FOCUS

FOCUS
2022年11月号 No.543

「道を究める」プロフェッショナルへ!現場で活躍する力を育む取り組みとは?

幅広い資格と専門性を
強みに活躍する戦力へ

2級土木施工管理技術検定(第一次検定)や測量士補のほか、小型移動式クレーン技能講習や玉掛け技能講習、アーク溶接特別教育、小型車両系建設機械運転特別教育など、様々な資格取得・技能習得に積極的なことも同校の土木技術科の特徴だ。

「土木技術の専門知識を学びながら、実践的な技術者の育成を目指しています。幅広い資格や技術・技能を身に付けることは就職に役立つとともに、即戦力として活躍することにもつながります」

民間企業で測量に携わっていた経験もある豊村先生。同校でも継続的に測量士補試験に挑む生徒たちの背中を押す中、今年度から新たに取り組んでいる試みが測量士試験の合格者を輩出することだ。

「2年生で測量士補試験を合格し、3年生で測量士試験に挑戦、という流れをつくりたいと考えています。それをクリアするため生徒たちに促しているのは、“とにかく書く”ということ。教科書を見て終わりにせず、基礎を繰り返し、過去問を解き、ペンを走らせていく。その積み重ねが生徒自身の確かな力になり、本校の目指す“道を究める”ことにもつながります」

次代の担い手であり、即戦力にもなる同校の生徒たちに、周囲も大きな期待を寄せる。

「県内の建設企業や団体の皆さまのご協力のもと、様々な現場見学会やインターンシップの機会を得ることができています。また講師という形でも来校いただき、足場や鉄筋についてなど生徒が実践的な学びを深められるよう支援してくださり、ありがたい限りです。長崎県土地家屋調査士会さまにも2006年より測量技術指導をしていただき、そのつながりをもとに本校と連携した小学校への出前授業を実施しています。出前授業をきっかけに建設業の魅力を知り、本校に入学した生徒もいるなど、新たなきっかけとなっていることを実感しています」

測量やコンクリートのほか、日本クレーン協会と連携した小型移動式クレーンや玉掛けなどの実習型授業にも取り組む同校。
「他にも型枠を組んだり足場を組んだりと、生徒が現場同様の経験に触れられるよう意識しています。
企業側も即戦力となれる若手に期待していますね」と豊村先生

技術よりも大切なことを
身に付けてほしい

高校生ものづくりコンテスト測量部門において、2016年に全国大会優勝、2018年に準優勝を果たしている同校の土木技術部。その顧問として、豊村先生も熱い想いを抱える。

「もちろん技術も大事ですが、例えば時間を守る、道具を大切にする、整理整頓をするなど、“当たり前のことを当たり前にやる”大切さを知り、身に付けてほしいと思います。ある年のものづくりコンテストで不本意な成績に終わった際に、自分たちに何が足りなかったのだろうと当時の生徒たちと話し合いました。その中で出てきたのは、感謝の気持ちが薄れていたのではないか、ということ。周囲や地域への感謝もまた、技術よりも大切な“当たり前のこと”の一つです。それをきっかけとして通学に利用している最寄り駅の清掃活動を始めたところ、心の面もチームの絆も以前より深まりました。そうした経験を通して成長した生徒たちは、大人に混じって参加した測量大会でも優勝を果たしたほか、次のものづくりコンテストでも見事な成績を収めることができました」

ただ一方的に言い聞かせても、生徒たちを主体的に動かすのは難しい。豊村先生が大切にしているのは“自分から動く”というアクションだ。

「心がけているのは、一緒に体験すること、一緒に汗を流すことです。朝練にも時間より早めに顔を出したり、測量に用いる機材を大切に扱ったり、靴をきれいに整頓したり…何気ない“当たり前のこと”ですが、私自身が動くことで模範になれるよう努めています。そうした姿を見て主体的に動くようになった生徒たちを見ると、私自身もうれしくなります」

新たな測量士試験合格者の輩出へ、そして、ものづくりコンテスト全国優勝へ。豊村先生と生徒たちの挑戦に、期待は高まるばかりだ。

「明るく話したり笑い話を交えたりと、授業を飽きさせない工夫も大切」と話す豊村先生。
測量の仕事に携わっていた経験も踏まえながら、生徒たちに土木の世界を分かりやすく伝えている。
「つらいこともある反面、楽しさもあり、やりがいもある仕事。
社会基盤を支え、世の中に貢献できる仕事であるということは常に示していきたいです」

 

平戸大橋

長崎県北部の平戸島と本土を結ぶ、赤く美しい姿がひときわ目を引く平戸大橋。「以前近くに住んでいた頃、よく趣味のウォーキングに利用していました。通勤などにも日常的に使われ、地域の方々にも親しまれている橋です」。夜にはきらびやかにライトアップされるなど、昼夜で異なる表情も魅力的です。

 

 

長崎県立鹿町工業高等学校

〒859-6145 長崎県佐世保市鹿町町土肥ノ浦110
WEB:http://www2.news.ed.jp/shikamachi-th/

 

◎本誌記事の無断転載を固く禁じます。

 

【冊子PDFはこちら

1 2

関連記事

しんこう-Webとは
バックナンバー
アンケート募集中
メールマガジン配信希望はこちら