FOCUS

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2020年2月号 No.515

産学官民連携で取り組む課題研究 地元が一体となり地域の未来を支える人材を育成

創立118年の伝統を誇る大分県立大分工業高等学校。その歴史は、明治35年に大分県初となる工業徒弟学校として、別府市に設立したことにはじまります。時代の流れに沿い学科編成など変化を遂げ、現在の校名となったのは昭和28年。昭和53年に現在地に移転しました。3万人を超える卒業生を輩出してきた同校が今目指すのは、大分県の次世代を担う人材育成。産学官民が連携して行う取り組みについて、津﨑周平先生に伺いました。

地元の自然環境を活用した産学官民連携の課題研究

日本三大奇勝として知られる耶馬渓をはじめ、豊かな自然があふれる大分県。同校が位置する大分市内には、大分川や大野川が静かに流れています。これらの地の利を活かして、約10年前から国土交通省とともに取り組んでいるのが、河川環境の課題研究。地域にあった河川整備とはどのようなものなのか―?自然環境との共存を意識した社会基盤づくりを考える授業を行っています。

「正確」「勤勉」「健康」を校訓に、工業教育を通して地元産業に求められる人材を育成する同校。勉学に励むのと同時に、スポーツや文化の振興にも力を注いでいる

■ ■ 国土交通省と行う課題研究ではどのようなことを行っているのですか?

主には川の水質を調べています。水質や環境を守りながら工事を進めなければならない土木にとって、水質管理は大切な仕事のひとつです。しかし、「きれいな川」といっても、どのような指標で判断されるのか生徒たちは知りません。そこで国土交通省と地元企業・タナベ環境工学株式会社の協力のもと、生徒たちは川に入って指標生物を採取したり、パックテストを行ったり判断基準をまずは学んでいきます。それと同時に行っているのが、災害・防災教育です。堤防や樋門の対策や排水機場の見学をしながら、実際に水害が起こったときには、どのように川の氾濫を防ぐのかなどを教えていただきます。自然災害が多い昨今、河川整備や河川事業はとても重要です。しかし、ただ護岸整備すればいいわけではない。周辺には町があり、人々の生活があります。また、自然環境もある。それらを守り共存できる、地域にあった河川整備が、今求められています。その理解を深めるために、今年は大分川ダムと耶馬渓ダムの見学に行きました。特に耶馬渓ダムがあるエリアは、観光名所としても知られるうつくしい場所です。その景観を損なわない護岸のあり方や、生物に配慮するために魚道をつけているという話に、生徒たちは「そんなことまで考えているのか」と驚いているようでした。環境保全と人の命の大切さ、そのバランスを考えた整備の重要性に触れて気づいたことを、今後もし、河川関連の現場に携わることがあったら思いだしてくれるといいなと思います。

3年生の9月頃からはじまる課題研究は、10数名ずつ3つのパートに分かれて行う。河川班では、指標生物を採取した水質評価やパックテストによる水質評価を実施した

国土交通省、東洋建設株式会社の協力のもと、1年生は別府湾の防波堤の建設現場見学を実施。業界で働く意義などの説明を受けた

 

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