FOCUS
地域と出会い、現場を知り、人が育つ。白石工業高校・建築科の実践から見えるもの。
地域と共に歩み
建築学への門戸を開く
地域の小・中学校との連携にも力を入れている同校。
「例えば、建築科のこどもたちがプランターを製作して、小学生が絵を描き、中学生が花を植えるといった、地域連携型のプロジェクトを実践しています。製作したプランターが公共施設や地域を彩り、あちこちに飾られることで本校のこどもたちだけではなく、地域の人たちとも“つながり”や“絆”を形成しています。小・中学生に本校で実践している“ものづくりを通じた学び”を知っていただける良い機会にもなっています」。
さらに、地域の中学校へと赴いてものづくりに関する出前授業なども実施している。
「著名な建築物などを紹介しながら、建築の具体をわかりやすく解説する授業です。訪問した中学校から本校に入学したこどもたちの活躍を紹介するなど、より本校を身近に感じてもらえるように工夫を凝らしています。地域との関係性を深めるために大切なのは、本校を“閉じた場”と感じられないようにすること。だからこそ、地域の皆さんとの接点を積極的に設け、本校に親近感を感じていただけるような取り組みを実践しています」。
建築を伝えるという道へ
人と向き合う教育を夢見て
清水建設株式会社と株式会社伊藤都市建築研究所での実務経験を経て、30代で教員へと転身した萱沼先生。
「もともと教員になるつもりはなく、自身の知見を高めるとともに学校建築の本質を学びたいと考え、大学で教職課程を履修しました。教育実習での“教える(伝える)”という体験の中で、先生になってほしいと言われたことがとても嬉しく、教員への道を考える大きな転機になりました。建築設計の仕事も好きでしたが、自分の建築には“人の心に届く力がない”と感じるようになっていましたので、設計を通して建築の世界で邁進するよりも“伝える”ことで、こどもたちの可能性を広げるお手伝いをしたい。こどもたちとの交流を通じて、そう考えるようになりました」。
現在は進路指導部長として、こどもたちが社会へ踏み出す局面に深く関わっている。
「進路指導で特に重視しているのは、自分探しと信頼関係の形成です。建築は人を相手にする仕事なので現場での振る舞い方や姿勢は、そのまま相手が抱く印象に直結します。また、集団の中でも力を発揮し、自分の考えを相手に理解しやすいように伝える力を育むため、グループワークに取り組める機会を多数設けています。自己表現する力を育みたいという想いもあり、建築科では入学してから自己プレゼン・インターンシップ報告会・課題研究発表会など、学年ごとに発表の場を必ず設けています」。
同校では7年間にわたり建築科長を務め、地域連携の基盤づくりに尽力。今後もその想いをつなげ、広げていきたいと抱負を語る。
「建設的で前向きな取り組みは、個人ではなくチームでつくるもの。本校建築科で培ったノウハウを、宮城県全域や我が国の各地域にも広げていきたい。これまでの実践事例を共有し、草の根的に広がるネットワークを築くことが、これからの目標であり使命と考えています。また、本校建築科の取り組みは、多くの母校愛を持った卒業生に支えられているものです。今を生きるこどもたちに、卒業後もずっと母校愛を持ち続けてほしい。校舎内や学校案内などに散見される“白工らしさ”を感じるマスコットキャラクターの『テクにゃんこ』も建築科の生徒がデザインしたものです。生徒・卒業生、そして地域の皆様にも愛され続ける白石工業高校を次の世代へと繋いでいきたいと考えています」。

生徒がデザインした白石工業高校の5つの学科を象徴したマスコットキャラクター『テクにゃんこ』
生徒に伝えたい言葉を尋ねると、“思いやり・感謝・ありがとう”という三つの言葉を挙げた。
「ものづくりの仕事は、一人ではできないもの。“人”を相手にする仕事だからこそ、関係性の中で悩むこともある。しかし、そうした経験の積み重ねがあるからこそ“人”は生涯成長していける。こどもたちには、相手を思いやり、感謝の言葉として“ありがとう”を素直に伝えることができる“人”になってほしいと願っています」。

劇場や水族館、リサイクル施設など、多様な場所へ見学に赴き、建築の本質に触れるこどもたち。単に建物を見るだけでなく、普段は目にすることのできないバックヤードや設備の見学なども交えて学習機会を重ね、“建築”の解像度を高めている。「校外学習では座学とは異なるこどもたちの表情を見ることができます。学校を離れて様々な場所を訪れることで、幅広い“建築”の魅力を感じてもらえたら嬉しいです」。

環境イベントSDGsマルシェや地元のお祭りではブースを設け、廃棄木材を再利用した卓上カレンダーやオリジナルキーホルダーの製作体験、こどもたちの作品展示などを実施。こどもたちは来場者と対話しながら“人に伝える力”を磨いている。「こどもたちがいきいきと取り組みながら成長でき、訪れる人たちもみんな笑顔になれる。そんな活動を次代につないでいくことが大切だと実感しています」と萱沼先生。
|
白石城
白石市のシンボルとして愛されている白石城。その起源は鎌倉時代にまでさかのぼるとされ、江戸時代には仙台藩の重臣・片倉氏の居城として活躍しました。1874年に解体されるも、1995年に天守の役割を果たしていた三階櫓、大手門などが木造で復元され、現在は観光名所として多くの訪問者を迎えています。萱沼先生は「本校も白石城と同じように、地域に愛されるシンボルになりたい」と語ります。 |


宮城県白石工業高等学校
〒989-0203 宮城県白石市郡山字鹿野43
WEB:https://shiroishi-kougyou.myswan.ed.jp/
◎本誌記事の無断転載を固く禁じます。
【冊子PDFはこちら】






