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特集

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2017年10月号 No.492

建設業の技術者

技術者不足の解消にどう取り組むか

日経コンストラクション編集長 野中 賢

1 足りないのは技能者だけ?

建設業の就業者が最も多かったのは1997年(685万人)。その後は年々減少し、2010年に初めて500万人を割り込んだ。わずか十数年で3割近く減ったことになる(図-1)。

図-1 建設業就業者数の内訳の推移

当時、就業者の減少はそれほど大きな問題と見なされていなかった。建設投資も同様に減少していたからだ。1994年に84兆円でピークだった建設投資は、バブル経済崩壊後の景気悪化や民主党への政権交代などで右肩下がりになり、2010年には42兆円とピークから半減。就業者の減少よりも激しいペースで仕事が減っていたのだ。
ところがその後、情勢が一気に変わる出来事が立て続けに起こった。2011年3月の東日本大震災と、2012年12月に発生した中央自動車道・笹子トンネルでの天井板崩落事故だ。東日本大震災では、短期間のうちに多くのインフラを復旧・復興するために大量の人材が必要となった。笹子トンネルの事故は、インフラの維持管理の重要性を社会に知らしめる契機となり、将来の維持管理を担う人材確保の重要性がにわかにクローズアップされた。テレビや一般紙でも、建設業の人材不足が話題に上る機会が増えた。
そうした報道の多くは、現場で直接ものづくりに携わる建設技能者を対象としたもの。世間一般には、「建設業の人手不足=技能者不足」という認識が定着した。しかし、足りないのは技能者だけではない。
図-2は、直近10年間の職業別の有効求人倍率を示したものだ(各年12月のデータ)。建設業は全職業(黄色の折れ線)に比べて明らかに高く、2010年以降はほぼ右肩上がりで増え続けている。技能者の一分類である「建設躯体工事の職業」が飛び抜けて高いが、一方で「建築・土木・測量技術者」も、「建設の職業」や「土木の職業」に比べてかなりの高水準になっている。技能者不足の陰に隠れているが、技術者の不足も深刻さを増しているのだ。

図-2 建設業の有効求人倍率の推移

2 建設会社が感じる技術者の「不足感」

足りないのはどのような技術者なのか。
実感している方も多いと思うが、建設業では高齢化が進んでいる。図-3のように、建設業就業者のうち55歳以上が3分の1を占めるのに対し、29歳以下は1割にすぎない。一時期に比べて緩やかになっているとはいえ、全産業平均と比べて高齢化の度合いは著しい。図-4の通り、建設投資が減少し始めた1997年以降、入職者は極端に減少。結果、建設会社では入社20年目以上の社員は多いが、これから主力になる層は圧倒的に不足している。そのため、工事量が回復した2011年以降、技術者を配置できずに入札参加を見送る会社が珍しくなくなった。各地で入札不調・不落が多発したのも、その表れだ。

図-3 就業者数の年齢構成の推移

図-4 景気の変動による建設業就業者のいびつな年齢構成

建設会社は、一時は抑制気味だった社員の採用に再び力を入れているものの、規模の大小や中央・地方を問わず、なかなか希望通りに進んでいない(図-5)。新規学卒者だけでなく、足りない世代を埋めるための中途採用にも積極的だが、30代の技術者は絶対数が少ないのだ。国土交通省が全国の建設会社を対象に継続的に実施している「建設業構造実態調査」によれば、建設業の経営上の課題として「人材不足」を挙げた会社の割合が、2008年度から2014年度にかけて2倍以上に増加した(2008年度:28.0%、2014年度:65.5%)。

図-5 建設会社の人材の採用状況

3 技術者確保にどう取り組んでいくか

技術者不足の解消に向けて、国土交通省は2014年に担い手三法(品確法、入札契約適正化法、建設業法)を改正し、それに基づく施策を矢継ぎ早に繰り出してきた。例えば、公共工事設計労務単価の大幅な引き上げ、発注や施工時期の平準化など。建設会社が適正な利益を得られる環境を整え、働く人の待遇を改善し、担い手を確保するのが目的だ。若手の登用を促す入札制度の試行や、若手技術者を採用している会社の経営事項審査での優遇のように、若手の確保につながる施策も打ち出している。
今年6月の「適正な施工確保のための技術者制度検討会」の取りまとめで示された技術者制度の方向性でも、担い手確保が1つの柱として据えられている。若手が資格を取得しやすくなるように受験機会を増やす、働き方改革に向けて提出書類の簡素化を図るといった方策が盛り込まれた。一企業での努力には限界があることから、こうした行政による後押しは不可欠だ。
若手技術者の育成に悩む企業は多く、正解は存在しない。ただ、若手の面倒を会社ぐるみでこまめに見るといった対策で定着率を高めている事例は意外に多い。「数値化」は難しいが、そうした地道な努力をしている会社を評価する仕組みが整えば、若手の確保・育成へのインセンティブはさらに高まるのではないだろうか。

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