FOCUS
地域の企業やOBと共に生徒一人ひとりに向き合いキャリア形成を“全力”で応援
恩師を手本に生徒に向き合い工夫を凝らした伝え方を
田中先生が手本とするのは、自身を変えてくれた高校時代の恩師だという。
「私自身も本校出身なのですが、入学当初は学生生活に身が入っていませんでした。そんな私を変えてくれたのが、所属していたバドミントン部の顧問の先生。部活動では厳しいのですが、授業は非常に楽しかったことを20年以上経った今でも覚えています。難解な内容も噛み砕いて説明してくださり、写真を使用して丁寧に解説してくださるなど、しっかりと一人ひとりに向き合ってくれる先生でした。私もそんな姿勢を大切にして、生徒にとって本当に頼れる存在になりたいです。そのためにも日々、生徒と共に成長していきたいです」
また県内3校で取り組むBYOD(Bring Your Own Device/個人所有のデバイスを業務上で活用すること)の調査研究員でもある田中先生だからこそ、今ならではの授業手法に着目する。
「板書で説明するより、ネットで探した写真などをタブレット端末で見せる方が瞬時にイメージが伝わる場面も多々あります。手を変え品を変え、ICTも活用し、生徒が視覚的に物事を理解できるよう工夫を凝らしています。そうしたオンライン授業やデバイスを活かした取り組み、それに対する生徒の反応などを、学校間の枠を超えたBYOD調査研究として情報共有しています。いずれは自分たちが先頭に立ち、ICTを活用した授業展開方法のレシピ集などを作成し、新しい形を確立していきたいです」
自身の経験、先輩たちの体験が新たな世代の糧になる
教鞭をとる以前は総合建設業に就き、施工管理の仕事などを経験してきた田中先生。
「当時は大型幹線工事に携わっており、青森や千葉、静岡や神奈川と様々な現場を巡る中で、先輩たちや職人の方々から多くのことを学びました。現場での資材発注なども経験したおかげで、仕事へのやりがいや土木の醍醐味などを、生徒に実感を持って伝えることができます。本校には他にも建設業に携わった経験を持つ先生が在籍しているので、そうした体験を積極的に伝え、将来への意識や土木への興味を深めるきっかけにしていきたいです」
また同校では“進路講話”という形で、3年生から2年生へ進路に関わる体験を共有する機会も設けている。
「なぜ建設業に興味を持ったか、就職に際して何が大変だったか、どんな目標を持って臨むべきか、といったことが3年生の口から語られます。年齢も近いため、みんな真剣に話を聞いていました。我々の心にも訴えるものがあり、『一生懸命やらなきゃダメだ』『目標を持って取り組まなきゃダメだ』という言葉が生徒から生徒へと伝わったことが、何よりも有意義でした」
さらに3年次に土木科全員が受験する『2級土木施工管理技士』の学科試験も、生徒自身の意識を高めることに非常に役立っているという。
「試験合格を機に、明確に土木の道へと進むことを決めた生徒も現れました。『いずれは1級を取って自分の会社を興したい』と話すその姿を見て、資格を取得することでやりがいや自信が生まれること、自身の夢や将来の道を広げる大きなきっかけになることを学ばされました。そんな生徒を一人でも多く生み出すべく、これからも資格取得を力いっぱいサポートしていきたいです」
恩師の背中を追って温かく生徒と向き合い、生徒自身が“全力”で学校生活に励めるよう力添えをする田中先生。その姿を見つめる生徒たちも、目標へとひたむきに歩んでいけるに違いない。
3年生から2年生へ、進路に関わる体験を共有する「進路講話」。
大いに参考になる先輩たちの話に、じっと耳を傾ける
地域の中学校などへの出前授業にも積極的。
未来の熊谷工業生徒を集めるべく「本校の魅力、土木の楽しさを伝えたい」と田中先生
渡良瀬橋
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埼玉県立熊谷工業高等学校
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