四日市中央工業高等学校

〒512-0925 四日市市菅原町67
WEB: http://www.mie-c.ed.jp/tcyokk/

 

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