特集

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2017年7・8月号 No.490

建設産業政策 2017+10~若い人たちに明日の建設産業を語ろう~

施策横断的にどう取り組んでいくのか

内田 「施策横断的に取り組むべき重点課題」という部門がありますが、「施策横断的」というのは、おそらく建設産業政策だけではなくて、発注政策や労働政策と連携をしていくということなのだろうと思いました。内容を見ていくと、「不当に短い工期による契約締結の禁止」とか、「能力評価基準を策定して能力に見合った処遇の仕組みをつくっていこう」などたいへん大事な施策が入っています。発注政策は、国土交通省で比較的対応が図りやすいかもしれませんが、労働政策などは厚生労働省等の他省庁との調整が簡単ではないと思います。この辺はどのように取り組んでいかれるのでしょうか。

平田 建設業が個々の建設企業の努力だけではなかなか実現できないことが多いのと同じように、建設産業行政も、様々な関係機関に協力を求めていかないとできないことが増えてきていると思います。
もちろん、ハードルの高いものが多いので、具体的にどう進めていくかは、すぐに申し上げ難い面もありますが、一つひとつ取り組んでいこうと思います。

内田 実際、振興基金で事務局を担当している担い手確保・育成コンソーシアムにも、国土交通省のみならず厚生労働省、文部科学省に入っていただいています。厚生労働省には、建設キャリアアップシステムの運営協議会にも入っていただいています。このように、建設産業をなんとかしようということへの理解は随分進んでいると思いますので、期待をしたいと思います。

平田 「関係省庁の皆さん、よろしく」と大きくいうよりは、建設キャリアアップシステムでやっているように、大事なところの具体的な取組みの中で、きちんと入ってもらう。そして一緒に検討してもらうということを、増やしていくということなのだと思います。
そういう意味では、今回、働き方改革などは、政府全体で問題意識を持っていただいて、省庁連絡会議も設けていただきましたので、このような場もうまく活用しながら、関係省庁との連携を進めていきたいと考えています。

今後のスケジュールは? 法改正は?

内田 今回は、いままで問題意識を持っていたけれども手を出さずにきたところにもかなり踏み込んだと思います。建設業法の改正が避けて通れないのではありませんか。場合によっては法律の根幹を大きく変えるような改正を考えることになるとも思いますが、建設業法等の改正などには、どういうふうに取り組んでいくお考えでしょうか。

平田 今回の建設産業政策会議は、建設業法を制定して70年近く経過し、その基本的な枠組が今後も良いのか、見直すべき点はないかというところからスタートしています。当然、今回の提言いただいた内容を実施していく上では、法律改正を伴う内容も出てくると思います。これらは、所要の調整やタイミングの問題もあると思いますが、スピード感を持って、作業を進めていきます。一方で、法制度以外にも約款など、様々なツールがありますので、動員できるツールは全部使っていくということだと思います。

内田 今回の提言では良質な建設サービスということを強く主張しておられます。もともと建設業法は、いいものを国民にきちんと提供するという体系でつくられていると思います。そのために、会社の経営について経営業務管理責任者、現場を監督する監理技術者と主任技術者がいるという仕組みでやりますと言っている。今回は、重層的な現場の実態にも注目して、元請工事業、下請の専門工事業、実はそれだけではなくて、その上にいる設計の部隊やその横にいる製造の部隊、技術者だけではなくて技能者など、建設の生産に携わっている全員を「プレイヤー」として全てを捉えて位置づけようとしている。品質をチームプレイできちんと保障する体制をつくっていこうという提言と理解しました。

平田 各プレイヤーの相互関係をどういうふうに今後考えていくのがいいのか、その中で全体最適を目指すにはどうしたらいいのかという問題意識です。
それぞれのプレイヤーの関係を全部法制度で手当てするということではありません。法制度になじむものもあれば、そうでないものもあります。請負契約だけで、物事を全部カバーしているものでもなく、請負契約でないところでつながっている人たち、あるいは、いまは請負契約でつながっているのだけれども、本当はもう少し違うアプローチもあるのではという部分もあります。
例えば、いまは建設業法を前提にしていますので、元請から何次下請という全部縦の請負関係でつながっていて、そのすべてに技術者を配置して、という施工体系を想定しています。しかし、これだけ現場の施工の実態が変化していることを考えると、請負契約でつながっているということが、本当に実態に合っているのかということです。
当然、それはいろいろな労働法制だとか技術者制度だとかの関係もありますけれども、もう少し請負に縛られることなく、もう少し柔軟な考え方でやっていってもいいのではないかと思います。

内田 請負契約の中でも、従来、元請の施工管理の世界だと思われていたものが、現実は下請のほうに移っているという指摘もありますが、このあたりも今回の検討の視野に入っていると思っていいのでしょうか。更に、技術と技能と、どうつながっているのかという視点も必要でしょうか。

平田 この会議とは別の技術者制度検討会において、いろいろな議論をしていただいたところですが、「技術とは?」「技能とは?」というところを突き詰めて考えると、なかなか難しい問題です。
いまは技術、あるいは技術者ということが建設業法の中で位置づけられているわけですが、施工の現場は技能で動いている面もありますので、いろいろな制度体系の中で技能とか技能者という方々はどういう位置づけをするのがいいのかを考えていかなければいけないという方向性も出していただきました。我々も宿題を負った形になっていると思います。

内田 登録基幹技能者をそのまま主任技術者として認めるという方向が出されています。これは、技能と技術を一体的につないだ最初の例だと思います。

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