特集
建設業バックオフィスにおけるDX
1 バックオフィスのDXを支える基盤構築サービス(SaaS)
バックオフィスのDXに活用できるSaaSについて、大きく分類すると以下のようなものがあります。
以下、簡単にその概要を説明します。
❶ストレージサービス
ストレージサービスは、クラウド上でファイルを共有することができるサービスです。社内のペーパーレス化に大きく寄与することができ、紙媒体での運用にかかっていた印刷・保管等のコスト削減、リモートで業務を行うことが可能になることで、働き方改革推進などに効果が見込まれます。
代表的なサービスとしては、Google DriveやBoxなどがあります。
❷コミュニケーションツール
コミュニケーションツールは、業務遂行に必要な情報を効率的に共有・管理するためのデジタルツールやプラットフォームです。SlackやChatworksのようなチャットツール、ZoomやTeamsのようなWeb会議ツール、サイボウズOfficeやGoogle Workspaceのようなグループウェアがこれに含まれます。
いずれも社内のニーズにあわせ、適切なサービスを導入することで、バックオフィス内だけでなく現場とのコミュニケーションの向上など、業務の効率化が見込めます。
❸RPA
RPAとは「Robotic Process Automation」の略称であり、ロボットによる業務自動化ツールのことを指します。バックオフィス業務のうち単純作業・定型的業務をRPAツールにより自動化することで、業務効率を大きく改善することができます。
自動化することができる作業量が多いほど当然導入効果も大きくなりますので、削減できる業務のボリュームと導入コストを慎重に検討してから導入することが重要です。また、「それまで社内で行っていた作業をロボットにより自動化する」という性質上、社内で使用しているシステムと導入するRPAが連携可能かについても、事前に必ず検討しておく必要があります。
代表的なサービスとしては、UiPathやPower Automate Desktop(PAD)といったものがあります。
❹ノーコード・ローコード開発環境
ノーコード・ローコード開発とは、社内で利用するための業務アプリをプログラミングスキルなしに自社で開発・作成することを指します。ノーコード・ローコード開発環境(ノーコード・ローコード開発ツール)は、ビジュアルインターフェースを用いて上記のようなアプリ開発を行う環境を提供するサービスです。ノーコードとローコードの違いは、前者は全く開発にプログラミング知識を必要としない代わりに自由度や拡張性が低く、後者は開発に多少のプログラミング知識が要るもののその分自由度や拡張性が高い、という点であり、それぞれサービスによって異なります。
自社の業務内容やフローに合ったアプリを、安価にかつ容易に開発・作成することができますので、業務の効率化・自動化に寄与することができます。
代表的なサービスとしては、サイボウズのkintoneなどがあります。
❺BIツール
BI(Business Intelligence)ツールとは、企業の業務データを収集・整理・分析し、視覚的なダッシュボードやレポートとして情報を提示するサービスを指します。従来は企業のデータベースの情報を資料としてとりまとめ、経営者やマネージャーに提出するのはバックオフィス部門の重要な役割でしたが、BIツールによって行うことができるようになることが大きなメリットです。
主なサービスにはPower BIやTableauなどがあります。
❻AI-OCR
AI-OCR(Artificial Intelligence-Optical Character Recognition)とは、AI(人工知能)とOCR(光学式文字認識)を組み合わせた技術で、手書きや印刷された文字を読み取りテキストデータに変換する従来のOCR技術にAIを組み込み、文字認識精度を向上させたサービスです。
紙で発行された伝票・帳票は、従来はバックオフィス部門で手入力する必要がありましたが、スキャンしたデータをAI-OCRで読み取ることで、入力作業を大幅に削減することができます。
導入に際しては、認識率の高さはもちろん、読み取ったデータを社内のシステムに連携して取り込むことができるか、といった点にも注意して検討する必要があります。
代表的なサービスには、AnyForm OCRやSmartReadといったものがあります。