FOCUS

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2022年7・8月号 No.540

生徒の主体性を引き出し、多彩な学びの機会を提供したい!

成長のカギは生徒たちの
主体性を引き出すこと

昨年度には土木科3年生とともに、高知で行われた高校生橋梁模型コンテストに初出展。レーザー加工機を使った切断作業など、生徒たちにとって未知の分野にも触れながら、課題であった高強度・高精度な橋梁模型の作成に挑んだ。

「生徒にはものづくりを通して様々なことを見出してもらいたいと考えていますが、特に身につけてほしいのは、自ら学び、進んで取り組もうとする主体性です。橋梁模型づくりは、その絶好の機会。文字通りゼロからスタートなので、最初は“本当に作れるの?”という半信半疑の状態から始まるのですが、作り出すにつれて主体性が生まれ、生徒自ら取り組んでいくようになりました。自分たち自身で強度の弱点に気づき、その弱点を直すにはどうすればよいかを考え、また、アイデアを自分たちで見つけてくるといった成長も見せてくれました」

結果的に高い強度の橋梁模型を作り上げ、コンテストでも好評価を受けることができた。金井先生の喜びもひとしおだが、一方ではむしろ“失敗をしてもらいたい”という考えもあったそう。

「もちろんコンテストに出る以上、良い成績をおさめたい・良い評価を受けたいという気持ちを抱くのは自然なことなのですが、私としては失敗を通して学びを深めてほしい思いもありました。強度試験の際などに壊れてしまう他校の模型もあったのですが、壊れることで悔しい思いをしたり、“なぜ壊れたんだろう?”と探っていくほうが勉強になるだろうな、と。実際の仕事ではミスが許されないぶん、こういう場では失敗しながら学び、次に失敗しないためにどうするかを考え抜く、ということが深い学びにつながるはずです」

今年度のコンテストでは、昨年度に指摘のあった軽量性のクリアも目指す予定だ。

昨年度の高校生橋梁模型コンテスト出展作品。
橋梁の強度を高めるための3層構造の工夫などは、生徒たち自身によるアイデア。
コンテストでは2つの作品でそれぞれ「強度賞」と「審査員特別賞」を受賞している

経験をもとに伝えたい
資格という「生き抜く力」

教員になる以前は橋梁づくりの職に就き、現場代理人を担っていた金井先生。実際の仕事経験・現場経験を踏まえて、土木の世界はどういったものかを日頃から生徒たちに伝えている。また同様に示したいのが、“資格”というものの重要性だ。

「資格とは名ばかりのものではなく、“本当に役に立つもの”ということを、自身の経験をもとに伝えたいです。私は就職氷河期を経て苦労の末に企業に入ったのですが、そこで資格を取得したことでようやく食べていける、生き抜いていけると思うことができました。今は就職氷河期でもないですが、“どんな時代でも資格をとっておけば生きていける”ということは、折を見て生徒たちに話しています。そうすることで資格取得に対しても生徒の主体性を引き出すことができ、昨年度には私の受け持ちクラスで初めて2級土木施工管理技術検定合格100%を達成することができました。資格取得は自信にもつながり、入職後の成長にもつながるもの。まさに“生き抜く力”と言ってよいと思います。社会に出てからも頑張れる力を身につけてもらえるのは、工業高校ならではの醍醐味ではないでしょうか」

教務主任となった今年度は、土木科をはじめとした同校の魅力、工業高校の学びの具体的なイメージを、中学生の子どもたちや中学校の先生たちなどにも伝えていく狙いだ。

「土木科では工業高校のイメージアップも図ろうとしており、教員たち自らオリジナルのユニフォームもそろえてみました(笑)誰かが“作ってみよう”と言えば、全会一致で“やってみよう”という声が挙がるなど、新しいことにチャレンジするのが好きな先生ばかり。そうした雰囲気の良さが、生徒たちにも伝わるといいなと思っています」

CADを使った製図とともに、手描きによる基礎製図教育も重視。
基本となる設計プロセスやノウハウを学び、原理・原則の理解を深めることが、
CADで製図をする際の高いパフォーマンスにもつながる

 

舞鶴陸橋

金井先生が選んだのは、甲府市の南北を結ぶ跨線橋・舞鶴陸橋。「昨年度の橋梁模型コンテスト出展作品のモチーフとした橋。測量の際には生徒たち自身で道路占用許可の申請手続きなどを行いました。良い経験を積ませてくれた思い出深い場所です」

 

 

 

山梨県立甲府工業高等学校

〒400-0026 山梨県甲府市塩部2丁目7番1号
WEB:  http://www.kofu-th.ed.jp/

 

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