特集

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2017年5月号 No.488

CI-NET 建設業、電子化への展望

CI-NET導入企業に聞く

「CI-NETの導入は働き方改革にもつながるメリットがあると思います」

◆日鉄住金環境株式会社
東京都中央区 水処理の総合メーカー。水処理装置・薬品の販売及び設備の運転・維持管理、環境関連の分析事業等。


左より、企画管理本部新会計システム開発企画室 菊池氏 岩崎室長 磯中取締役執行役員 加藤氏

安定運用を目的に取引先のモデル会社を4社選定。
稼動後にヒアリングを行い、運用のブラッシュアップ。

CI-NET導入の経緯についてお聞かせください。

2015年5月に経営層からのトップダウンで、業務改革を目的としたERP会計システム(受注・予算・購買・会計)導入に着手しました。導入にあたっては、6社のERP会計システムを比較検討し、このうち、購買システムの検討については、業務効率はもとより、内部統制(下請取引)の改善のため、EDI (電子データ交換)は必然ということから検討を始めました。

対象業務と取引先の選定はどのように行いましたか。

当初は見積から出来高請求業務まで一貫してEDIで行うことを前提に要件定義を行いました。しかし、工期等の関係から一次開発では注文から出来高請求業務を開発、二次開発で見積業務の開発に着手しました。ERP会計システムへの移行期間は、わずか11カ月と短かったため、パッケージをある程度、当社業務に合わせた形へカスタマイズしました。本稼動時は安定運用を重視して、予め主要な取引先をモデル会社4社に限定しました。対象の4社には稼動後にヒアリングを行い、運用のブラッシュアップを実施しています。

CI-NET導入でどのようなメリットを期待しましたか。

第一に建設業法および下請法の下請取引に係る法令を遵守した契約締結ができることを念頭におきました。これにより役務を含む外注取引はすべて、注文書を発行することにしたため、書面の発行量が大幅に増えることが想定されました。そのため請書回収をはじめ購買業務の効率化は必須とし、業務効率と内部統制を両立できる運用フロー構築を徹底しました。EDIにより、書面を排した運用を全社統一で行うことは、効率化も図れる上、内部統制の面でもメリットがあると考えました。

導入する上で課題となった点を教えてください。

購買システムはEDIの導入をはじめ、決裁基準など大幅に刷新することになるため、社内には半年以上前から周知を図り、部門間のコンセンサスを得て、規程改訂を行いました。取引先にも同様に運用の変更が発生することから、稼動直前に全国で説明会を実施、郵送での案内も行いました。一方、現業部門はチェック作業を書面ベースで行っていたため、照らし合わせる書面がないということへの動揺があり、「電子データが原本である」との認識が定着するまで、数カ月を要しました。

導入にあたり、どのような体制を組まれましたか。

トップダウンの指示でもあったので、全社をあげて高い優先順位でシステム開発に取り組むことができました。まず新会計システム開発企画室という4名の専属メンバーを擁するプロジェクトチームを立ち上げ、業務に専念できたことも大きかったと思います。また、現業各部門からも必ず担当メンバーが参加し、定期的に打ち合わせ等を行いました。

CI-NET稼動後、社内や取引先からの反応はいかがでしたか。

2016年4月の稼動後、2カ月程度は社内外から操作等の問い合わせが多くありましたが、シンプルな仕組みなので、使い方がわかった時点で、問い合わせはほぼなくなりました。購買システムの導入後では法令遵守の徹底を意図したため発注件数が3倍以上増加。入力件数が増えたことで、現業・購買部門には苦労をかけました。しかし導入時点では取引先を限定したために電子化割合が総取引件数の3%程度だったものが、現在は30%に達し、EDIの恩恵を感じています。また導入前は月末の締め業務において、数日に渡っての深夜残業はよくあることでしたが、今では、かなり残業時間の逓減が図れていると実感しています。また、現業部門の担当者も、査定を電子データで行うことに慣れはじめ、最近ではEDI対象を増やしたいとの意見があがってきています。

今後の展開についてお聞かせください。

CI-NET活用のメリットは、下請契約に係る業務効率及び処理精度の大幅な向上が実現できることです。当社では、まだ見積段階で書面ベースでのやりとりが多く残っており、電子化によりこれらの事務作業を解消したいと考えています。また、見積依頼の発行についても、管理が十分とは言えないため、システム化を展開して行きます。CI-NETの導入により当初の目的である、建設業法の対応ならびに業務の効率化が確実に進みました。煩雑な業務が解消され、社員の仕事が楽になることは働き方改革にも通じることではないかと思います。

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