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FOCUS

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2017年4月号 No.487

職人を「誇り」と「憧れ」の職業に! ~香川県「職人育成塾」が目指すもの

香川県内で内装関連の工事を手がける9業種10社が共同して立ち上げた一般社団法人職人育成塾。2016年10月の開校と同時に建設業振興基金が厚生労働省から受託した建設労働者緊急育成支援事業の地方拠点として訓練を開始しました。2カ月間の訓練を終えた第一期生21名全員が地元を中心に建設業に就職しました。代表理事で、自身は高松市内で軽鉄ボード内装業を経営する岡村真史さんに職人育成塾の設立にかけた思いや今後の展開についてお話を伺いました。

職人の「なり手」不足に危機感

職人育成塾は、職人のなり手不足に危機感を抱いた内装、電気設備、タイル工事、左官、塗装業など9業種10社が共同で始めた、文字どおりの「職人育成塾」です。代表理事の岡村真史さんが塾の構想を固めたのが2015年夏。同年11月社団法人の認可を受け、翌年10月には開校と、ここまで驚異的なスピードで進んできました。
建設労働者緊急育成支援事業として、訓練生は無料で2カ月間の訓練を受けることができ、修了時には高所作業車や足場組み立てなど、内装業の「三種の神器」といわれる資格が取得できるほか、就職先も斡旋されます。一期生には全国から30名ほどの応募があり、22名が入塾しました。
訓練の拠点は既に構想段階から考えていた小学校の廃校(旧塩江小学校)を活用。さらに地元の旅館組合の協力を得て、訓練拠点から徒歩数分の場所に使わなくなっていた寮を利用させてもらうことができ、8名の参加者が寮に住み込んで訓練に臨みました。

体育館での入塾式。

一級の職人から直接技術を学ぶことの意義

カリキュラムの作成には、育成塾の設立に参加した建設会社10社のほかに、70社のメーカーからも意見を集めました。また、ポリテクカレッジ(職業能力開発大学校)や芝浦工業大学の蟹澤宏剛教授にも助言を仰ぎました。
「実技の講師は、各社の現役の一級技能士等の資格を持つ職長が担当しました」と話す岡村さん。「一流のプロの技を間近に見て、さらに教えてもらう機会なんてなかなかない。そのプロの姿を自分の将来の目標にしてほしいという思いがありました。実際に自分の部下になるかもしれない人に教えるわけで、自分の上司になるかもしれない人に直接教わるのですから、熱のこもりようが違いますし、教える側も生徒から学ぶことがあるなど、相乗効果となり、講師の教育にもなりました。これから先の事を考えると講師を自前で育てていくことは必用な投資なのです。」

専門実践授業の様子。タイル専門実習と校舎の通路を使っての塗装実習。

就業時のミスマッチを防げば離職率を下げられる

カリキュラムの組み方も工夫しています。ひとくちに「内装業」と言っても15業種ほどに分かれるため、前半は座学を通じて職人さんの生の声をきいてもらいすべての業種に触れ、自分に合うものを選択できる期間に。後半からは3職種に特化して技術的なものを学び授業を深掘りするようにしました。こうすることで、前後作業の理解も深まりますし、自分に適した仕事を選ぶことができるので、就業時のミスマッチも防げ、離職率も下がるという考えです。
「やってみてわかったことは、若い人は建設業に興味がないと決めつけていたのは業界のほうだったということです。職人育成は建設業界全体の問題です。10年後、20年後に困るのは僕たち若い経営者。『困った、困った』と言うだけでなく、解決に向けて行動に移していこうと呼びかけたい」と話します。

専門工事実践授業。エアコン、洗面台がつきモックアップ授業修了。

職人はカッコイイ仕事だと知ってもらいたい

「『職人』が、子どもの憧れる仕事ベストテンに入ってもらいたい」と話す岡村さん。内装業を営む父の強い希望で後を継ぎました。大学は教育学部に進学し、卒業後は、銀行に勤務していたこともあり、人材育成の重要性はよく分かっていただけに、建設業界の『親方の背中を見て覚えろ』という育成方法に対する違和感は、以前からあったそうです。

寮での様子。仲間同士の打ち上げ、授業の復習などを通して結束力が強まった。

また若者が、「きつい・汚い・危険」の「3K」と言われる建設業を敬遠し、業界全体が恒常的な担い手不足陥っているという見方についても、「仕事がきついのはどの業界でも同じ。野球選手のユニフォームが泥で汚れていても、だれも汚いとは言わない。むしろカッコイイでしょう。3Kだから若者が入ってこないと諦めてしまっては何も問題は解決しません。」と岡村さん。
ただし、「危険が伴うことは事実」と話します。しかし、「今後は人工知能を危険行動の注意喚起に利用していければ、事故はもっと減らしていけるのではないか」と話します。
「職人育成塾」という名前には、一流の職人を育てるとともに、職人がもっと脚光を浴び、尊敬され、大事にされる世の中にしていきたいという思いがこもっています。「理念はブレずにやっていきたい。理念に共感する団体であれば職人育成塾の名前を使っての運営も可能にし、業界全体の取り組みにしていきたいという思いから、商標登録もしました。」

建設業に特化した保育所を作りたい

第一期の職人育成塾には女性が2名入塾しました。しかし、卒業できたのは1名。もう1名は、子育てをしながらの参加だったことが原因で、最後まで通い続けることができなかったそうです。「手に職をつけて就職し、お子さんと共に安定した生活を送りたいと考えていただけに残念」と岡村さん。しかし女性たちの話を聞くうちに、建設業には早朝から開いている保育所の整備が必要だということに気がついたとも話します。今年度開催予定の職人育成塾第二期生には、5人の女性が応募しているとのこと。「建設業の朝早い就業時間帯に対応できる保育所さえ整備できれば、建設業で働きたいと希望している女性をもっと取り込めるはず。是非、行政の協力も得て、建設業に特化した保育所を実現させたい」と話します。さらに、平成29年度からは、合同の新入社員研修も実施し、認定職業訓練の認定も取得する予定とのこと。建設業が抱える担い手の課題に対し、次々と解決策を実行していく職人育成塾。今後もその活動に注目です。

三本松高校など、実際の現場視察も実施。

一般社団法人職人育成塾ホームページ http://www.shokuninjuku.com/

Column 廃校を有効利用

高松市旧塩江町は高松空港に近い古くからの温泉町。地域交流としてDIY講座や、お昼ご飯は旅館組合の協力でお弁当を出してもらうなど、廃校になった旧塩江小学校の有効利用は地元の活性化策としても注目されている。

旧塩江小学校

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