FOCUS
建築の授業は、教室の中だけでは終わらない! 地域とつながり、社会を支える技術者の輩出を目指して。
現場見学などの体験的な学びで
実践的な力を伸ばす!
ICTの活用とともに重視しているのが、以前から取り組んできた現場見学会やインターンシップなどの体験的な学びだ。
「ICTのメリット、リアルな体験・経験による学びのメリット、その双方を活かすことが大切だと考えています。現場見学は以前から取り組んできたことですが、職人さんの仕事の様子や重機の活躍を間近で見たり、プロフェッショナルのお話を直に伺い、現場の空気を肌で感じるといった体験的な学びは、将来働くにあたって非常に重要なこと。実践的な知識とスキルの有り様を知ることが、将来のキャリアにつながるものと思います」。
特に同校では、神奈川県建設業課内に事務局を置くCCI神奈川(神奈川県魅力ある建設事業推進協議会)の協力のもと、貴重な現場見学に取り組むことができている。
「CCI神奈川は、まさに本校と建設業界を結ぶ存在。どのような時期にどういった現場があるか、高校生の見学に向いた現場はどこかなどを調べ、現場の紹介や日程調整などのほか、私たちの意見や要望も取り入れながら各企業・団体に働きかけてくださっています。例えば2021年の東京五輪の前には、神奈川県内でもスポーツセンターの改築などの工事があり、CCI神奈川のご協力によってそうした大規模な現場への見学も叶いました。3つの系(建築系・都市土木系・住環境系)あわせて100名ほどの生徒がいっせいに見学できるような大規模な現場を体験できる機会は滅多にありません。建築・土木・設備を一度に見学でき、普段以上に生徒の学びを深めることができた貴重な機会となりました。学校だけでは取り組めないところまでフォローしていただけるのは、本当にありがたいこと。CCI神奈川、そして建設業界の皆様にそうした手厚いご協力をいただきながら、産官学が連携して生徒を育む取り組みを進めている形です。CCI神奈川では若手技能者の表彰にも取り組まれているので、ゆくゆくはものづくりコンテストや技能五輪などで優秀な成績を収めた高校生の表彰なども実施していただければ嬉しいです。そうした機会があれば、生徒も“さらに頑張ろう”という気持ちになっていくことでしょう」。
たくさんの人の支えを実感し、
学びを深めてほしい!
生徒に対しては常日頃から“地域や社会とのつながり”を大切にするよう指導している。
「建築の授業は、教室の中だけで終わるものではありません。むしろ“地域や社会とのつながり”の中でこそ、学んでいくものは多いです。例えば課題研究においても、地域に貢献する、社会へと還元されるような取り組みとなるよう図っています。自分たちの作ったものが周りに活かされているという実感は、生徒の自己肯定感の向上にもつながり、より意欲的に学びを深めていくきっかけになります。単に物を作るだけではなく、地域や社会と様々な形で関わる仕事だからこそ、学びを学校の中だけで完結するのではなく、学校外の方々と積極的に関わる機会を持ってほしいと思います」。
生徒に投げかけたいのは、“君たちはチャンスで満たされている”というメッセージだ。
「私たち教員のみならず、たくさんの大人が生徒の育成に協力してくださっているという認識をもってくれたら嬉しいです。地域の方はもちろん、現場見学の場を見つけてくださる方・紹介してくださる方、現場を見せてくださる工事関係者の皆様、企業・団体の皆様…。また、戸田みらい基金様(建設産業における「担い手」の育成に向けた支援を通じて産業全体の発展に貢献することを目的に2016年10月に戸田建設が設立)にも“建設に関する教育振興に係る助成”という形で支援をいただいており、実習で使う工具や木材などの購入費をはじめとした経済的負担の軽減につながっています。そうした皆様の支えに感謝するとともに、“自分たちはこんなにチャンスに恵まれているんだ”という実感をもって、高校生活を豊かに、有意義に過ごしてほしいと思います」。
“藤沢のまちを支えているのは藤沢工科高校の卒業生”と言われるくらい、地域を支える人材を育て続けていきたいと話す大木先生。地域とつながり、社会を支える──そんな技術者の誕生に向けて、今日も生徒たちを見つめている。
大学院ではまちづくりを専攻し、様々な関係者とともに物事を進める事業に魅力を感じていた大木先生だが、教育実習に参加した際に教員という仕事の面白さを実感したそう。「教えることがダイレクトに生徒に伝わる喜び、生徒の成長を間近で見られる楽しさを感じたことが、教職に進むきっかけでした」
本年度は地元の観光スポット・江の島シーキャンドル(展望灯台)周辺に置くベンチを製作する予定。「そこに置くにふさわしいものをと考え、江の島シーキャンドルをイメージしたスタイルのベンチを生徒とともに計画しています。地域貢献の取り組みは、生徒の自己肯定感の向上にもつながるものと思います」
藤沢市ふじさわ宿交流館 旧東海道藤沢宿の歴史や文化を伝える藤沢市ふじさわ宿交流館。「藤沢の歴史にスポットをあてた施設ですが、地域の方や来訪客の交流の場としても親しまれています。本校の生徒による手作りの木製ベンチもこちらに設置されており、腰を下ろしてのんびりと憩いのひとときを過ごされる方も多いそうです。そうした形で地域に貢献できているのは、教員としても嬉しい限りです」 |
神奈川県立藤沢工科高等学校
〒252-0803 神奈川県藤沢市今田744
WEB:https://www.pen-kanagawa.ed.jp/fujisawakoka-th/
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