日本経済の動向

日本経済の動向
2017年11月号 No.493

新興国の株価好調は続くか

世界経済へのインパクトが高まっている新興国の経済情勢は、総じて回復基調にあり、資金流入の継続もあって、株価も上昇している。ただし新興国に関しては、依然として、資金流出リスクなどの不安定要因があることに留意が必要である。今回は、新興国の経済、市場の動向、ならびに今後の注意点などについて解説する。

堅調に推移する新興国市場

年初来の新興国への資金流入により、新興国通貨と株価の上昇基調が継続しており、新興国市場は引き続き堅調である。この背景には、新興国経済に対する安心感があるとみられる。世界経済は循環的な回復局面にあり、新興国経済も総じて回復基調をたどっている(図1)。
新興国への資金流入で、新興国通貨はトランプショックによる下落を取り戻している。株価も上昇し、アジアでは8月に、インドとインドネシアで史上最高値を更新した。さらに、9年ぶりの株高となっているベトナム、1994年以来の株高にあるタイなど、株式市場は総じて好調だ。また、南アフリカでは国民に不人気なズマ大統領の存在がありながら、株価が夏場にかけて最高値を更新した。

図1  新興国の実質成長率と株価

資金流出リスクに注意

ただし、新興国に対する楽観的な見方が変化し、急速に新興国市場からの資金流出の圧力が高まるリスクには、一定の警戒が必要だ。夏まで堅調だったトルコも、9月以降資金流出の懸念が生じている。
経常収支や外貨準備、政治情勢など、さまざまな要素をスコアリングして、主要新興国のリスク度合いを総合評価すると、()のようになる。この評価によると、新興国からの資金流出の圧力が高まった場合、特にトルコや南アフリカなどに注意が必要であるといえる。

表  主な新興国のリスク評価

2017年は新興国が予想以上の回復を示したが、依然として、米国の金融引き締めなどの影響という不安定性を抱えていることは、認識しておかねばならない。株価が下落するリスクは、株価の評価が割高な国ほど顕現化しやすい。例えば、株価の予想PER(株価収益率)が過去のレンジと比較して上方に位置している国は、株価が割高になっていると市場で判断されやすいが、多くの新興国では、この点から割高感がみられるため、留意を要する。
また、足元、新興国の対内証券投資は減少してきており(図2)、投資資金の流入に先細りの動きがみられるため、市場の動きを今後も注視していく必要があろう。

図2  新興国の対内証券投資

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