FOCUS

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2025年9月号 No 571

地域の協力やDXが広げる、若者たちの可能性。鳥取で育む“社会に活きる力”!

探求と創造を育む
鳥工版次世代教育

さらに、教育の進化にも積極的だ。

「異なる分野を統合的に学ぶSTEAM教育は他校でも取り組まれているものと思いますが、本校では“鳥工版STEAM教育 ~科学者のように探求し、アーティストのように作品をつくる~”というコンセプトを設け、地域の魅力を発信するポスターの作成やプレゼンテーション、ディスカッションなどを通して生徒の好奇心を刺激し、創造性を引き出す取り組みを図っています。また、図書館の一角にはパソコンやモニター、3Dプリンタなどを置いた空間“STEAM Lab”を設け、そうした取り組みに臨める体制を整えています」。

2025年度からは文部科学省のDXハイスクール指定校にもなり、デジタル機器などの導入も検討中だ。

「建設業界でもドローンやVRが当たり前に使われる時代です。今後はドローン演習場やVRゴーグルの導入も視野に入れています。生徒たちが将来、最前線で活躍できる力を身につけさせたいですね」。

地域の中学生に向けた出前授業にも熱心に取り組み、液状化実験や住宅設計の体験など、学びの種を蒔く活動を実施。

「出前授業については様々な中学校からご好評をいただき、近隣のみでなく、県内東部エリア全体に活動を広げています。こうした取り組みを通して、建築・土木に興味を持つ子どもたちが一人でも増えてくれたらと思っています」。

 

果敢なチャレンジ精神を
培ってもらいたい!

村上先生自身が教員を志したのは、海岸工学を専攻していた大学生の頃。

「学生時代、友人に勉強を教えることに楽しさを覚えたのがきっかけです。ただ、教育実習では思ったように伝わらず、悔しい思いをしました。もっと伝える力を磨きたいと思ったことが、今に至る原点になりました」。

教員となり、土木教育に20年、建築教育に8年携わってきた現在も、生徒と一緒に学ぶ姿勢を忘れない。

「例えばコンクリート造りについて教える際にも、建築と土木では“調合設計”と“配合設計”など、用語が異なる場合があるんです。私もまだまだ勉強中で、生徒と一緒に試行錯誤する日々です(笑)」。

長い教員生活の中で、教育環境の変化も実感している。

「今は、生徒自身が情報を集め、自分の進路を切り拓ける時代。SNSなどを活用して、必要な知識を自ら学んでいる。そうした主体性を後押しできる教育に取り組んでいきたいです」。

そんな村上先生が生徒たちへ贈るのは、『二兎も三兎も追え!!』というメッセージだ。

「二兎を捕まえるにはどうすればよいか…そう考えたとき、新たな三つ目の発想が生まれます。一つの目標を追いかけるのはもちろん素晴らしいことですが、それに固執するのではなく、次々と出てくる目標を追いかけ、それを全部捕まえるような挑戦を続けてほしい。果敢なチャレンジ精神を、若いうちに身につけてほしいですね」。

 


若葉台地区のバス停に設置された木製ベンチは、課題研究の一環として手がけたもの。地域の要望を受けて製作され、実際にバスを利用する高齢者からも「座り心地がいい」と好評だ。「地域の声に応え、形にする経験は、生徒たちにとってかけがえのない学び。今後もベンチを拡充し、地域貢献を続けていければと思います」と村上先生。

 


木工ベンチ製作に取り組む生徒たち。その傍らで、村上先生は一人ひとりに目を配り、丁寧に声をかける。「高校生であるうちに、技術力やコミュニケーション力以上に培ってもらいたいのが“向上心”です。常に学ぼうとする心があれば、社会に出た後も成長し続け、様々なものごとに臨んでいける。その力を、3年間を通して身につけてほしいですね」。

 

三徳山三佛寺投入堂

“修験道の開祖が法力で建物を投げ入れた”という伝説が残る、鳥取県東伯郡三朝町に位置する三佛寺の奥院である投入堂(なげいれどう)。断崖絶壁の窪みに懸造として建てられており、その独特な構造と美しさから日本の国宝に指定されています。「建てられたのは平安時代後期と言われていますが、その美しさとロケーションには思わず息を呑むほどです」と村上先生。

 

 

鳥取県立鳥取工業高等学校

〒689-1103 鳥取県鳥取市生山111
WEB:https://www.torikyo.ed.jp/toriko-h/

 

◎本誌記事の無断転載を固く禁じます。

 

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