特集
建設業法及び公共工事入札契約適正化法の改正について
Ⅱ 資材高騰に伴う労務費へのしわ寄せ防止について
資材価格の高騰や資材不足といった個々の工事におけるリスクの分担方法は、個々の工事請負契約の内容に基づいて契約当事者間で決定されるべきものですが、適切に分担がされず受注者にリスクの負担が偏ることとなることで、契約当事者のみならず、当該工事の下請業者なども含めた建設生産システム全体に対して、経営の悪化や施工不良の発生といった悪影響を及ぼすケースが生じています。具体的には、国土交通省が実施した調査を通じ、請負契約の変更に関する条項すら契約書において定められていないケースが多く見られることが明らかとなっています。資材高騰に伴う価格転嫁が円滑に行われないことで、足りない分が労務費にしわ寄せされることが懸念されています。
こうした状況を踏まえ、改正法では、建設業者が安心して請負契約の変更交渉ができる環境を整えるため、資材高騰に伴う請負代金等の「変更方法」を契約書の記載事項として定めることとしています。これにより、契約上で請負代金等の変更協議を行うことを義務付け、変更を促進することとしています。
また、資材高騰分の転嫁の協議の円滑化により労務費へのしわ寄せを防ぐため、資材高騰が生じるおそれがあると認めるときは、請負契約の締結をするまでに受注者から注文者に対して、関連する情報をその把握の方法と併せて通知しなければならないこととしました。この場合、実際に資材高騰が生じたときは、受注者から注文者に対して請負代金の変更に関する協議を申し出ることができ、注文者は当該協議に誠実に応じるよう努めなければならないこととなります※3。これらにより、資材高騰分の転嫁の協議が円滑化され、労務費へのしわ寄せが防止されることとなります。
- ※3…入札契約適正化法の改正により、公共発注者は誠実に契約変更協議に応じる義務が生じます。