特集
新たな時代の転換期に見る 建設業の課題と展望
よりよい未来に向けて、繋がる「建設」と「不動産」。
佐々木 : 建設キャリアアップシステムも、いわばデジタル化の一つですね。昨今、様々な分野でDX(デジタルトランスフォーメーション)が取り沙汰されている中で、建設業のデジタル化についてもお聞きしたいと思います。そもそも日本はデジタル化という面では国際的に周回遅れと言われてきましたが、デジタル庁も創設され、政府全体で推進する姿勢が見えてきました。今後、建設業のデジタル化についてはどのように取り組まれる予定でしょうか?
長橋 : デジタル化を進める目的としては様々ですが、一つは運用面です。経営事項審査や許可申請を容易にし、各々の負担を軽くするという意味で電子化は非常に有益です。情報連携も簡素化できますので、国だけでなく都道府県の行政庁で効率的な運用が目指されています。また建設業においては生産性の向上の面でi-Constructionが進められていますが、私としてはBIMやCIMといった形で3D化された設計を管理に繋げていくという試みも行えればと考えています。建設から構造物の管理・メンテナンスなどまでをデジタル化により一気通貫で取り組めれば、省エネ化や効率化にも繋がり、カーボンニュートラル実現の一歩にもなり得ます。「建設」と「不動産」はともに社会のインフラを造り管理していく仕事ですので、不動産・建設経済局としてはそれらをしっかりと連携させた取り組みを図っていきたいと思います。
佐々木 : 不動産でも特に住宅分野では、そうした建設から管理までのデジタル化といった方法に早くから取り組んでいましたね。「建設」と「不動産」がしっかりと連携することでより良い未来に繋がるとすれば、非常に希望の持てるお話です。
今後の建設業という話題から派生しますが、すでに建設業界では外国人の存在が不可欠になっていますが、昨今、コロナ禍により日本と海外との間での人の移動が大きく制約されてしまっています。状況の好転によりまた安心して行き来できることを願うばかりですが、今後それぞれの国においても少子化が進む中で、あえて日本へ来て働いていただくという選択肢も容易ではなくなっていくと感じます。技能実習生、あるいは特定技能という形で外国人に働いていただくためには、どのようなことが大切だと感じられますか?
長橋 : 特定技能の制度を導入する際にも、建設キャリアアップシステムの登録など、日本人と同等の制度をしっかりと担保したうえで受入れるという形をとっています。ただデフレが続いていることもあり、日本の賃金や雇用環境が外国人材にとって割に合わない、日本より他国で働くほうが条件が良い、といった声を耳にするのも事実です。日本の建設業の処遇や働き方を改善していかなければ、今後ますます厳しいものになっていくのは明白で、かなり深刻な問題と認識しています。
佐々木 : 建設業の将来を考えると、どのように人材を確保していくかは本当に大きな課題ですね。翻って、日本から海外への進出についても注目されますが、日本企業の海外進出はかなり消極的なようにも見えます。今後新たな市場を求めていくならば、やはり海外を念頭に置かざるを得ないと思いますが、一時期に比べて海外進出の熱もやや冷めているように感じます。この点はいかがでしょう?
長橋 : それについては、海外の国独特の規制の緩和や制度改善といった、日本企業が働きやすい条件を前提に働きかけをしていくことが必要かと思います。トラブルが生じた際の法務的な支援なども、不動産・建設経済局として取り組むべき課題ではありますね。リスクをなるべく軽減できるような施策を講じていかねば、日本の企業も安心して出ていけないというところもあると思います。