FOCUS
生徒と一緒にいる時間が、信頼と成長の土台になる。建築や和太鼓を通して育む“スペシャル”な自信!
和太鼓を通して教える
喜びと自信
小松先生を語る上で欠かせないのが、主顧問を務める和太鼓部での活動だ。もともとは『葛工ねぶた祭り』のために組織された『ねぶた部』をルーツに持つ和太鼓部は、現在は演奏活動に特化した都内工科高校でも珍しい存在となっている。
「和太鼓の魅力は、他の競技と違って自分自身が表現者として主役になり、ステージで何百人もの視線を一斉に浴びること。この“注目され、表現し、賞賛される”という体験を高校時代に味わうことは、将来、大きな自信を持って社会に出るための糧になります。また、和太鼓は他の競技と比べて勝敗が目立ちづらいからこそ、人間性がとても重要だとも感じています。相手を思いやり、規律を守る。そうした人間教育の場としても、非常に意味のある活動だと捉えています」。
さらに、そこには工科高校ならではの工夫も光る。
「部員から“太鼓の台が足りない”と相談されたことをきっかけに、実習で使い切れなかった廃材などを活用して、自分たちで台や物品を制作するようになりました。特に建築科のマネージャーが加入してからは、この動きが本格化しました。廃材が、新しい価値を持った道具として生まれ変わる。これは工科高校の強みを生かした、本校らしい取り組みだと思っています。こうした活動が、部員一人ひとりのキャラクター作りにも貢献してくれたら嬉しいです」。
褒めて認めて培っていく
信頼の絆
生徒と一緒にいる時間を何よりも大切と考える小松先生。その背景には、自らが教員の道を選んだ原点があった。
「高校時代の担任の先生や部活動の顧問の先生に憧れて、この道を選びました。自分が体験させてもらったような青春を、今の生徒たちにも味わわせてあげたい。放課後や部活動で生徒と関わっている時間は、毎日が嬉しい瞬間の連続です。腹の底から笑わせてくれる、可愛くて面白い生徒たちばかりです」。
日々、生徒の自己肯定感を高めるためのアプローチも欠かさない。
「良いと思ったことは、迷わず言葉にして伝えるようにしています。勉強だけでなく、挨拶の声が良かった、顔つきが凛々しくなったなど、気付いたポイントを褒めて、認めること。そこから信頼関係が生まれると信じています。まずは“大人は敵ではない”と分かってもらいたい。生徒と一緒に汗をかき、同じ時間を共有することこそが、彼らの人間性を理解する唯一の方法だと思っています」。
そんな小松先生が生徒たちに贈る言葉は“スペシャル”だ。
「一人ひとりが、誰にも代えがたいスペシャルな存在です。自分だけの強みを見つけ、自信を持って成長してほしい。私自身も、今後どの学校へ行っても、その学校の強みを見出し、押し出していけるような教員であり続けたいと思っています」。
小松先生の眼差しは、江戸川の空の下、未来を切り拓こうとする生徒たちの背中を優しく、そして力強く後押ししている。

和太鼓部の活動で欠かせない太鼓の台や小物は、部員たちの手作り。実習で使用しなくなった廃材を有効活用し、建築科の生徒を中心に、ミリ単位の精度で組み上げていく。自分たちの手で道具を作り、それを使って最高の演奏を届ける。工科高校ならではの“ものづくりへの誇り”と“表現への情熱”が融合した、和太鼓部を象徴する取り組みの一つとなっている。

建築科では、材料となる木材の伐採から加工、施工からドローン測量・点群データ取得・3D化まで、一連の流れを生徒に体験させる小屋建設プロジェクトも実施。ものづくりの流れ、そして伝統的な施工技術とデジタル技術などの多角的な学びが、次世代の技術者の基礎を固めていく。「スマートフォンでドローンを操作するなど、ゲームの延長のような感覚で面白そうに実習に取り組む生徒の様子も見られました」と小松先生。
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JR高知駅
小松先生が選んだのは、故郷にある『高知駅』。建築家・内藤廣氏の設計による、地元産杉材を用いた巨大な木造大屋根アーチ“くじらドーム”が印象的な建物です。「南側から見ると、四国山地と重なるような曲線美があり、帰省のたびに包み込まれるような安心感を与えてくれます。高校時代の3年間、毎日汽車で通い続けた思い出の場所。この駅での経験が今の自分に繋がっている、私にとってスペシャルな建築物です」。 |


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