特集

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2018年9月号 No.501

地域建設業に・効く・i-Construction 調査結果について

i-Constructionとは、一般に「ICT」を活用した生産性向上策をイメージしますが、本調査においては、中小建設企業における様々な働き方改革や経営改善の取り組みも含め調査しました。今回の特集では、6月28日(木)に開催した報告会の模様をご紹介します。
(詳細は、web:http://www.kensetsu-kikin.or.jp/tiiki-icon/をご覧ください。)

Speech 1
2年間にわたり各社の戦略や企業文化までを詳細に検証


京都サンダー株式会社代表取締役
新井 恭子

建設産業は高齢化の進展により十年以内に多くの退職者が見込まれているため、技術・技能の継承が大きな課題となっております。そこで、次の時代に希望を持てる産業とするために、国・地方・公共団体から多様な対策が講じられている最中です。その対策の一つとしてi-Constructionが2016年から開始されました。i-Constructionとは、建設産業において、生産性向上という課題をどう受け止め、どう対応をするか建設業経営者に問いかけるものです。すでに各地で多くの企業が取り組みを始めています。
i-Constructionには2種類あると考えています。一つは大規模で体系的な取り組み、もう一つは独自の考え方できめ細やかな取り組みです。生産性向上のためにはその双方が求められていると思います。この事業では後者に焦点をあて、各地域で独自にi-Constructionや人材育成に取り組む15機関(12企業・3団体)の調査をいたしました。北は北海道から、南は大分まで現地にお伺いし、実際に現場を見ることで地域の特色や現状を知り、経営者の行動力や企業としての独創性が必要であることを改めて実感しました。この調査の目的は地域で奮闘する建設企業の取り組みを分析することで、他の建設業経営者が「自分でもできそうだ、挑戦してみよう」と思える事例を具体的に紹介することです。
28年度は独自の考え方や手法で生産性向上を目指す取り組みを行っている全国の15機関(12企業・3団体)の調査をしました。先進的な取り組みをされている企業、職人を育成する団体を訪問し、経営改善のきっかけや具体的な取り組みとその効果についてインタビューしました。さらに、29年度では、昨年度の調査事業の内容を生産性向上という視点で改めて分析し、各企業が持つ戦略やノウハウなど、コアな部分を抽出し、その効果を定量的に顕在化させることに取り組みました。
報告書の内容は大きく「情報化施工」「人づくり」「地域づくり」「多様性」の4つで区分していますが、成功要因を発見するために、アンケートやヒアリングを実施し、生産性向上を支える自社の中核となる技術や特色(コアコンピタンス)についてまとめました。各企業が取り組みを始めるきっかけは、倒産危機による経営再建、後世への技術承継問題、高齢化による担い手不足など様々でありましたが、各企業に共通しているのは、早い時期から危機を感じ、解決策を模索している若手の経営者が多く存在することや、会社が立ち向かう方向を明確にしているということでした。また、建設産業は地域性が色濃く出る産業であり、同じ建設産業と一括りにいえるものではないと改めて感じました。地域の特性に合った手法やアイデアは、決してデジタルテクノロジーなど最先端技術だけではなく、人にスポットをあてたものも多くありました。例えば、「地域住民に情報の共有と見える化を行う方法」、「現場の長時間労働の軽減」、「女性が参加しやすい環境の整備」の推進により生産性の向上を実現している取り組みです。
これらは、建設産業に入職しようとする方々にとって、安心して働ける魅力に繋がるのではないでしょうか。
企業単独で行うことには限界があるため、地域や職種を超えて様々な情報や技術交流を図り連携していくことも重要であると思います。
少子高齢化が急速に進む中、建設産業の技術・技能の継承は大きな課題であり、次世代に向けたさまざまな取り組みが進められています。

Speech 2
各社で異なる要因を“見える化”して課題解決につなげる


立命館大学理工学部環境システム工学科教授
建山 和由

今回の調査の背景には、「3Kの克服」という重要課題がありました。建設産業の平均年間総賃金は全産業平均の76%と低く、平均年間労働時間も他産業に比べると長いという実情があります。また死亡災害も多く、全産業の発生数の約3分の1を占めています。
様々な改善がされている中、3Kから脱することができない大きな理由の一つが、労働生産性の低さです。1人につき1時間当たりの生産性を数字で見ると、1996年の時点で製造業と建設産業は同程度でした。しかし20年後の2016年では製造業が大幅に向上しているのに対し、建設産業はむしろ20年前より下がっています。建設投資が減る中、限られたパイを多くの企業や人で分け合う状況が続いてきたともいえます。
この状況を打破するために、デジタル技術や様々な改革を通じて人や資産の潜在的な伸びしろを新たな成長につなげていこうというのがi-Constructionです。
i-Constructionは、ICTの活用だけではありません。建設産業は多様な技術要素の集まりです。ICT活用の他にも標準化や工場生産による現場作業の効率化、平準化発注などの取り組み等を通じて、総合的に生産性を上げていく必要があります。
事実、生産性向上を実現している企業を見ると、ICT以外のいろいろなことに挑戦しており、「売り上げより粗利率の向上に着目して利益を確保する」といった、生産性向上マネジメントの試みも見られました。
建設産業では個々の企業の業態や経営管理方法が異なっており、画一的な標準化が難しいことも判明しています。i-Constructionに取り組む目標は、生産性の向上です。闇雲に取り組むのではなく、今後は工事プロジェクトごとに人工数や資機材投入量、社員の就業時間などを“見える化”しながら、より具体的な改善の糸口を抽出していくべきだろうと考えています。

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