FOCUS

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2020年11月号 No.523

工業高校での教育は人生設計の教育 生徒の人生が有意義になるよう手助けをしたい

日本を代表する工業地帯、三重県四日市市。三重県立四日市中央工業高等学校は、昭和37年にこの地に設立しました。平成9年には、三重県水道工事業協同組合連合(現在の名称)や、三重県管工事工業協会などの力添えを得て設備システム科を新設。管工事に重点を置きながら、「ビル1棟を建てるのに必要な知識」を学ぶ同科での指導方法・方針について、同科・出口雄一先生に伺いました。

楽しいと勉強の両立を目指し、穴埋め形式の現場見学小冊子

同校設備システム科のキャッチフレーズは、「工業の総合学科」。ビル1棟を建てるために必要な、建築、土木、電気、機械などの網羅的な学習を目指している。中でも特に力を注ぎ、同科を特徴づけているのが「管工事」に関する授業だ。「防災衛生」や「空気調和設備」など管工事関連の授業を多く設定。ビルの外から様々なものを引き込み、ビル内の不必要なものを排出するルートを構築する仕組みを学んでいる。生徒にとっては、ものづくりを完結させる知識を習得できる魅力的な学科であるが、教員の立場では「学校内に管工事を専門とした職員がいない」という課題もある。その課題を解消するために、科長の出口先生を中心に進めているのが、三重県管工事工業協会をはじめとした各業界団体や地元企業との連携だ。その取り組みの一環として実現したのが、三重県警察四日市北警察署や三重県立総合医療センターのバックヤード見学会。実際に授業で学ぶ「免震構造」内に立ち入ったり、空調の「中央監視」がどのように行われているのかを見学したり。市内でも有数の大型設備に触れる貴重な機会だからこそ、出口先生は「ただ楽しいだけの見学会に終わってしまうことを恐れていた」という。そこで生徒の理解度を高める手助けとして、出口先生は「お手製の見学会用小冊子」を作成した。

「楽しいと勉強を両立したいと考えていました。事前に医療センターの施工時に現場監督をされていた方にヒアリングし、学習してほしいポイントを穴埋め形式でまとめました。見学会当日にしっかりと説明を聞いて理解しなければ、空欄を埋められない。実際に設備を見て、専門家に話を聞いて初めて、座学で学んだことと結びついたという声が多く聞かれました。また、見学前には就職先の選択肢に管工事業が入っていなかった生徒が、見学後には選択肢に挙がっていました。これまで生徒たちの管工事業に対する興味を十分に引き出せていなかったのだと、私たちの課題を改めて実感することができました」

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