FOCUS
実際の現場さながらの学校林実習 「自主性」を育む環境づくりへのこだわり
■ ■ 生徒たちと向き合うときに大切にしていることは何ですか?
生徒が主体で考え、行動するための環境づくりを大切にしています。そのひとつがボランティア活動です。幼稚園や介護施設など地域の方からの依頼品を製作しますが、打合せも依頼者のニーズヒアリングも生徒が行います。もちろん納期もあります。要望を満たすものはどんなものなのか、納期までに納めるためにどう進めていくのか、考えることはたくさん。最初は教員が少し道筋をつけますが、基本的には生徒にすべて計画を立てさせています。すると、「どんな形のものがいいのだろう」「課題研究の時間だけでは間に合わないから、放課後残って作業しよう」など自発的な行動が見られるようになりました。納品も、生徒たちが現場に行って自分たちで設置して完了させます。ひとつ納品が終わると、次の依頼者探しも生徒たちで行います。「作業前の依頼者との打合せから始まり、モノづくりから納品までの一連の流れを体験させることで、実際に仕事をするうえで大切な計画性や段取り力、関わる人への配慮などを身につけてもらいたい」という想いで授業をしています。
また、これらの活動は地元紙によく取り上げていただいており、数年前からは「工業高校」という文字が、新聞紙面に多く出るようになりました。このような活動が中学生や地域の方々への良いPRとなっています。
幼稚園からの依頼で、園児が自分で開閉できる扉を作成・取り付けを行った。「先生はなかの様子が確認でき、子どもの目線では見えない高さにしたい」というニーズを聞き取り完成させた
デイサービスを利用している子どもたちに、廃材等を活用して積み木をつくり贈呈。普段、小さな子どもが触れてもケガをしないよう、ていねいにヤスリがけをして丸みをつけて仕上げた
■ ■ 生徒に身につけてほしいことは何ですか?
すべてにおいて、自主性を身につけてほしいと思います。「やれと言われたからやる」という意識では、気づけないことがたくさんあります。例えば学校林のきつい実習も自分が率先して動き体験しているからこそ、実際の現場で働く作業員の大変さが理解ができます。すると現場で陣頭指揮をとる立場になったときに、周りの人に対して気づかいができる。そのような生徒たちの自主性を育み、何が課題なのか、解決するためにどうすればいいのかという力を身につけて、建設の仕事を好きになって入職してほしいと思っています。
自然は多いが、整備された公園が少ない町で、人々が安心して快適に憩う場所になることを目指し、学校林の一番見晴らしがいい場所を焼肉等ができる展望施設に整備している
北海道北見工業高等学校
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