特集

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2024年7・8月号 No.560

建設労働者育成支援事業

平成28年度に香川県の建設職業訓練校(職人育成塾)の訓練生となった大平秀資さん。修了から約8年経つ今、第一線で活躍するプロフェッショナルとなった大平さんに、職業訓練での思い出や、この8年での経験・変化などを伺いました。

有限会社 武田建装
大平 秀資さん
平成28年度訓練修了生

賃金アップ!土日祝も休めるようになり、建設業は魅力的な仕事であることを伝えたい!

─現在の仕事は?

鋼製下地材を骨組みし、石膏ボードを留付けて間仕切壁や天井を造作する軽鉄ボード工事に携わっています。約8年前に訓練を修了した後に建設業に入職し、病院や商業施設、福祉施設など様々な建物づくりに関わってきました。

─訓練に参加した経緯や、訓練で学んだことは?

兄は電気設備の仕事に就いていましたが、私自身はそれほど建設業に縁が無く、訓練に参加する以前は機械のメンテナンス保守点検などを行う製造オペレーターを務めていました。そうした中で兄の勧めもあり、建設業に興味を持ったことから香川県の職人育成塾に参加したのが始まりです。訓練では様々な職種を体験し、その中でも武田建装の代表である武田さんに指導していただいた軽鉄ボード工事が特に楽しく、ぜひこの道に進んでみたいと思いました。軽鉄ボード工事以外にも幅広い職種を体験したことは、多くの関係者の方と接する現在の仕事にも活かされていると感じています。

─入社から現在までを振り返って思うことは?

入社当初は“休憩所はどこにあるの?”というほど、現場では手探りの状態(笑)。同じ職場に先に入社していた同級生がいたことから、分からないことや専門用語などをしつこく聞きながら仕事に慣れていったことを覚えています。朝が弱い自分としては、現場のサイクルに慣れるのも一苦労でした。ただ当時から思っていたのは、周りに同年代も多くいる中で、いかにその人たちに追いつき、追い越していけるかということ。スタートした時点ですでに差をつけられている状況だからこそ、技術面や仕事の差配などを周り以上にしっかりと学び、早く成長したいと考えて取り組んできました。そうした下積みが、今の自分を支えていると感じています。

─約8年で変化したことは?

大きな変化は、多くの現場が週休2日制になったこと。休日が週1回だった頃は疲れた体を休めるだけで終わりでしたが、週休2日が当たり前となった今では、趣味のゴルフや釣りなどを楽しむことで心も体もリラックスし、休みをより充実したものにすることができています。また、賃金も年々上昇してきています。ただしその分、現場では以前よりもさらに効率的に動くことが求められます。当社においてもそうした状況に対応するべく、会社全体でBIM(Building Information Modeling)に取り組み、プレカットを採用することで現場での加工時間のロスや廃棄材の削減を図っています。まだまだ検証段階ではありますが、より実践的に使えるようになれば、現場でも大いに活用していけるものと実感しています。

─今後の目標は?

初めて職長を務めた現場が家の近くにあり、今でも時々見に行く機会があります。訪れるたびに思うのは、“ここは自分が作ったんだ”という誇りと満足感。一つひとつの現場で苦しい場面を乗り越えてきたからこそ、感動もひとしおです。今後も様々な現場に携わっていくことで、そうした想いを感じ続けていきたいと思います。いろいろな人が来場するテーマパークなどを手がける機会もあれば面白そうですね。私が軽鉄ボード工事に携わる中で意識しているのは、すべての工程において一から十まで気を抜かず、細心の注意を払うこと。そして、いつでも“自分の家を作る”つもりで仕事をすることです。こんな仕事をされたら嫌だと思われるようなことはせず、こんな仕事をしてくれたらいいなと思えることに取り組む。そうした丁寧な仕事を積み重ねていきたいです。

─訓練を検討されている方へのメッセージは?

どうしても慣れないことや、気持ちが折れそうになる場面に出会うことがあると思いますが、そうした状況にあっても“やる!”という熱意がある人は強い。まずは訓練にチャレンジして、体感してみるのが一番です。ぜひその一歩を踏み出して、建設業をいっしょに引っ張っていけたらうれしいです!

代表の声
職業訓練を経ての入職は、定着率の向上につながっている。

有限会社 武田建装
代表取締役
武田 茂夫さん

建設職業訓練校(職人育成塾)の講師を務めており、約8年前に私が教えていた訓練生の1人が大平さんです。クロス貼りや電気設備工事、左官工事などの幅広い職種を体験される中で、特に軽鉄ボード工事の仕事に興味を惹かれたとのことで、この職種へと進まれました。私としてもぜひ大平さんにこの業界に来てほしいと思っていたので、うれしかったです。

訓練修了生を受け入れるメリットは多々ありますが、その中でも特に大きいのが“業界への定着率”です。建設業はいわゆる3Kのイメージがあるほか、具体的にどういった働き方をしているかを知らない方も多く、入職してもイメージとのギャップを感じて早期に退職してしまうケースが見られます。その点、訓練修了生は知識や資格を身につけたうえで業界に入ってくるため、現場でのミスマッチが起こりにくく、訓練そのものが定着率の向上につながっていると言えます。

私が講師として心がけているのは、まずは建設業の面白さを感じてもらうこと。そのためには座学や映像での学びだけでなく、積極的に手を動かしたり、実際に道具や機器に触れてもらう実習の機会を積極的に設けたりすることで、仕事を体感していただくのが第一だと考えています。これから訓練を検討されている方は不安や緊張もあると思いますが、業界について全く知らない方でも問題はありませんので、楽しみながら建設業を体感していただきたいです。

大平さんは数年前に1級技能士の資格を取得し、現場でも大いに活躍しており、こちらとしても様々な仕事を安心して任せることができています。今後はより多くの現場で活躍し、ゆくゆくは独立するといった未来もあるかと思います。ぜひとも野心を胸に経験を重ね、大平さん本人が望む形でいきいきと活躍してほしいです!

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